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AI超えの顔認識能力者「スーパーレコグナイザー」を選出するためのテストとは?


犯罪捜査など多くの人の顔を識別する必要がある場面では、AIを用いた高精度の画像認識システムが役立ちそうですが、画像認識システムは簡単にだますことができるともいわれており、決して完璧な技術というわけではありません。そんな時に活躍するのが、「スーパーレコグナイザー」と呼ばれる高い顔識別・記憶能力を持つ人で、そのような突出した能力を選び出すために行われる「UNSWフェイステスト」とはどのようなものか、ニューサウスウェールズ大学(UNSW)が研究論文で解説しています。

UNSW Face Test: A screening tool for super-recognizers
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0241747

スーパーレコグナイザー」という用語は2009年に生まれたもので、出会った人々の80%以上を記憶している人を指します。人口の1%しかいないと言われるスーパーレコグナイザーは、殺人事件の捜査やイベントの入場客チェックなどで能力を発揮するため、多くの国の警察が採用しているそうです。

AI超えの顔認識技術を生まれつき持つ特殊能力者「スーパーレコグナイザー」とは? - GIGAZINE


スーパーレコグナイザーは、「私は人の顔を他の人よりよく覚えているかもしれない」と感じる人に、オンラインのテストを受けてもらって、スコアが高い場合はトレーニングコースが案内されるといった形で選考されています。UNSWがそのための試験として実施している「UNSWフェイステスト」について、2020年11月16日に公開した論文で実態を解説しています。

高い顔識別能力は実際の現場で重要な役割を担いますが、スーパーレコグナイザーは人口の2~3%しかいないとされ、探し出すことが困難です。参加者の自己申告によるものしかなく、「どこからが卓越した能力か」を判断する基準が必要になるため、UNSWのフェイステストが役立つとのこと。テストを実施することで、被験者の顔識別能力がどの程度のもので、その能力が特異なものと言えるレベルなのかどうかを判断することができるようになるとUNSWは述べています。


また、ただスーパーレコグナイザーの候補を比べるだけではなく、一般的な識別能力を持つ人のテスト結果も獲得することで、優れた識別能力と一般的な識別能力とで顔を認識する「共通点」を探っているそうです。この共通点を分析することで、識別能力というものをより詳細にプロファイリングできます。

さらに、UNSWフェイステストには「顔以外も含まれた写真が用いられている」という特徴があります。証明写真のように「白背景に顔だけ」というものではなく、場所や明暗、写っている人の年齢やポーズ・表情など「周囲の状況」を含めた写真で識別テストを行うことで、識別タスクをより難しいものにして、スーパーレコグナイザーの選考に適した有効で信頼性の高い独自のテストになっているとのこと。

UNSWフェイステストは専用ページから無料で誰でも受講することができます。


UNSWシドニーの学生データベースからランダムに236人分の証明写真のように撮られたスタジオ品質写真が表示されます(調査フェーズ)。自動的に切り替わっていくさまざまな人種・性別・特徴を持つ人の顔を記憶していきます。その後、また異なる写真が表示され、「この写真の人物は先ほどの写真で見たか」ということが質問されます(テストフェーズ)。


2つ目のタスクでは、まずスタジオ品質の写真1枚が5秒間表示されるのでそれを記憶(調査フェーズ)。その後、異なる写真の山からターゲットの写真である場合は右へ、そうでないならば左へ、と仕分けを行います。UNSWフェイステストはこの2つのタスクからなり、5~10分ほどで完了します。


このテストの信頼性を検証するために、5つのサンプルで合計2万4084人の参加者でテストが行われました。290人のサンプルのテスト結果は以下の画像のように分布し、フェイステストのスコアは50~60%がボリューム層で、一般的な参加者では70%を超えることはほとんどありませんでした。また、2万回以上のテストの中で最高点は93.3%の精度で、100%回答できた人はいなかったとのことで、UNSWは難解なテストとしての有効性を主張しています。


また以下の画像は、「段階的に難しい識別内容にしていった時にどれくらいより優秀な人を絞れるか」を示したグラフです。グラフの一番上の行は、UNSWフェイステストが難しくなると(グラフ横軸)、従来の他のテスト(CFMT+/GFMT)でのスコア分布がより洗練されたものになることを示しています。他のテストでパフォーマンスを段階的に上げても同じパターンは見られないことから、UNSWフェイステストが他のテストと比べて、より高い能力のターゲットを見つけることに有用であることがわかります。


スーパーレコーグナイザーによる顔識別能力は、AIによる機械判定で及ばない範囲までにわたるため、法執行機関の実務などにおいて有力に貢献するほか、「どうやって顔を識別しているか」という基準を特定することで、機械的な顔認識の基礎を構築することも期待されています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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