サイエンス

ゲノム編集技術「CRISPR」で遺伝性眼疾患を治療する研究に前進、マウスの治療に成功


CRISPR-Cas9を応用した新たなゲノム編集技術によって、遺伝性眼疾患に苦しむマウスの網膜機能と視覚機能を回復させることに成功したとカリフォルニア大学アーバイン校が発表しました。

Restoration of visual function in adult mice with an inherited retinal disease via adenine base editing | Nature Biomedical Engineering
https://www.nature.com/articles/s41551-020-00632-6


UCI-led study reveals significant restoration of retinal and visual function following gene therapy | School of Medicine | University of California, Irvine
https://www.som.uci.edu/news_releases/Retinal-visual-function-restored-with-gene-therapy.asp

視覚は五感の中でも特に重要とされる感覚ですが、先天的な遺伝子変異によって重度の視力喪失や失明が生じる場合があります。網膜色素変性症レーバー先天性黒内障などの遺伝子変異によって生じる眼疾患は「Inherited retinal diseases(IRD、遺伝性眼疾患)」と呼ばれており、有効な治療法が確立されていないことで知られています。

こうしたIRDに対して、カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームは、CRISPR-Cas9を応用した新技術「Base Editing(一塩基編集)」に着目。CRISPR-Cas9はDNAの二本鎖を切断してゲノムを編集する技術ですが、一塩基編集は生物が有するDNA修復機構を利用してDNA鎖を切断せずにゲノムを編集するという技術です。


研究チームは、IRDに関係する約250の遺伝子に含まれる「RPE65遺伝子」が変異しているマウスに対し、ナンセンス突然変異を抑えるようアデニンを一塩基編集したウイルスを網膜下に注入。その結果、RPE65遺伝子の変異によって生じていた網膜および視覚の異常が回復したと報告しました。

研究チームは「治療後のマウスは、方向・距離・コントラスト・空間的および時間的な頻度を視覚的に識別できるようになった」と解説。「今回の研究結果がIRDの治療法開発のための大きな一歩になるだろう」と語りました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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