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「マーケティングを自動化する」という配車アプリLyftのとった戦略とは?


スマートフォンアプリを使った配車サービスLyftUberと並んで急成長を続けるスタートアップ。企業の成長には新規顧客の獲得が最重要事項になりますが、マーケターたちが日々のルーティンタスクに追われていてはクリエイティブな戦略を行えなくなる……ということで、Lyftは「マーケティングの自動化」を行っているとのこと。機械学習を使っているというその仕組みについて、Lyftが解説しています。

Building Lyft’s Marketing Automation Platform – Lyft Engineering
https://eng.lyft.com/lyft-marketing-automation-b43b7b7537cc

Lyftの成長は、「地域ごとのキャンペーンで認知度を上げる」「マルチモーダルな方法の検討」などによるものですが、このようなキャンペーンで新規顧客を得ていくのは多くの時間を必要とするものであることから、Lyftは「マーケティングを自動化する」という考えに至ったとのこと。

新規顧客の獲得は通常、データに基づいた複数の部門が協力して規模・測定可能性・予測可能性といった問題に取り組むもの。新規獲得は消費者が製品を認知して購入に至るまでのパーチェスファネルの行きつくところであり、ここに至るまでにはさまざまなチャネルが存在します。チャネルはそれぞれパートナーやテクノロジー、戦略などが異なるため、Lyftの戦略チームの1部門はチャネルに併せた広告キャンペーンを打ち出す必要があります。例えば以下は左側がドライバー向け広告、右側が消費者向け広告。


そして同時に、別の戦略チームはより幅広い「ユーザーの体験」に焦点をあててキャンペーンを考えていきます。


大規模に新規顧客を得るには、毎日さまざまな決定を行う必要があります。しかし、「値付け」「予算」「クリエイティブ」「インセンティブ」「オーディエンス」といった内容を決め、テストを繰り返すだけでもかなりの労力。マーケターの頭の中がこれらのことで占められていては、最適な決断が行えない可能性があります。そこでLyftは、「ルーティンの決断を自動化する」ことにより、マーケターの頭をとりクリエイティブで実験的な内容に集中できるようにしたとのこと。

Lyftが必要としたマーケティング自動化プラットフォームの必要条件は以下の通り。

1.新規顧客がLyftの製品を使うようになる可能性の予測機能を持つこと
2.異なる内部&外部チャネルにまたがっているマーケティングの予算を割り当てるための測定メカニズム
3.これらの予算を何千にわたる広告キャンペーンで展開していく手段

そして、自動化するにあたっての問題は以下の通り。

・何千もの検索ワードにわたる入札価格のアップデート
・パフォーマンスが悪いディスプレイ広告を消すこと
・マーケットによって顧客紹介価値を変更する
・価値の高いユーザーセグメントを識別する
・1つのキャンペーンの異なる戦略から得た知見を共有する

これらの問題を解決する方法としてLyftが生み出したのが、ビジネスの目的を達成し、将来のユーザー価値を予測し、予算を割り当て、新規顧客を獲得するキャンペーンを生み出すためのシステム「Symphony」です。

Symphonyのアークテクチャは主に「ライフ・タイム・バリュー(LTV)予測」「予算割り当て」「ビッダー」の3つのコンポーネントから成り立っています。


3つのコンポーネントの詳細は以下の通り。

◆LTV予測
ライフ・タイム・バリューは、1人あるいは1社の顧客が特定の企業やブランドと取引を始めてから終わり間での期間にどれだけの利益をもたらすのかを算出したもの。ビジネスにおいてユーザーの価値を理解することは非常に重要であり、LTV予測というコンポーネントでは、さまざまなチャネルから流入するユーザーの価値を元に、顧客獲得チャネルの効率性を予測します。そして、予算はここで判明したチャネルの効率性を元に割り当てられます。LTVは中長期的な戦略目標を設定するのに役立つので、正確な予測が求められます。

この時、ユーザーのライフサイクルの初期段階でユーザーの保有率・使用頻度・取引価格を予想するのは難しいため、最初の予測には過去データが使われるとのこと。ユーザーがサービスを利用する頻度が増えるにつれて予測が正確になっていくわけです。

以下のグラフは、ユーザーがLyftを使うにつれてLTVが増していくことを示すもの。ピンクのラインがベンチマークを示していて、これはユーザーのコホートから予測されるLTVを表しています。


◆予算割り当て
予算割り当てはLTV予測とマーケティングパフォーマンスデータから収集したデータをもとに行われています。ここではマルコフ連鎖モンテカルロ法が使われ、「LTV=a*(spend)^b」という曲線を元に、ある程度のランダムさをもって値が算出されます。以下のグラフは縦軸がLTV、横軸が実際の支出、中心の曲線が「LTV=a*(spend)^b」を表しており、濃いピンク色で「95%の支出がこの範囲に収まる」ということが示されています。


「このようなランダムさは無駄に思えますが、長期的には緩やかな探査があっている」とのこと。Lyftは世界的に展開しているため、あえて幅を持たせることで、思わぬ可能性を探り当てることが可能になるそうです。

◆ビッダー
ビッダー(入札者)は目的とするプライス・ポイントで広告を打ち出すのに必要な最終的な調整を行うもの。ビッダーは「チューナー」と「アクター」の2つのパートに分かれており、まず、チューナーはチャネルの特定の文脈を考慮しながら、キーワード・タイトル・Google検索のビッドタイプといったレバーに基づき資本を展開していきます。そしてアクターはAPIを通して、求人掲示板・検索結果・ディスプレイ広告・SNS・リファラル広告といった外部チャネルあるいは内部チャネルで実際の値付けを行うとのこと。

Lyftは適切なオーディエンスにプロダクトを表示すべく、さまざまなパートナーと協力してきました。それぞれのチャネルは特色により異なる戦略を持っているそうです。

戦略の一例がこんな感じ。「クリック数最大化」「コンバージョン最大化」「収益最大化」「広告視認性最大化」などが並んでいます。


Lyftのマーケティング自動化は機械学習で行っているため、今後、人間によるフィードバックを機械学習プラットフォームにいかに流し込めるかが重要になってくると考えられています。このような人間参加型(ヒューマン・イン・ザ・ループ)の機械学習は、自動化の力を借りることで、人間が集中すべき問題に取りかかれるようにするもの。入札したり予算を割り当てたりといったルーティンタスクを手放すことで、マーケティングチームはクリエイティブやオーディエンスにより時間を割けるようになるとLyftは考えています。

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   ウェブアプリ, Posted by darkhorse_log

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