「にんじんをたくさん食べるとキレイに日焼けできる」というウワサに対する専門家の意見は?
2023年ごろ、TikTokで「carrot tan(にんじん日焼け)」という美容トレンドが流行しました。これは、「1日3本のにんじんを食べることで自然な日焼けをしたような肌の色になれる」というもの。実際ににんじんを食べることが肌の色に影響を与えるのか、クイーンズランド大学の健康・幸福学教授のローレン・ボール氏とサザンクロス大学の博士号を持つ認定栄養士であるエミリー・バーチ氏が解説しています。
Is TikTok right – will eating three carrots a day really give me a natural tan?
https://theconversation.com/is-tiktok-right-will-eating-three-carrots-a-day-really-give-me-a-natural-tan-214270
以下は、50万人以上のフォロワーがいる美容系TikTokerのイザベル氏が投稿した「にんじん日焼け」の紹介で、ここでは「1日に3本分のにんじんを食べることで、自然な色に日焼けできる」ことを紹介しています。
にんじんに含まれるカロテノイドは黄色やオレンジ、赤色に見える天然色素であり、ほかにはトマトやロブスターもカロテノイドの効果で赤色に見えています。カロテノイドにはルテインやリコピン、α-カロテンなどの多くの種類があり、にんじんの鮮やかなオレンジ色はβ-カロテンが由来です。
専門家によると、β-カロテンを含む食物を摂取することで、実際に肌の色にもβ-カロテンによるオレンジ色が反映されることはあるそうです。β-カロテンを含む食物が消化されると、腸内細胞が2つのレチノール(ビタミンA)へと分解します。ビタミンAは視力や生殖、免疫、成長を促す栄養など、さまざまな重要な身体機能へと使用されますが、体に十分なビタミンAがある場合、β-カロテンからビタミンAへの変換は抑制されます。
ビタミンAに変換されなかったβ-カロテンは、肝臓や脂肪組織に蓄えられるか、便として排せつされます。また、β-カロテンは皮膚の外装にある汗腺から排出されることもあり、「にんじんを多量に摂取すると肌がオレンジ色になる」というのは、これが原因で発生します。医学的には、「カロテノーシス(カロテン皮膚炎)」、もしくは日本語では柑皮症(かんぴしょう)と呼ばれます。
専門家によると、1日に食べるにんじんの数と皮膚の色の変化の関係を検出する具体的な実験は、これまで存在していないとのこと。ただし、過去の研究では、血中のβ-カロテン濃度が1デシリットルあたり250~500マイクログラムを超えると、カロテン皮膚炎が発生するということが示されています。また、2012年の症例報告では、1週間に約3キロ、1日あたり「大きめのにんじん約7本」という分量を食べると、皮膚の色が変化すると確認されました。また、「1日10本のにんじんを数週間にわたって食べる必要がある」と主張する専門家もいるそうです。
皮膚の色を変えるのに必要なにんじんの量は、にんじんの種類や大きさ、熟度、にんじんの調理方法、脂肪源と一緒に食べるかどうかによっても異なります。また、にんじん以外にもβ-カロテンを摂取できる食物はありますが、乳製品、魚、レバーなどの肉に含まれる既成ビタミンAは、大量に摂取すると有毒になる可能性があります。にんじんに含まれるのはプロビタミンAと分類され、プロビタミンAは体内でビタミンAへの変換が制御されているため、多量摂取による問題はないとされています。
総合して、にんじんを食べることで実際にβ-カロテンの作用で皮膚の色を変化させることはできますが、そのために必要な量は多く、無理にビタミンAを含む食材やサプリメントを多く摂取することは健康上の被害を生む可能性があります。ただし、専門家によるとにんじん以外の野菜を多く摂取することで、肌の色合いが自然に良くなる効果は期待できるそうです。
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