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85人の死者を出す史上最悪の山火事の原因となった送電線は「どこが壊れていた」のか?


2018年11月にアメリカのカリフォルニア州で発生した山火事は、85人もの死者を出した同州史上最大規模の山火事でした。山火事の火元は送電線であったことが判明しており、ビンテージハードウェアの情報を伝えるTube Time氏が、当時の画像を交えながら火元の詳細を説明しています。


山火事発生後の2018年11月11日に撮影された送電塔の写真。一見すると異常は無いようですが……


送電線と鉄塔を絶縁するためのがいしがひとつ脱落しています。


本来であれば、左右のがいしは同じ高さに設置されていなければなりません。


がいしを支えているのは「Cフック」と呼ばれる部品とのこと。


これが脱落したがいしを支えていたCフックの画像。フック部分が分断しています。


フックの断面を観察すると、黒線で囲まれた部分には赤さびが生じています。また、赤線に沿うようにがいしがフックを削った跡も見られ、長い間メンテナンスが行われていなかったことがわかります。


これが劣化してはいるものの分断には至っていないCフックの画像です。本来は分断に至る前にフックを交換する必要がありますが、事故の原因となったCフックは交換されることなく摩耗していった結果、分断してしまいました。


Cフックが壊れ、がいしが脱落したことで、11万5000ボルトもの電圧がかかっている送電線と鉄塔がショート。高温の送電線が地面に散らばり、山火事の火元となりました。


山火事の発生当日は非常に空気が乾燥しており、風も強かったため、あっという間に火が燃え広がったとのこと。


火は1分間で東京ドーム2個分の山林を焼失させる勢いで燃え広がり、85人の死者を出すカリフォルニア州史上最悪の山火事となりました。


Cフックのメンテナンスが行われていなかった期間については、鉄塔を管理していたアメリカの電力・ガス会社大手のパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー(PG&E)が記録を残していないため不明ですが、FBIが調査したところ、Cフックの材料が真ちゅう製であることが判明しました。直近100年の間に製造されたCフックには、真ちゅうは使われていないとのこと。

山火事の原因となったCフックは、ある時点でもとのブラケットから新しく固定したLブラケットへと移動させられていたため、PG&E側はこの問題を認識していたはずとTube Time氏は推測。PG&Eには定期的な点検が法的に義務づけられていますが、2000年以前の記録がないため、点検が行われた時期は不明です。


PG&Eは2019年12月、総額135億ドル(約1兆4600億円)の損害賠償金を支払うことで山火事の被害者と和解。また、2019年に申請した連邦倒産法第11章から、現在は脱却しています。

なお、ソーシャルニュースサイト・Hacker Newsのコメント欄では、「PG&Eには間違いなく責任があるものの、山火事が発生した地域が森林が生い茂った乾燥地帯であることを考えると、山火事による被害のすべてをPG&Eの責任とするのは難しい」とする意見など、山火事を起こした責任の所在に関する議論が行われています。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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