中国が国内企業向けに「二酸化炭素排出量枠」の取引システムを構築する
2021年2月1日、中国が炭素排出量を削減するために世界最大の炭素の排出取引システムを構築しました。排出取引とは各国が定めた温室効果ガスの排出枠から余ってしまった分を他国との間で取引する制度のこと。今回炭素のためだけに設定されたこの排出取引システムがどのように機能するのかを科学誌のPhys.orgが開設しています。
Q&A: What is China's carbon trading scheme?
https://phys.org/news/2021-02-qa-china-carbon-scheme.html
2021年2月1日に開始されたこの排出取引システムの概要は、地方自治体が大手の電力会社に排出上限を設定し、企業が二酸化炭素排出量の少ない他の企業から排出枠を購入することができるようにするというもの。自治体は各企業向けに二酸化炭素またはその他の温室効果ガス1トンごとに排出認可証を発行し、仮に企業が認可証に従わなかった場合は地方自治体に罰金を支払うことになります。
中国環境保護基金のヴァイスプレジデントであるチョウ・ジャンユウ氏はこのシステムについて「自治体が発行する認可証が少なくなるにつれ、排出枠の価格は高価になるだろう」と語ります。またPhys.orgの見立てでは「稀な事例ではあるが、取引システムに組み込まれた企業には汚染データを公開する義務が生じる可能性がある」としています。
2020年9月22日、中国の習近平国家主席は国連総会に向けたビデオ演説の中で「中国は2060年までに『カーボンニュートラル』を目指す」と発言しました。中国は排出する温室効果ガスが全世界の排出量のうち28%を占める世界最大の排出国となっており、カーボンニュートラルを達成するためには炭素排出量を最大90%削減する必要があるとみられています。
中国の環境省が2020年12月に発表した新しい規則は、企業に温室効果ガスの総排出量を減らすのではなく、エネルギー消費量あたりの二酸化炭素排出量である二酸化炭素強度を削減することを求めています。大気汚染の研究機関Center for Research on Energy and Clean Air (CREA)の主任アナリストであるラウリ・ミリビルタ氏は「この規則は取るに足りないものに見えるが重要な違いであり、石炭による火力発電所がより経済的になる可能性がある」と述べています。しかしミリビルタ氏は「中国はカーボンニュートラルを目指すという長期目標を掲げてはいるが、現在の市場の形は目標達成にあまり貢献しないだろう」とも述べています。
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