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NVIDIAのAIが5万本のプレイ動画を見ただけで「パックマン」をゲームエンジンなしに再現

by WishItWas1984

全くプレイしたことがないゲームのプレイムービーを見た時に、頭の中で「自分がそのゲームをプレイするところ」を想像して、なんとなくプレイした気分になったことがある人もいるはず。それと同じように、AIに名作アクションゲーム「パックマン」のゲームプレイを視覚的に学習させることで、既存のゲームエンジンやコードを用意することなく、AIによるシミュレーションだけでパックマンを生成するという試みを、NVIDIAの研究チームが発表しました。

GameGAN
https://nv-tlabs.github.io/gameGAN/

PAC-MAN Recreated with AI by NVIDIA Researchers | NVIDIA Blog
https://blogs.nvidia.com/blog/2020/05/22/gamegan-research-pacman-anniversary/


Pac-Man re-created by Nvidia AI that watched hours of gameplay - Polygon
https://www.polygon.com/2020/5/22/21266829/pac-man-nvidia-ai-game-gan-40th-anniversary

NVIDIAの開発したAI「GameGAN」がどういうものなのかは、以下のムービーで簡単に説明されています。

NVIDIA GameGAN: Celebrating 40 Years of PAC-MAN with Game-Changing AI - YouTube


右に映っているのがGameGANが最終的に生成したパックマン。GameGANが生成したパックマンは単なるデモ映像ではなく、プレイ可能なアプリケーションとして出力可能。


GameGANは単にパックマンをプレイするだけでなく……


「パックマンのプレイ動画を見て、パックマンを再現する」というのが大きなポイント。


GameGANは既製のゲームエンジンは一切使わずに学習と訓練を重ねることで、プレイ可能なパックマンをゼロから作り出しました。


この研究は、1980年5月22日にリリースされたパックマンが、2020年5月22日で40周年を迎えたことを祝して行われました。


NVIDIAの研究チームは、バンダイナムコ研究所から提供されたパックマンのゲームプレイムービー約5万本と、ゲーム操作に対応したキー入力のデータをGameGANに学習させました。この学習はNVIDIA Quadro GV100 GPU4基を搭載したNVIDIAのAI用ワークステーション「NVIDIA DGXシステム」を使い、4日間かけて行われたそうです。


NVIDIAの研究者で論文の主執筆者であるキム・スンウ氏は、「GameGANは、敵対的生成ネットワークを利用してコンピューターゲームエンジンをシミュレートする初の研究です。AIがゲームのプレイムービーを見るだけで、ゲームそのものという環境を生み出せるかどうかを試したかったのです」と述べています。

敵対的生成ネットワークは、生成ネットワークと識別ネットワークの2つで構成されます。「生成ネットワークが生成したものを識別ネットワークが判定し、その結果を生成ネットワークにフィードバックさせる」というサイクルを繰り返すことで、AIそのものの精度を上げていくという仕組み。つまり、5万本のプレイ動画を見て学習したGameGANの生成ネットワークがシミュレーションとしてパックマンを生成し、その結果を識別ネットワークが判定していくことで、GameGANによるシミュレーションの精度が高くなっていくというわけです。

GameGANは学習と訓練を繰り返しながら「パックマンが迷路の中を移動し、壁は通り抜けられないこと」「幽霊がパックマンを追いかけること」「幽霊に触れるとパックマンが死んでしまうこと」「パワーエサというアイテムをゲットすると幽霊が青くなり、パックマンが幽霊を食べられるようになること」といったパックマンの基本ルールを学び、生成するゲームにフィードバックさせていったとのこと。


GameGANが生成したパックマンはアプリケーションとして出力でき、人間もプレイできるとのこと。最終的に生成されたシミュレーションの精度は非常に高く、バンダイナムコ研究所の未来開発統括本部長である堤康一郎氏は「AIがゲームエンジンなしで、パックマンの楽しさを再現できるとは信じられませんでしたが、プレイしてその結果に驚きました」とコメントしています。

ただし、GameGANのゲームプレイスキルがあまりにも高すぎたため、GameGAN自体はゲームオーバーになることがほとんどなく、GameGANの中で「パックマンは死なない」というバイアスが形成されたと研究チームは報告しています。そのため、GameGANが生成したパックマンでは「プレイヤーの操作するパックマンが死んでしまうこと」が許されず、通常であればパックマンが死んでしまうような操作を入力した場合、AIがその結果を回避するためにゲームそのものを改変する可能性もあるそうです。

また、NVIDIAの研究チームは、人気ファーストパーソン・シューティングゲームの「DOOM」を使った強化学習プロジェクト「ViZDoom」のトレーニングデータから、GameGANでDOOMを生成する試みも行っています。


研究チームは今回の研究に「自律型機械がシミュレーションを行うための環境をAIが生成する」という目的を定めており、「物体の把握と移動方法を学習する倉庫ロボットや、食べ物や薬品を運ぶために歩道をナビゲートしなければならない配送ロボットなど、自律型機械を開発する上で必要なシミュレーションの作成がニューラルネットワークへの学習に置き換えられるかもしれません」と述べました。

なお、NVIDIAはGameGANが実際に生成したパックマンのデモを、2020年夏以降に公開するとしています。

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in ソフトウェア,   動画,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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