地球に知的生命体が誕生したのは「宇宙全体で見ても非常にまれな出来事」だったと研究者が主張
人間のような知的生命体が地球外にも存在していると考える人は多く、中には宇宙人と遭遇した際の対処方法を真剣に検討する人もいます。ところが、地球上に生命が誕生して知的生命体に進化する可能性について分析したオックスフォード大学の研究チームは、「知的生命体の誕生は非常にまれな出来事である」と主張しています。
The Timing of Evolutionary Transitions Suggests Intelligent Life Is Rare | Astrobiology
https://www.liebertpub.com/doi/full/10.1089/ast.2019.2149
Does Intelligent Life Exist Anywhere Else? Here Are the Chances
https://www.popularmechanics.com/science/a34771475/does-intelligent-life-exist-elsewhere/
New paper out by Andrew E. Snyder-Beattie, me, Eric Drexler and @mbbonsall about how the timing of evolutionary transitions on Earth suggests intelligent life is rare: https://t.co/Kjd9zddqXh
— Anders Sandberg (@anderssandberg) November 24, 2020
記事作成時点では宇宙人が地球人と接触したという科学的な証拠は見つかっておらず、地球外に知的生命体が存在することは確かめられていません。また、「広大な宇宙には高度な地球外文明があってもおかしくないのに、なぜこれまで地球に到達していないのか?」という矛盾を問いかけるフェルミのパラドックスは、多くの科学者の頭を悩ませてきました。
オックスフォード大学のFuture of Humanity Institute(人類未来研究所)に所属するAnders Sandberg氏らの研究チームは、地球における生命体の進化について分析。生命体が知能を獲得するまでの変遷を調べることで、知的生命体が誕生する可能性について研究しました。
Sandberg氏は、「地球上には生命が存在しますが、これは宇宙において生命の存在が一般的である証拠にはなりません。なぜなら、生命を観察するためには生きている『観察者』が必要だからです」と指摘。たとえ宇宙全体に存在する生命が非常に希少であったとしても、「生命が存在する」と観測できる全ての生命体が住む惑星には、何かしらの生命が存在していることになります。
観測者の立ち位置によって現象の希少性がわかりにくくなる「観測者の選択効果」は、生命の観測以外の場面でも起こり得ます。たとえば、人類が生まれてから地球には大量絶滅を引き起こす大きさの隕石が1度も衝突していませんが、だからといって「地球には巨大な隕石が衝突しにくい」とは言い切れません。
地球の歴史では、惑星が誕生してから早い時点で原始的な生命が出現しましたが、これは「生命の誕生は宇宙において一般的な現象である」ことの証拠にはならないとのこと。「惑星の歴史においてかなり早期の段階で原始的な生命が誕生した」ことを観測者が知るには、惑星に生命が住めなくなる前に生命が進化して知能を持った観測者が誕生し、過去の歴史を調査する必要があります。そのため、「観測者が存在する惑星」における原始的な生命の誕生は、統計的に見ると早い時期に偏る傾向があるとSandberg氏は指摘しています。
地球における生命の誕生と進化をやり直すことはできないため、生命が誕生して知的生命体が生まれるまでに起きる多様なイベントが発生する確率を知ることは困難です。それでも、進化イベントが起きるタイミングと頻度を調査することで、ある程度の推定を行うことが可能です。
たとえば、細胞内にDNAを包む核を有する真核生物が誕生したのは、核を持たない原核生物の誕生から10億年以上が経過した後だとみられています。このことから、「原核生物が真核生物に進化する」イベントが起きる可能性は、40回以上独立して起きたとされている「単細胞生物が多細胞生物に進化する」イベントと比較して、はるかに可能性が低いと示唆されているとのこと。
研究チームは観測した事象から推定したい事象を確率的に推定するベイズ推定を用いて、生命の誕生、良好な遺伝子のコーディング、原核生物から真核生物への進化、有性生殖の発生といった進化の過程におけるさまざまなイベントが起きる可能性を分析しました。
その結果、知的生命体の誕生は非常にまれな出来事であり、「観測可能な宇宙の中に存在する知的生命体は人類しかいない」という割合が高いことが判明したのこと。進化において重要な各イベントが完了するまでの推定時間は、地球の寿命の数倍になる可能性があるとの結論を研究チームは示しています。
なお、この結論は新たな情報によって更新されるものであり、非常に過酷な環境で生命が発見されたり金星で生命が発見されたりすることで、地球外の知的生命体が存在する可能性は高まるとSandberg氏は説明しました。
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