やりたくないことをズルズルと先延ばしにしないためには「考えないこと」が重要
勉強から床掃除まで、誰しもが「やりたくないこと」を持っています。ブリティッシュコロンビア大学で基礎工学を学ぶTiffany Matthéさんにとって、「やらなければならないけれどやりたくないこと」は運動でした。Matthéさんは5年の歳月を運動の「先延ばし行動」に費やしたものの、その後、運動の習慣付けに成功しました。やりたくないことをやるために重要なポイントを、Matthéさんが経験からつづっています。
The Art of Not Thinking | Tiffany Matthé
https://tiffanymatthe.com/not-thinking
Matthéさんは、5年の間に運動を全く行わなかったわけではなく、YouTubeを見ながらワークアウトをしたり、弟と一緒にランニングをしたりと、時折運動することはあったそうです。Matthéさんは運動嫌いというわけではなく、運動後に爽快感を得ていましたが、運動した翌朝に同じことを繰り返そうとすると気分が沈んだとのこと。
このような経験を経て、ある時点でMatthéさんは「最も困難なパートは『やっている間』ではなく『始めること』だ」と気づきました。いったん運動を始めてしまえば常に集中し、最後までやり遂げることができたためです。
何かを行うために必要なエネルギーについて、Matthéさんが図示したものが以下。縦軸がエネルギー量、横軸が時間を示しており、モチベーションが必要なのはタスクを開始するまでの間であることがわかります。タスクに取り掛かるまでに必要なエネルギー量は、発熱反応と同様だとMatthéさんは語ります。
発熱反応では、反応を起こすため、反応物は最小活性化エネルギーを必要とし、反応が起こってしまえば、反応物はよりエネルギーの低い状態に落ち着きます。これを「やりたくないことを実行する」までのプロセスに当てはめると、タスクの実行(反応)のため、人(反応物)はモチベーション(最小活性化エネルギー)を必要とするということになります。
活動を起こさずして活性化エネルギー、つまりモチベーションを得ることはできませんが、幸いなことに必要なエネルギー量は多くないそうです。Matthéさんによると、このときやってはいけないのは、「モチベーションを探すこと」だとのこと。
人がモチベーションを探す時、タスクを実行する利点について考えてしまいます。しかし、人の脳は幼児のようなもので、ある方向について考えようとすると、逆向きの考えが強く浮かんでしまうとのこと。脳が「選択肢がある」と考えると、「議論」が発生し、タスクの「欠点」や「代替案」が生み出されてしまいます。これに抵抗するエネルギーが必要になることで、最小活性化エネルギーが増加してしまい、タスクの実行がより難しくなります。
一方で、タスクについて考えなければ、自分の中で議論したり、代替案を生み出すプロセス自体を回避することが可能。
しかし、考えないことが重要だといっても、実際に「考えずに実行する」のは至難の業。そこで、Matthéさんは「事前にやることを決断しておく」という方法を挙げています。Matthéさんが考案した「事前に決断すること」の1つ目のやり方は、「2分以内に行えることは全てやる」というルールを事前に決めておくというもの。ベッドの上に衣服が散らばっているとき、衣服の整理には2分もかからないので、ルールに従えば考えたり頭の中で議論することなく実行に移せます。
2つ目のやり方は「前日に計画しておく」というもの。寝る前に、翌日にやることを分単位で計画し、朝になったらスケジュール通りに行動するという方法も、考えないで行動するための1つの手です。必ずしも成功するとは限りませんが、人は行動に移すタイミングから時間が離れているほど合理的な決定を下せるため、この方法には試す価値があるとのこと。
また、タスクの簡単な部分やささいな部分から取り掛かることも、先延ばし行動を回避する方法として挙げられています。奨学金申請書に自分のことを書くのが嫌で先延ばしにしている場合は、まずは長い文章を書くのではなく、ポイントだけを箇条書きします。5分程度のささいな作業を行っているうちに作業そのものに没頭し、タスクを続行することが可能とのこと。
Matthéさんが先延ばし行動を克服したのは、上記の方法を利用したため。Matthéさんは自分に「1日おきに5分だけ運動する」と言い聞かせたことで、何も考えなくとも最低15分は運動できるようになったそうです。
「考えないこと」は、したくないことをする時に大きな力を発揮する可能性があります。しかし一方で、追及する目標がないとうまくいかないとMatthéさんは考えています。行動の全体目標を定めるための時間をとり、本当にやりたい事だと確信を持てたら、考えることをやめて「ロボットになること」をMatthéさんは推奨しています。
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