新型コロナウイルスとの戦いにおけるゲームチェンジャーになる可能性がある薬とは?
2020年11月以降、日本でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数が増加していますが、そんなCOVID-19との戦いの中でゲームチェンジャーになりうる薬の存在をイギリスメディアのThe Guardianが挙げています。
The breakthrough medicines that could change the course of Covid | Coronavirus | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2020/dec/27/the-breakthough-medicines-that-could-change-the-course-of-covid
2020年6月、イギリスのオックスフォード大学の研究チームが、世界的に広く使用されているステロイド系抗炎症薬の「デキサメタゾン」が、COVID-19の重症患者の死亡率を大幅に低下させる可能性があると示しました。
新型コロナウイルス重症患者の死亡率を安価な抗炎症薬が劇的に低下させる可能性が示唆される - GIGAZINE
デキサメタゾンの有効性を示したのは、COVID-19の治療薬に関する世界最大の無作為化臨床試験「リカバリー」です。オックスフォード大学のマーティン・ランドレイ教授はこのリカバリーを主導する人物で、デキサメタゾンがCOVID-19の重症患者に有効であることを発見したことで、記事作成時点までに約65万人もの命が救われたと推定しています。ランドレイ教授は「イギリスだけでもデキサメタゾンにより、すでに1万2000人以上の命が救われました」と語りました。
ランドレイ教授が主導するリカバリーでは、デキサメタゾン以外にもCOVID-19の治療に役立つ薬を特定するための調査が進められており、今後数週間のうちに別の有望な治療薬が見つかる可能性があります。特に効果が期待されているのは、「COVID-19患者から採取した血漿(けっしょう)」と、トランプ大統領の治療に使用された「Regeneron製のモノクローナル抗体、抗炎症薬のトシリズマブとコルヒチン、そしてアスピリンという組み合わせ」の2つ。これらの治療法はイギリス全土の病院で何万人ものCOVID-19患者に対して試験的に実施されており、最初の試験結果が2021年1~2月頃に明らかになる予定です。
無作為化臨床試験「リカバリー」は、ランドレイ教授がオックスフォード大学の新興感染症について研究している疫学者のピーター・ホービー氏と共同で立ち上げたプロジェクトです。2人は新型コロナウイルスのパンデミックが起きた際に、現場で働く医師たちがCOVID-19の治療法を探し求めている中で、複数の治療法のうち「より効果的なもの」を臨床試験の中で見つける必要があると考え、リカバリーをスタートさせました。まず初めにリカバリーに関する仕様を決定し、リカバリーに参加する被験者を登録するまでにわずか「9日」しかかからなかったそうですが、通常このようなプロセスには9カ月もの時間がかかるとのこと。
ランドレイ教授は「リカバリーのような無作為化臨床試験を実際の患者に対して行うことで、どの治療法が実際に機能するかがわかります。どの患者が最も恩恵を受けられるかを見つけることができれば、若者も老人も同じように免疫力が低下しているのか否かなどを特定することが可能です。何千人もの人々が参加するような試験であるからこそ、その事実を見つけ出すことができます」と語り、リカバリーに多くの患者が参加してくれていることで、COVID-19に対する有効な治療法がより素早く見つけられるようになっていると主張しています。
これまでのところリカバリーでは抗生物質の一種である「アジスロマイシン」、抗ウイルス薬の「ロピナビル・リトナビル」、マラリアやリウマチ性疾患の治療薬である「ヒドロキシクロロキン」、そして「デキサメタゾン」という4つの薬の効果が検証されてきました。その結果、デキサメタゾン以外はCOVID-19の治療薬として効果がないことが明らかになっています。
治療薬として効果的だったのはデキサメタゾンだけですが、同薬は前述の通り推定で約65万人ものCOVID-19重症患者の命を救っているため、リカバリーの有用性は明らかです。ランドレイ教授は「リカバリーを開始した際、安価で広く入手可能な薬を調べたところ、デキサメタゾンがCOVID-19に有効であることがわかりました。しかし、我々が現在検証している医薬品は、治療ごとに数百ポンド(数万円)もの費用がかかる高価なものであるため、これらの治療薬が大規模に展開される前に『本当に患者に対して有効であるか』を検証することは必要な行為です」と語り、今後リカバリーがより重要な役割を担うようになると主張しています。
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in サイエンス, Posted by logu_ii
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