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SpaceXの衛星インターネット「Starlink」のエンジニアチームが「質問ある?」スレに降臨、質問&回答はこんな感じ

by Official SpaceX Photos

民間宇宙開発企業のSpaceXが提供する衛星インターネット「Starlink」のエンジニアチームが英語圏最大の掲示板であるRedditの「ユーザーからの質問にできる限り答えること」をテーマにした名物企画「Ask Me Anything(AMA:何か質問ある?)」に登場。Starlinkの技術的な疑問に答え、今後の展望を語りました。


We are the Starlink team, ask us anything! : Starlink
https://www.reddit.com/r/Starlink/comments/jybmgn/we_are_the_starlink_team_ask_us_anything/

SpaceX Starlink engineers take questions in Reddit AMA—here are highlights | Ars Technica
https://arstechnica.com/information-technology/2020/11/spacex-starlink-questions-answered-wider-beta-soon-no-plan-for-data-caps/

・「現時点では」データ通信量に上限を設けるつもりはない
インターネットサービスの1つのポイントとして、「データ通信量」の制限が挙げられます。「Starlinkのデータ通信量の制限はどうなりますか?」という質問に対して、エンジニアチームは「現時点では、Starlinkのベータサービスにはデータ通信量の上限が存在しません」と現況について述べた上で、「過去の衛星インターネットに存在したようなデータ通信量の制限を実装することを全く望んでいませんが、将来的には悪用を防ぎ、全ての人に質の高いサービスを提供できるようにに何かしなければいけないかもしれません」として、必要に迫られた場合にはデータ通信量に上限を設ける必要が出てくるかもしれないと回答しました。

・エンジニアチームは人手不足
StarlinkエンジニアチームはAMAの中で「SpaceXはエンジニア不足」という旨の回答を何度か行っており、「Starlinkのベータユーザー枠の拡張はいつ頃行われますか?」という質問に対しては「実現のためには優れたソフトウェアエンジニアをStarlinkに派遣するのが最善の方法でしょうね」とコメントしています。

実際にエンジニアチームはAMAのスレッド説明欄に「Send your resume to [email protected](履歴書をメールで送ってね)」と書き記しており、プロダクションデザイナーやプロダクトデザイナー、ソフトウェアエンジニア、ネットワークエンジニアなどの職業を募集しています。AMA中で募集されている職種の一覧はこんな感じでした。


・家から離れると通信品質が下がる
AMAに寄せられた質問の中には、南フロリダに停泊しているボートに住んでいるというユーザーからの「外洋に出ても信頼性の高い接続が提供されますか?」という質問がありましたが、エンジニアチームは「現状では契約時に設定した住所でしかサービスを提供していません。設定した住所の近所なら運が良ければ接続できるかもしれませんが、サービスの質については保証できません」と回答。ボートに住んでいるというユーザーが望んでいるような「Mobility options(移動時接続)」については衛星が増えた際に提供される予定だと語っています。

SpaceXは連邦通信委員会に対して、船上やプライベートジェット上でStarlinkの接続テストを行うための許可を申請しており、移動時接続の実現に意欲的な姿勢を見せています。

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・動作保証気温はマイナス30℃から40℃まで、台風や竜巻などには未対応
雷雨や強風などの悪天候時はどうなるのかという質問に対して、「Starlinkのアンテナは台風や竜巻などを想定していません」とエンジニアチームは回答。耐寒性能を心配するカナダのユーザーに対しては、「マイナス30℃から40℃までの動作は確認しています」とのことでした。

なお、Starlinkの受信用アンテナは気象現象を解決するための発熱機能が備わっているそうで、2020年の冬季期間中に「雪を解かす能力を向上させるソフトウェアアップデート」が配信される予定です。

・衛星間でデータ転送を行う「衛星間レーザー通信」機能について
SpaceXが実験を行っているレーザーを使った衛星間のデータ転送技術「衛星間レーザー通信」について、「光の速さはファイバー中よりも真空中のほうが速いため、衛星間レーザー通信は低レイテンシ接続を実現する可能性を秘めています。さらに、衛星間レーザー通信を使えば衛星から地上に設置されたアンテナが見えないような場所でもユーザーにサービスを提供できるかもしれません」「2020年初頭には、プロトタイプ版の衛星間レーザー通信でギガバイトを超えるデータを転送することに成功しました」とエンジニアチームは言及。しかし、まだまだ課題が多く残されているそうで、現状はコストの問題や生産速度の向上が未解決とのことでした。

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・「障害物問題」は今後解決する見通し
パラボラアンテナで衛星とデータ通信を行うStarlinkは、パラボラアンテナと衛星の間に障害物が挟まると通信が途切れるという問題が存在します。「かなり頻繁に接続が途切れるんですが」という質問に対してエンジニアリングチームは「現在はソフトウェア機能で改善を目指している状態です。今後、衛星の数が増えれば大幅に改善されると思います」と回答しました。

また、エンジニアチームはパラボラアンテナが衛星を探知する方法についても解説しています。Starlinkのパラボラアンテナはミリ秒単位で空を電子的にスキャンしており、衛星を検出すると当該衛星との接続を確立し、最適な接続を確立できる衛星を示すスケジュールをダウンロードするとのこと。このスケジュールを参照することで、適切な時間で最適な接続を保てる衛星に接続を切り替えているそうです。

・省電力モードとレイテンシの改善は今後の課題
ヨットなどのポータブル電源での動作時に望まれる省電力モードについて、エンジニアチームは「将来に向けて注力している重要な項目で、ソフトウェアとネットワークのアップデートによって、ネットワークの接続を維持したまま電力消費を削減できる効率的な省電力モードを実装しようとしています」とコメント。リアルタイムな対戦ゲームなどに重要となるレイテンシの改善についても、「現在のスターリンク衛星は地球までの通信時間が1.8ミリ秒です。ユーザーからゲームサーバーとの通信時は通信が2往復する計算なので、レイテンシは8ミリ秒未満になりますが、衛星が頭上にない場合はさらなる遅延が予想されます」と解説しました。

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・IPv6やプラグアンドプレイについて
このほかにも、エンジニアチームはIPv6やプラグアンドプレイの対応などについてもAMA中で言及しており、IPv6についてはまもなく実装予定とのこと。開封してから屋根にパラボナアンテナを取り付けて角度を調整するという作業が必要な現状については、「作業を簡単にする方法についてのアイデアを募集しています」とコメントしています。

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