「女性がオーガズムに達すると一体何が起きるのか?」など女性のオーガズムの秘密を科学者が解説
「オーガズム」とは、俗に「絶頂」や「イク」と表現される性的快感が最高潮の状態のこと。2019年になって、女性のオーガズムが持つ役割に関しての新説が提唱されるなど、女性のオーガズムは多くの科学者にとって注目のテーマです。南オーストラリア大学の神経科学者であるジェーン・チャーマーズ氏が、女性のオーガズムを4つのテーマに分けて、分かりやすく解説しました。
4 things about female orgasms researchers actually study
https://theconversation.com/4-things-about-female-orgasms-researchers-actually-study-151015
◆1:女性がオーガズムに達すると何が起きるのか?
女性がオーガズムに達すると、骨盤底筋が不随意のうちにリズミカルに収縮します。チャーマーズ氏によると、これには勃起した陰核(クリトリス)や充血した外陰部といった組織からの血流を促し、通常の状態に戻す役割があるとのこと。また、性的興奮やオーガズムを感じている状態にある女性は、心拍数や呼吸数が増加し血圧も上昇します。
一方、脳では「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンのレベルが上昇し、オーガズムに達すると同時にピークを迎えます。
また、「幸せホルモン」とされているドーパミンに関する脳の領域は、オーガズムを迎えている女性と男性の両方で活性化しますが、女性の場合はさらに感情や感覚情報、高次の思考などをつかさどる領域も活性化します。
女性がオーガズムを迎える際の強度や頻度は、女性の性的欲求・自尊心・パートナーとの性的コミュニケーションの開放性・メンタルヘルスなど複雑な心理的・社会的要因に左右されるといわれており、オーガズムをめぐる体と脳の関係性は科学者にとっても判断が難しい問題とされています。
◆2:オーガズムに達しないのは問題なのか?
チャーマーズ氏によると、たとえオーガズムを経験しなくてもそれは大きな問題ではなく、全く普通のことなのだそうです。例えば、2019年に発表された研究では、20~64歳のオーストラリア人女性のうち実に21%が「オーガズムを感じることができない」とアンケートに答えていることが分かっています。
生物学的には、オーガズムに至ることができない症状は「無オーガズム症」と呼ばれています。無オーガズム症の女性はセックスやオーガズムに関する羞恥心・自信のなさ・不安・苦痛・無関心を覚えていることが多いとされており、これには「長らく抑圧されてきた女性の性的快感が近年では肯定的に捉えられてきていること」が関係しているとの見方もあります。
多くの女性にとって、オーガズムは自信につながるため、無オーガズム症の女性は「自分には何か問題があるのではないか?」という悩みを抱える傾向にあります。2009年に公開された研究では、性交渉の経験がある男性の28%と女性の67%が「オーガズムに達したフリ」をしたことがあると報告しています。
また別の研究によると、女性の80%は膣(ちつ)の刺激だけではオーガズムに達しないとのことで、チャーマーズ氏は「もし無オーガズム症が気になる場合は、クリトリスへの刺激を試してみるといいかもしれません」とアドバイスしています。また、無オーガズム症が健全な性的関係の妨げになるといった問題を引き起こしている場合は、専門家や医師に相談するという選択肢もあります。
◆3:何回もオーガズムに達することができるというのは本当か?
ある出会い系サイトの調査では、女性の77%が複数回のオーガズムを経験しているとの結果が出ていますが、2020年に発表された学術的研究によると、複数回オーガズムを感じる女性は14%前後しかいないとのことです。
別の研究では、女性の50%が1回または複数回のオーガズムのためにバイブレーターを使っていると報告しています。中には、バイブレーターを使うと感度が低下し、振動を伴わない刺激でオーガズムを得ることが難しくなると主張する人もいますが、多くの研究では鈍感化は軽症で一過性のものだとされています。
◆4:女性のオーガズムは何のためにあるのか?
女性のオーガズムに関する進化論者の見解は、大きく分けると「繁殖の成功率を高めるため」「女性とパートナーの結合を強化するため」「特に目的はない」の3つに分類されます。
チャーマーズ氏は「女性のオーガズムが進化論的な役割を持っていないとしても、それが重要ではないというわけではありません。オーガズムは多くの女性の健全な関係と性的な幸福に貢献しているという意味で、重要なものです」と述べました。
なお、冒頭で取り上げたオーガズムに関する新説では、「女性のオーガズムには、生殖器が精子を受け入れる準備を整え、精子を生き残りやすくして生殖を成功させる可能性を上げる役割がある」との結論が導き出されています。
「女性にはなぜオーガズムがあるのか?」という議論に新たな説が提唱される - GIGAZINE
チャーマーズ氏は末尾で「クリトリスの本当の機能が最近になって分かってきたほか、Gスポットが存在しているかどうかもまだ議論が行われている最中です。また、女性のセクシュアリティや性欲・好き嫌いなどの個人差も信じられないほど多様です。従って、オーガズムの複雑さと多様性をより深く理解するには、さらなる研究が必要です」と述べて、女性のオーガズムについてはいまだ解明されていない部分が多く残されているとの見方を示しました。
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