飽和脂肪酸の多い食事が集中力や注意力を減少させるとの研究結果
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で外出して遊ぶことができないため、せめて家の中でおいしい料理を食べてストレスを発散しようとする人も多いはず。脂肪分たっぷりの料理についつい手が伸びてしまう人もいるかもしれませんが、オハイオ州立大学の研究チームは、「飽和脂肪酸の多い食事を摂ると集中力や注意力が低下する」との研究結果を発表しました。
Afternoon distraction: a high-saturated-fat meal and endotoxemia impact postmeal attention in a randomized crossover trial
https://academic.oup.com/ajcn/advance-article-abstract/doi/10.1093/ajcn/nqaa085/5835679
Our ability to focus may falter after eating one meal high in saturated fat: Study also looks at effect of leaky gut on concentration -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/05/200512134433.htm
今回の論文の筆頭著者であり、オハイオ州立大学で臨床心理学を研究するAnnelise Madison氏は、40代~60代の51人の女性を対象にした実験を行いました。被験者は実験当日の朝に研究室を訪れ、10分間にわたってコンピューターを使った注意力・集中力・反応をチェックするテストを完了し、研究チームが用意した食事を摂ったとのこと。
研究チームが提供した食事は2種類あり、いずれも卵、ビスケット、七面鳥のソーセージ、60gの脂肪を含むグレイビーソースなどが含まれていましたが、一方のメニューには飽和脂肪酸の一種であるパルミチン酸が豊富な油が、もう一方のメニューには不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸を豊富に含んだひまわり油が使用されました。いずれの食事も全体のエネルギーは930kcalであり、含まれる食品や栄養素はファストフード店の食事内容を模倣するものだったそうです。
食事を摂ってから5時間後、被験者らは再び注意力・集中力・反応をチェックするテストを受けました。また、一連の実験を行ってから1~4週間後にも被験者らは再び研究室を訪れました。2回目の訪問では、被験者は最初に実験を行った時とは逆のタイプの食事を摂り、食事を挟んで初回と同様にテストを受けました。
また、研究チームは被験者らが空腹の時に血液を採取し、血中にエンドトキシン(内毒素)が侵入したことによる炎症のバイオマーカーについてもチェックしました。エンドトキシンは腸の粘膜に穴が空き、菌やウイルス、タンパク質が血管内に漏れ出すリーキーガットという状態になると、腸から血液に侵入しやすいそうです。
実験の結果、飽和脂肪酸を豊富に含んだ食事を食べた後の被験者らは、平均して11%もテストのスコアが下がりました。また、リーキーガットの兆候がある女性では、食べた食事の種類にかかわらずテストのスコアが極めて低くなったと研究チームは指摘しています。「血中に高レベルのエンドトキシンがある女性では、食事内容の違いが一掃されました。被験者らがどのような脂肪を食べても、パフォーマンスは低くなりました」と、Madison氏は述べています。
研究チームは被験者らが実験の前日に食べる食事内容を標準化しており、実験前の12時間は絶食させていたことから、事前に食べた食事がテストの結果に影響を与えることはありませんでした。
今回の研究では、飽和脂肪酸やリーキーガットが脳に与える影響については突き止めていませんが、過去の研究では飽和脂肪酸の豊富な食事が全身の炎症を促進させることがわかっていると指摘。脂肪酸は血液脳関門を通過することができるため、飽和脂肪酸が脳に影響を与えている可能性があるとのこと。Madison氏は、「脂肪酸と脳が直接相互作用しているかもしれません。研究は腸に関連した調節不全の威力を示しています」とコメントしました。
Madison氏は、「食事による影響を検討する以前の研究は、ほとんどが一定の期間にわたって調査されてきました。今回の研究のように、ほんの1回の食事で違いが見られたことは驚きです」とコメント。今回の研究では飽和脂肪酸が豊富な食事と不飽和脂肪酸を含んだ食事での比較が行われたことから、飽和脂肪酸を多く含んだ食事と低脂肪な食事を比較した場合、より大きな影響が見られる可能性があるとのこと。
研究に携わったオハイオ州立大学の臨床健康心理学者であるJanice Kiecolt-Glaser教授は、「私たちは人々が不安を感じている時、飽和脂肪酸の多い食事が魅力的に見えることを知っています」と述べ、COVID-19のパンデミックでストレスを感じている人が飽和脂肪酸の多い食品を好むことで、集中力や注意力が低下する可能性を今回の研究が示唆していると指摘。うつ病や強い不安も集中力や注意力を低下させる要因となることから、実際の影響はさらに大きなものになるかもしれないとKiecolt-Glaser教授は述べました。
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