「犯罪のパターンを分析して類似した事件を発見するシステム」をニューヨーク市警察が導入している

by David Merrett

犯罪捜査において、取り扱う事件と類似の事件が過去に起きていないか、近隣でも同様の手口で行われた事件がないかといった情報を収集することは非常に重要です。ニューヨーク市警察(NYPD)はそんな犯罪パターンの照合を行うシステムを導入しており、犯罪捜査に役立てていることが明らかになりました。

Modern policing: Algorithm helps NYPD spot crime patterns - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/national/modern-policing-algorithm-helps-nypd-spot-crime-patterns/2019/03/10/79e902f8-432d-11e9-94ab-d2dda3c0df52_story.html

The NYPD is using a new pattern recognition system to help solve crimes - The Verge
https://www.theverge.com/2019/3/10/18259060/new-york-city-police-department-patternizer-data-analysis-crime

NYPDは犯罪パターンの照合を迅速に行うために、「Patternizr」という犯罪捜査専用のシステムを独自に開発しました。過去に収集された数十万もの事件データを検索可能なPatternizrを使うことで、分析官は現在捜査中の事件と類似した特徴を持つ事件を広い範囲から見つけ出すことができます。

以前から犯罪捜査において類似した事件を探し出す作業は行われてきましたが、Patternizrが開発される前は分厚い物理ファイルの中から類似の犯罪パターンを探していました。また、それぞれの管区における分析官は、異なる管区で発生した事件までは把握できていませんでした。しかし、Patternizrを使うことでより広範囲における犯罪パターンの照合が可能となり、時間の短縮にもつながるとのこと。

すでにNYPD内の77管区で、Patternizrを使った犯罪パターン照合が行われており、主に強盗や窃盗事件の捜査で活躍しています。ニューヨーク・ブロンクス区のヤンキー・スタジアム付近にあるホームセンターのザ・ホーム・デポを狙った窃盗事件では、「犯行に注射器を使用する」という特徴から数週間前に発生した類似の事件を見つけ出したことが、犯人逮捕につながったそうです。事件を担当したRebecca Shutt氏は、「Patternizrは私の知らなかった別の管区で発生した事件を見つけ出してくれました。Patternizrは非常に有用なシステムであり、従来の方法では見つけられなかった事件との結びつきを発見してくれます」と述べています。

by André Gustavo Stumpf

NYPDのデータ分析部門でアシスタントコミッショナーを務めるEvan Levine氏と、同部門の前ディレクターであるAlex Chohlas-Wood氏によれば、データ分析部門がおよそ2年の歳月をかけてPatternizrを開発し、2016年12月のリリースにこぎ着けたとのこと。犯罪の特徴を抽出して類似の事件を見つけ出すシステムを導入したのは、アメリカでNYPDが最初だそうです。「Patternizrのゴールはもちろん、公衆の安全を向上させることです。犯罪のパターンをより簡単に発見できれば、より迅速に容疑者を特定することにつながります」とLevine氏は述べています。

開発チームは専門のアナリストが分類した過去10年の事件データを用いてプログラムを訓練し、Patternizrの精度を高めていきました。Patternizrは現場への侵入方法、盗む物品の傾向、犯罪現場間の距離といった要素をもとに犯罪のパターンを分析し、犯罪捜査の効率を格段に向上させるとのこと。

ニューヨーク市の犯罪率は減少傾向にあるものの、依然として年間6万8000件以上の強盗や窃盗事件が発生しており、性犯罪や殺人といった事件の捜査でも類似した犯罪の抽出が用いられています。捜査過程に人種的偏見を持ち込まないようにするため、Patternizrのパターン照合では容疑者の人種を用いていないそうです。

by katie chao and ben muessig