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ゲームのNPCに個性を持たせて魂を吹き込む極意とは?


ロールプレイングゲームなどで主人公が村人に話しかけると「○○の村へようこそ」といったお決まりのセリフで迎えられるのはよくあるパターンで、決まったセリフしか言わないノンプレイヤーキャラクター(NPC)は個性がないものと考えられがちです。しかし、ゲームのナラティブデザイナーであるジェフリー・ゴールデン氏は、無個性なNPCにも「魂を与えることができる」と述べており、ゲーム情報サイト「The Pause Button」でNPCに魂を吹き込むための極意を語っています。

How to Put More “Character” Into Your NPCs - The Pause Button
https://pausebutton.substack.com/p/how-to-put-more-character-into-your

ゲームのNPCといえば村人です。ゴールデン氏は村人お決まりのセリフとして、以下のセリフを挙げています。

ドラゴンはまた現れると思いますか?
ファイアマウンテンにはドラゴンの炎を防ぐ鏡があるそうですよ。


新旧問わず数え切れないほどのゲームで使われている村人の無個性な決まり文句を、ゴールデン氏は「スケルトントーク」と呼んでいます。ゲームプレイの観点から言えば、スケルトントークはゲーム内の状況を説明したり、次にやるべき行動を誘導したりできる効率的なセリフです。

しかし、ゴールデン氏は「1人のゲームプレイヤーとして、1人のナラティブデザイナーとして、スケルトントークに満足できません」と主張。「私が町長です」のようなよっぽど特殊な状況下でのセリフでもない限り、似たようなセリフを話す村人はプレイヤーの記憶からすぐに消え去ってしまいます。スケルトントークをするためだけに存在する村人は、「ストーリーを重視するゲームではプレイヤーの没入感を奪いかねない」とゴールデン氏は指摘しています。

ゲームデザインの観点から、ゴールデン氏は「擬人化における4つの質問」を念頭にNPCのセリフを考えているそうです。以下の「擬人化における4つの質問」から、「骨格の上に肉や内臓を置くようにNPCを1人のキャラクターとして生み出すことができる」とゴールデン氏は述べています。


◆1:NPCは誰なのか?
ゴールデン氏はNPCに「威勢がいい」「卑しい」「気難しい」などの個性を与えることから、魂を吹き込む作業を始めます。またゴールデン氏は出番の少ないキャラクターほど個性を少なく、重要なNPCほど多くの個性を付与するとのこと。時には個性だけでなく、キャラクターの全経歴を考えることもあるそうです。

ゴールデン氏はNPCに個性を与える例として、まず外見の特徴を観察し、そこから性格を考えるパターンを挙げています。もし「ドラゴンはまた現れると思いますか? ファイアマウンテンにはドラゴンの炎を防ぐ鏡があるそうですよ」と話す村人が、汚れた服を着て大きな麻袋を持った勇ましい性格と個性づけした場合、以下のようなセリフに変更するとゴールデン氏は例を挙げています。

いまいましいドラゴンめ、二度と顔を見たくないね。
ファイアマウンテンにはドラゴンの炎を防ぐ鏡があるらしい。
仕事が忙しくなければ、私が取ってきたのにな!


もし汚れた服を着て大きな麻袋を持っているという同じ見た目から、NPCは奴隷で怖がりな性格だと考えた場合は以下のようなセリフをゴールデン氏は提案。プレイヤーが受け取る情報は変えず、セリフに個性を加えています。

また袋から穀物をこぼしてしまった。雇い主に殺される!
ドラゴンが戻ってくることを考えると、気が散ってしまうんだ。
ファイアマウンテンには炎を防ぐ鏡があるらしいけど、雇い主の鏡は全部処分したんだよ。
私が全部壊してしまったから。


◆2:NPCは主人公とどんな関係なのか?
ほとんどの人は、パートナー、上司、ペット、見知らぬ人に対して、それぞれ異なる話し方をします。主人公がNPCにとってどのような存在であるかという関係性を明確にすることでも、セリフに個性が生むことが可能。例えば、村人が主人公の母親だった場合、主人公を心配するようなセリフをゴールデン氏は書いています。

ドラゴンは戻ってこないと思う...そうだよね?
ファイアマウンテンには炎を防ぐ鏡があるそうだけど、でも行かないで。
私の大切な天使には危険すぎる!


