住宅から「黒人が住んでいた痕跡」を取り除くと評価額が40%も上昇したという実例
黒人差別が根深く残っているとされるアメリカにおいて、「黒人を連想させる家具」を取り除いた住宅の評価額が40%も増加するという実例が報じられました。
Florida couple erases 'blackness' from home, appraisal jumps 40% | firstcoastnews.com
https://www.firstcoastnews.com/article/news/local/jacksonville-couple-sees-home-appraisal-jump-40-percent-after-they-remove-all-traces-of-blackness/77-c3087e8c-0c65-4fb9-8319-da82f5c0ea20
Black Homeowners Face Discrimination in Appraisals - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/08/25/realestate/blacks-minorities-appraisals-discrimination.html
フロリダ州ジャクソンビルに住むアベナ・ホートンさんとアレックス・ホートンさんのホートン夫妻が、これまで住んでいた自宅を手放そうと不動産鑑定士に価格評価を求めたところ、近隣の住宅価格から予想される価格を10万ドル(約1000万円)以上も下回る33万ドル(約3500万円)と査定されてしまいました。以下の写真がホートン夫妻。妻のアベナさんが黒人で、夫のアレックスさんは白人です。後ろに写っているのが問題の住宅。
そこでホートン夫妻は、自宅から黒人の親戚が写っている写真や、アフリカ系アメリカ人の偉人の肖像画、1920年代から40年代にかけて活躍したアフリカ系アメリカ人女性作家のゾラ・ニール・ハーストンや黒人文学の立役者として知られるトニ・モリスンの著作を除去。さらに、黒人であるアベナさんは外出し、白人であるアレックスさんだけが家に居る状態にしてから先の鑑定士とは別の鑑定士を呼んでみました。
以上のように黒人の痕跡を全て除去してから査定してもらったところ、評価価格は46万5000ドル(約4900万円)と、最初の査定価格の33万ドルに比べて、およそ40%以上も価格が跳ね上がったとのこと。さらに、1人目の鑑定士は査定中に家具などについて失礼なコメントを次から次に言い立てるという「あら探し」を常に行っていましたが、2人目の鑑定士はあら探しを行わなかったそうです。
この実例について、アメリカ大手紙のニューヨーク・タイムズは、「アメリカにおいて人種と住宅政策は長い間絡み合ってきた問題」と解説しています。アメリカにおいて、白人に比べて黒人は住宅ローンの承認を受けることが難しく、金融機関は低所得階層の黒人が居住する地域を融資リスクが高いとして赤線で囲み、融資対象から除外するという「レッドライニング」という慣行が存在してきました。このレッドライニングによって、黒人が多く住む地域の住宅価格は下がり続けているとのこと。
今回の一件はレッドライニングの延長線上にある問題で、白人が居住する地域であっても黒人の住宅所有者は査定価格が低くなるのが通例だそうです。1968年に制定された公正住宅法は、住宅鑑定士が差別的な鑑定を行った場合には、免許を剥奪するだけでなく、懲役刑を科すと定めており、1989年に制定された金融機関改革回復執行法も同様の措置について定めています。しかし、今回の実例は、黒人の住宅所有者に関する実態が法律の理念とはかけ離れていることを示しています。
今回の一件についてアベナさんは「心が折れそうです。黒人のコミュニティでは自宅を売却する際に写真を取り外すというのは常識ですが、査定時に注意しなければならないとは思っていませんでした」とコメントしています。
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