大量発生したバッタの群れが世界を侵略中、「2020年は一体何が過去と違うのか?」をムービーで解説

2019年ごろにアフリカなどで大量発生したバッタが、規模を拡大しながらアジアに押し寄せていることが報じられています。過去にも度々大量発生し、人類を苦しめてきたバッタが、過去に類を見ない規模で大量発生しているメカニズムについて、社会問題などを取り扱うYouTubeチャンネルVoxが分かりやすく解説しています。
Why locusts are descending on East Africa - YouTube

事の発端は、2018年5月にアラビア半島を襲ったサイクロンです。

これにより、アラビア半島南部は20年ぶりに水で満たされ、ルブアルハリ砂漠には無数の湖ができました。

さらに、同年の10月にもサイクロンが発生しました。

その後もアラビア海ではかつてない頻度で大規模なサイクロンが発生し、乾燥地帯だった多くの国々は記録的な洪水に見舞われました。

それは、アフリカ東部にあるソマリアなどの地域も例外ではありませんでした。

やがて水は引きましたが、代わりに新しい災害が発生しました。それが「蝗害(こうがい)」です。

蝗害は、サバクトビバッタという昆虫によって引き起こされます。

サバクトビバッタの生息地域はアフリカ、中東、アジアにまたがっており、非常に広い範囲で見られます。

たびたび大量発生しては甚大な被害をもたらすサバクトビバッタですが、通常は群れではなく1匹単位で生活しており、この状態は孤独相と呼ばれています。

しかし、突然の雨で草木が青々と茂り、1カ所に多くの個体が集まるようになると、異変が生じます。

まず、体の色が黄色や黒色に変わり、小型化して飛行に最適化されます。

さらに、脳が変化して食欲が旺盛になります。

この状態は群生相と呼ばれ、孤独相のサバクトビバッタから群生相の個体が生まれることを相変異といいます。

この状態になったサバクトビバッタは大量の卵を産み、卵からかえった幼虫は「ホッパーバンド」と呼ばれる群れを形成します。幼虫は翅が生えていないので、地面を跳ね回るだけですが、やがて翅が生えて飛行能力を獲得すると、止めることは不可能になります。

群れには、1平方キロメートル当たり最大1億5000匹のサバクトビバッタがひしめき合うようになり、群れは風に乗って1日150kmも移動することが可能です。

1匹のサバクトビバッタは、1日に自分の体重と同じだけの植物を食べるため、大規模な群れになると3500人の人間に匹敵する量の食料を食べ尽くしてしまいます。

2019年後半から、東アフリカではここ数十年で最悪の蝗害(こうがい)が発生していましたが、2020年に入るとさらに大きな2400平方キロメートル規模の群れが発生するようになりました。

この群れは、大都市ニューヨークの3倍の大きさで、数千万人分の食料を短時間で消費してしまう力を持っています。

その影響たるや、飛行機が航路の変更を余儀なくされるほど。

エチオピアでは、5万エーカー(約200平方キロメートル)の農地が壊滅し……

多くの人々が深刻な食糧難に直面しています。

また、被害を受ける範囲も広がっています。2月にパキスタン政府が蝗害による緊急事態宣言を発令しましたが……

サバクトビバッタの群れは、5月末にはパキスタンの東隣にあるインド北部へと到達し、この地域に1962年以来最悪の被害をもたらしています。

「なぜ2020年はこれほどサバクトビバッタが発生しているのか?」という疑問の答えは、「気候」です。サバクトビバッタは、繁殖に適した気候条件が重なると世代を経るごとに数が20倍になります。

特に、乾燥地帯だった地域で長期にわたり大量の雨が降ると、個体数は指数関数的に増加するようになります。

つまり、2018年~2019年にアラビア半島やアフリカ東部で多発したサイクロンが、サバクトビバッタの記録的な大量発生の引き金となったわけです。

かつては、中東や東アフリカでサイクロンが多発するようなことは多くありませんでしたが、気候変動により一般的な現象になりつつあります。

「気候変動がもたらす影響は、『砂漠に雨が降れば緑が増える』という単純なものではなく、洪水や大量のサバクトビバッタによる食糧危機といった形で人類に跳ね返ってきています」とVoxは締めくくっています。

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