では、村人にとって主人公が見知らぬ人の場合はどうなるのかというと、「村人が見知らぬ人をどう思っているのか」でセリフが変わるとゴールデン氏は述べています。ドラゴンの被害を受け、手を差し伸べてくれる人に会うのが嬉しいのか? 自分の気持ちを打ち明けたいと思うのか? 村が大きな被害を受け、他人に対して疑心暗鬼になっていないか? もし疑心暗鬼な村人であれば、ゴールデン氏は以下のようにセリフを書き換えています。

お前は誰だ、ドラゴンのスパイか?
お前が俺たちの味方だと証明してくれ。
ドラゴンと戦うための武器を用意するんだ。
ファイアマウンテンには、炎を防ぐ鏡があるんだ。


◆3:NPCは何を望んでいるのか?
「NPCが何を望んでいるのかを考える」というのは、ゴールデン氏が脚本家のトッド・アルコット氏から受けたアドバイスとのこと。「物語のキャラクターは、内なる強い願望によって行動に駆り立てられています。『どうぶつの森』のたぬきちはビジネスを成功させたいと思っているし、『トゥームレイダー』のララ・クロフトは、失われた古代文明を発見したいという目標を持って冒険しています」とゴールデン氏は述べています。

主要キャラクターだけでなく、脇役にも願望があるはずです。NPCの願望を把握し、それを明確に表現して同情を誘うことで、プレイヤーはより村人を助けたいと思えるようになるというわけ。例えば、「ドラゴンに襲われてから一度も寝ていないのでドラゴンがいなくなってほしい」という願望を持った村人のセリフを、ゴールデン氏は以下のように書いています。

もう疲れました。ドラゴンの襲撃以来、一睡もしていないんです。
この村はとても平和だったのに、今では恐怖の叫び声しか聞こえません。
おそらくファイアマウンテンにはドラゴンの炎を防ぐ鏡があります。
勇者よ、どうかドラゴンを倒してください。私はもう疲れました……


同じ「ドラゴンがいなくなってほしい」という願望でも、「ドラゴンが憎くてたまらない」とドラゴンに怒り心頭な村人なら、ゴールデン氏はセリフは以下のように書き変えています。

やっと村に真の勇者が現れたな。
あんたのためにクエストを用意したよ。
村はドラゴンに悩まされていて、ファイアマウンテンにはドラゴンの炎を防ぐ鏡があるらしい。
やつが叩きのめされるさまを見てみたいものだ。


NPCの願望を明らかにすることで、プレイヤーはなぜこのクエストを引き受けなければならないのかをより強く感じることができます。「アイテムを手に入れるためにクエストを受ける」のではなく、「村人が安心して眠れるように」「血に飢えた村人を満足させるために」という「何のためにプレイしているのか」をはっきりさせることで、プレイヤーのゲームへの没入感もより深いものになります。


◆4:NPCは何を感じているのか?
NPCに話しかけた瞬間に、NPCが何を感じているのかというのも重要な要素です。例えば、村にドラゴンが迫っている状況で主人公が村人に話しかけた場合のセリフを、ゴールデン氏は以下のように書いています。

何をしている? 命が惜しければ逃げろ!
ドラゴンが私たちを殺しに来る!
ファイアマウンテンで炎を防ぐ伝説の鏡を見つけられれば、我々の最後の希望になるかもしれない!


危険にさらされている人が必ずしもパニックになったり、おびえたりするとは限りません。中には危機的状況においても、信仰心によって落ち着いた村人がいる可能性もあります。例えば、ゴールデン氏が書いた女神の加護を信じる村人のセリフは以下の通り。

ドラゴンは私を傷つけることはできません。
女神はドラゴンを倒すために、あなたをこの村に遣わしたのでしょう。
ファイアマウンテンに鏡があります。それは、あなたをドラゴンの炎から守ります。
女神はいつも私を守ってくれています。


恐怖とパニックに満ちたNPCの村でも、周囲と異なる感情を表現するNPCは目立ち、プレイヤーの記憶に残りやすくなります。


なお、ゴールデン氏はNPCのセリフを考える際に、常に「擬人化における4つの質問」を行っているわけではなく、「時には1つか2つの質問だけで十分な場合もある」とも述べています。質問が少ないからといって手を抜いているわけではなく、しっかり時間をかけてNPCのキャラクターを考えているとのこと。ゴールデン氏は「私はいつもNPCが何者であるかを理解するために時間をかけることで、NPC自身が持つ正義を与えようとしています。デザイナーがNPCの顔や服装、歩き方などを考えるのと同じように、私もNPCが何を考え、何を感じているのかを考えているのです」と語っています。

また、ゴールデン氏が書いたセリフの例が、すべて3~4行以内に収まっていることもポイント。「NPCに個性を持たせるために、たくさんの台詞を書く必要はありません。台詞を書く側としては『擬人化における4つの質問』に合わせて書けばいいのです。4つの質問への短い答えは、NPCだけでなく、ゲームの世界に命を吹き込むことにつながっているのです」とゴールデン氏はコメントしています。

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in ゲーム, Posted by darkhorse_log

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