海外へ旅行するために闇ルートから「偽の新型コロナ陰性証明書」を買う人がいる
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行を受けて、各国では厳しい渡航制限を設けるなどの措置が執られました。そんな状況下でも旅行をしたいという人はいるもので、「偽の新型コロナウイルス陰性証明書」を闇ルートで購入し、旅行者に陰性証明書の提出を義務づける国や地域へ渡航しようとするケースがあると報じられています。
Tourists are buying fake covid-19 test results on the black market to travel - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/travel/2020/11/10/fake-tests-covid-flights/
COVID-19 tests: People arrested for selling fake results to travelers
https://www.usatoday.com/story/travel/news/2020/11/11/covid-19-tests-people-arrested-selling-fake-results-travelers/6246528002/
Travelers Are Buying Fake COVID-19 Test Results on the Black Market | Travel + Leisure
https://www.travelandleisure.com/travel-news/travelers-using-counterfeit-covid-test-results
2019年末に中国で発見された新型コロナウイルスは、2020年が終わりにさしかかっても依然として感染拡大が続いています。2020年11月11日の時点で、全世界における新型コロナウイルス感染者は5100万人を超えており、死者数も127万人に達しました。
新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数(11日午後8時時点) 死者127.5万人に 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3315371
こうした状況において、多くの国が入国者に対して「新型コロナウイルス検査の陰性証明書」の提出を義務づけており、旅行直前の検査で自身が陰性だったことを示す必要があります。外務省のホームページでも、日本からの渡航者に陰性証明の提出を義務づける国や地域をチェックすることが可能です。なお、陰性証明書の提出を義務づける場合、一般的には入国の72~96時間前に受けた検査結果のみが有効とされている模様。
しかし、陰性証明書の提出を義務づけられている国や地域へ旅行したい人々が、必ずしも有効な陰性証明書を入手できるとは限りません。一般市民が広く検査を受けられる体勢が整っていない国では、身近に新型コロナウイルス感染者が出るか、COVID-19の症状が現れるか、仕事の関係で定期的に検査を受けられる人でない限り、出国直前に陰性証明書を入手することは困難です。
そこで一部の旅行者は、「闇ルートで購入した偽の陰性証明書」を使って目的地への渡航をもくろんでいると報じられています。2020年11月6日、フランス当局はパリ最大の空港であるシャルル・ド・ゴール空港において旅行者に「偽の新型コロナウイルス陰性証明書」を販売したとして、7人の男女を文書偽造や詐欺の疑いで逮捕しました。
AP通信の報道によると、偽の新型コロナウイルス陰性証明書に関する調査は、9月にエチオピアのアディスアベバへ入国しようとした旅行者が偽の陰性証明書を持っていた一件がきっかけだそうです。偽の陰性証明書にはパリにある医療研究所の名前が記されていましたが、証明書を持っていた旅行者が検査を受けた事実はありませんでした。犯人グループは旅行者に対し、偽造された証明書を150~300ユーロ(約1万8000~3万7000円)で販売していたとのこと。
同様の問題は世界各国で起きており、10月にはブラジルのフェルナンド・デ・ノローニャ群島を訪問しようとしたブラジル人旅行者が、入島に必要な新型コロナウイルス陰性証明書の日付を改ざんしたとして逮捕されました。フェルナンド・デ・ノローニャ群島は10月10日に観光客の受け入れを再開したものの、訪問者は24時間以内に取得した陰性証明書の提出を義務づけられています。
また、イギリスの新聞であるランカシャー・テレグラフの取材に応じたブラックバーン在住の男性は、「友人の陰性証明書を改ざんして偽の陰性証明書を入手した」と述べています。男性によると、電子メールで送られた友人の陰性証明書を、名前や生年月日、検査日といった項目を書き換えて印刷するだけで、簡単に陰性証明書を偽造できたとのこと。
男性はパキスタンに渡航する必要に迫られたため、入国時の審査をパスするために偽の陰性証明書を入手したそうです。「緊急事態でパキスタンへ旅行しなければならない場合、COVID-19の検査を受けられない人々は陰性証明書を偽造しています。重要な労働者でなければ陰性証明書を入手することは困難であり、症状がなければ検査を受けられません。では、一体どうやって旅行すればいいのでしょう?」と、男性はランカシャー・テレグラフに語りました。
さらにランカシャー・テレグラフは、イギリスに「陰性証明書の闇市場」があることも報じています。ブラックバーンでの料金はおよそ50ポンド(約6900円)であり、ブラッドフォードでは「特急料金」が150ポンド(約2万600円)だそうです。ある旅行者は、旅行代理店が「いざとなれば陰性証明書を50ポンドで提供できる」と申し出たと証言しています。
各国の当局も陰性証明書の偽造について把握しており、すでに偽の陰性証明書が審査をくぐり抜けないようにさまざまな対策を行っています。たとえば、ハワイでは旅行者が事前にオンラインプログラムに登録し、承認された検査パートナーを通じてPCR検査を受けて、オンラインで結果をアップロードすることを要求しています。日本でも21カ所の医療機関が検査パートナーに指定されており、事前に検査を受けることで隔離期間なしでハワイに旅行できるとのこと。
また、大手航空会社は検査体制などで歩調を合わせており、世界共通の電子証明書である「Common Pass(コモンパス)」を共通基準として旅行客の審査を行う予定です。すでにユナイテッド航空やキャセイパシフィック航空では、コモンパスを用いた審査の一元化を進めています。
世界の航空3大連合、検査体制などで共同歩調、デジタル検査証明「コモンパス」を共通基準に | トラベルボイス
https://www.travelvoice.jp/20201112-147511
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