ソフトウェア開発においてコミュニティで収益を上げるためには「収益に集中すべきではない」という主張
ウェブサービスやソフトウェアなどを開発した際に、ユーザーを増やすためにはバナー広告や記事広告も有用ですが、それとは別に「強固なコミュニティを作る」という方法が挙げられます。コミュニティがどれほど収益に影響しているかが見えづらいせいで「どのようにコミュニティを評価し運用していけばいいのか分からない」と思う人のために、コミュニティ構築を支援するOrbitのCEOであるパトリック・ウッズ氏がその詳細を解説しています。
Orbit Blog — What’s Your Community’s NRG?
https://orbit.love/blog/whats-your-communitys-nrg
社外の開発者と自社製品とのつながりを作るマーケティング施策「DevRel(Developer Relations)」は近年のIT企業が多く取り入れているもので、AppleのWWDCやGoogleのGoogle I/OもDevRelの例として挙げられます。DevRelはその活動が収益にどれくらい影響しているのかが見えにくいという問題を抱えていますが、ウッズ氏は自然成長率(NRG)を利用するとビジネスの成長にコミュニティがどれほどのインパクトを与えているのかを理解できると述べています。
NRGとは「営業やマーケティングに費用をかける前の製品そのものが持つ成長率」のことで、以下の計算式で求められます。
◆NRG=100×年間成長率×オーガニックのサインアップ率×製品の年間経常収益(ARR)率
NRGは既にユーザーである人が他の人に製品を紹介したり、アップグレードの通知から新規ユーザーが生まれたりするような、「無料」で発生したイベントによるトラフィック増加を測定します。これらのイベントによるトラフィックはコミュニティの影響が大きい分野なので、NRGはコミュニティの影響力を測るのに優れていると考えられるわけです。
Woods氏は、熱心なファンのいるコミュニティが一度形成されると、そのコミュニティは製品の開発元が積極的に参加するか否かにかかわらず活性化し続けると考えています。簡単操作でウェブ上にデータベースを作成して視覚的に操作もできる「Airtable」がその例として挙げられており、Airtableのフォーラムは毎週数百の投稿があり、フォーラム参加者の多くはAirtableのスタッフ以外のコミュニティメンバーとのこと。このため仮にAirtableのチームがメッセージに対する返信をやめても、コミュニティは運用され続けると予測されています。
簡単操作でウェブ上にデータベースを作成して視覚的に操作もできる「Airtable」を使ってみた - GIGAZINE
具体的にいうと、たとえAirtableのチームが返信をやめても検索エンジンはユーザー同士でやりとりされた有意義なコンテンツやディスカッションをインデックスし続けます。フォーラムのコンテンツが利用されればユーザーは製品へと導かれ、製品が一度使われれば有料機能への関心もおのずと増えるとWoods氏。これにより、NRGが増加するわけです。
Woods氏はこのようなコミュニティを形成するために重要なのは、コミュニティにメンバーをとどめ、他のメンバーを引き入れる魅力であるとし、これを「重力」だと言い換えています。重力は「リーチ」と「愛」に基づいているため、重力が増すと、リーチにより製品の認知が高まり、愛によってコンテンツが作成され有意義な議論に発展するなど、コミュニティの活性化につながるとのこと。そしてコミュニティの影響力と活動が増加すると、重力も増すというサイクルに入ります。
注意すべきなのは、開発のゴールは「収益を増加させること」にありますが、コミュニティチームが直接的に収益に影響を与えようとすると、売上中心の戦略になりユーザーが離れてしまうリスクがあること。コミュニティからメンバーが離れると、重力もそれに伴い小さくなってしまいます。
多くのコミュニティにとって収益は重力の大きさによって自然発生する二次的な効果です。Woods氏はアイスクリームを例にだし、「コーンの上に載ったアイスクリームが大きいほど、コーンに滴る液体が多くなる」と述べて、コミュニティチームは収益ではなくコミュニティのリーチと愛を育てることに集中することで、オーガニックなユーザー登録が増えて収益が増加すると説明しました。
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in Posted by darkhorse_log
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