Appleが政府の「iPhoneのロック解除要請」を拒否したテロ事件で「FBIがAppleの協力なしでロック解除した」と当局が発表
2019年12月にアメリカの海軍航空基地で発生したテロ事件の捜査で、AppleはiPhoneのロック解除の要請を当局から受けていましたが、これを拒否し続けていました。この件に関して、2020年5月18日付でWilliam P. Barr司法長官が「Appleではなく、FBIの素晴らしい仕事のおかげで、ロック解除ができたこと」「容疑者はアルカイダと密接に関係していたこと」を発表しました。Appleは当局の発表に対し「私たちは24時間体制でFBIを支援してきた」と反論しています。
Attorney General William P. Barr and FBI Director Christopher Wray Announce Significant Developments in the Investigation of the Naval Air Station Pensacola Shooting | OPA | Department of Justice
https://www.justice.gov/opa/pr/attorney-general-william-p-barr-and-fbi-director-christopher-wray-announce-significant
[Update: Apple responds] FBI links Pensacola shooter to Al-Qaeda with cracked iPhones with ‘no thanks to Apple’ - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2020/05/18/fbi-links-pensacola-shooter-to-al-qaeda-with-cracked-iphones-with-no-thanks-to-apple/
2019年12月、アメリカのペンサコーラ海軍航空基地で訓練中のサウジアラビア軍の少尉が銃を発砲し、3人が死亡、8人が重傷を負う事件が発生しました。2020年1月13日にWilliam P. Barr司法長官は事件がテロであると発表し、現場で射殺されたMohammed Saeed Alshamrani容疑者のロックされたiPhoneへのアクセスを可能にするよう、Appleに要請しました。しかし、Appleはこの要請を断りました。
事件の捜査に際し、iPhoneのロックを解除するよう当局がAppleに求めたことは、今回が初めてではありません。Appleは捜査令状がある場合、iCloudのデータへのアクセスについては認めていますが、一方で端末へのアクセスは拒絶しています。このため当局はAppleに頼らない形で端末ロックを解除する方法を模索しており、世界最高レベルのスマホ・クラック集団「Cellebrite」に依頼するほか、専門の研究所も創設しています。
犯罪捜査で「iPhoneのロック解除」は行われるべきなのか? - GIGAZINE
ペンサコーラ海軍航空基地の一件についても、2020年5月18日付でBarr司法長官はAlshamrani容疑者のiPhoneのロック解除ができたことを発表しました。iPhoneの情報にアクセスできるようになった結果、Alshamrani容疑者がテロの準備を何年も前から行い、特別な作戦を実施するためにサウジアラビア空軍に加わったことや、攻撃直前までアルカイダと連絡を取っていたことが判明したとのこと。
発表の中でBarr司法長官は「Appleではなく、FBIの素晴らしい仕事のおかげで、私たちはAlshamrani容疑者のiPhoneをロック解除できました。電話の中から発見された情報の山は、現在行われている調査にとって貴重なものであり、アメリカ国民の安全のために重要です。この情報はFBIの独創性と幸運、そして多くの時間的リソースがなければ見つかりませんでした。要するに、われわれアメリカ国家安全保障局は、法的なアクセスと公共の安全にお金をかける大企業の手中にとどまることはできません。立法的解決を行うべき時が来たのです」と述べました。
当局は長年、「iPhoneの暗号を回避できるバックドアを作るように」とAppleに要請してきていますが、Appleは一貫してこれを拒絶しています。今回のBarr司法長官の発表を受けて、テクノロジー系ニュースサイトの9to5MacがAppleにコメントを求めたところ、Appleから以下の回答が返ってきたとのこと。
「Appleは、2019年12月6日の攻撃から数時間後に送られてきたFBIの最初の情報要求に対応し、捜査中も法執行機関をサポートし続けました。iCloudのバックアップ、アカウント情報、複数のアカウントのトランザクションデータなど、利用可能なすべての情報を提供し、その後数か月にわたって、ジャクソンビル、ペンサコーラ、ニューヨークのFBIオフィスに継続的な技術的および調査的サポートを提供しました。
この事件や他の何千もの事件について、私たちは24時間体制でFBIや、その他アメリカを安全に保ち、犯罪者を裁判にかける調査官たちと協力し続けています。誇り高きアメリカ企業として、私たちは法執行機関の重要な仕事を支援することを私たちの責任と考えています。弊社に関する虚偽の申し立ては、数百万のユーザーと私たちの国家安全を保護する暗号化やその他のセキュリティ対策を弱める言い訳です。
私たちは国家の安全に対する責任を深刻に受け止めているからこそ、バックドアを作るという考えを信じていないのです。バックドアは、全てのデバイスを脆弱(ぜいじゃく)にし、国家の安全や、私たちカスタマーのデータセキュリティを脅かしかねません。『正義のためだけのバックドア』は存在しません。そして、アメリカ国民は『暗号化を弱めること』と『効果的な捜査を行うこと』のいずれかを選ぶ必要などないと私たちは考えています。
私たちのカスタマーは『情報が安全に守られている』という点でAppleを信頼しています。そして安全に保つための方法の1つが強力な暗号化を端末とサーバーに施すことです。私たちは同じiPhoneを世界中で販売しています。私たちはカスタマーのパスコードを保存しておらず、パスコードで守られたデバイスをアンロックする能力を持っていません。データセンターでは情報を安全に保つため強力なハードウェアとソフトウェアを配備し、システムにバックドアがないことを保証しています。すべての慣例は世界各国で等しく適用されます」
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