創造性や集中力は「退屈」によって生まれる、「子どもを常に楽しませなくてもよい」と研究者が主張
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて学校が休校、自宅による自粛で外出もままならず、退屈している人や子どもも多いはず。「人は外部からの刺激がまったくない部屋に15分閉じ込められるより、電気ショックを与えられる方を選ぶ」という研究結果があるほど人は退屈を嫌う生き物ですが、実際には「退屈」は必ずしも悪いことではなく、むしろ創造性や集中力の源になるとして、「退屈している子どもを楽しませる必要はない」とエディスコーワン大学教育学部のマンディ・シェーン氏が論じています。
Parents, you don't always need to entertain your kids – boredom is good for them
https://theconversation.com/parents-you-dont-always-need-to-entertain-your-kids-boredom-is-good-for-them-136383
◆なぜ人は退屈するのか?
退屈は一時的な感情の状態であり、退屈している人は「不快な感情を持つ」「タスクに興味を失う」「物事に注意を払えない」といった問題を呈します。このため、退屈している人はやることがあっても、その行動に熱中できません。
退屈の原因はさまざまで、栄養不足・精神的刺激の欠如・反復のしすぎなども要因となります。また報酬に対して敏感な人は絶え間なく「感情的に満足していること」が必要になるため、特に退屈しやすいと考えられています。
加えて、2006年の研究では、大人が子どもの「遊びの内容」を選んだとき、子どもは自分自身で遊びの内容を選んだときよりも退屈しやすいことが示されました。このことから、「コントロールの欠如」も退屈に関係しているとみられています。
◆退屈は悪いことなのか?
しかし、退屈は必ずしも悪いことではありません。ある研究では退屈なタスクを行った後の方が、人は「アイテムの多様な使い方を発見する」「一見関係なさそうなアイデアを結びつける」「クリエイティブなアイデアを生み出す」といった発散的な考え方をすることが示されています。また「豆を色分けする」といった退屈な作業を行った人の方が、「楽しい紙細工」を行った人よりも、その後に量的・質的に優れたアイデアを出すことも示されています。「創造性は、退屈をした人が刺激を探す時に生み出される」と言い換えることも可能です。
一方、退屈を紛らわそうとスマートフォンなどを触る人もいるはずですが、これは逆効果であるといわれています。何かに熱中するのではなく、浅く取り組むことは、人が集中し、タスクに取り組み、フロー状態になる能力を下げるとのこと。
スマホで退屈をまぎらわせることが退屈を増大させている - GIGAZINE
退屈な時に座って「退屈をなくす方法」を考えることは、困難あるいは単調な作業を通して集中力を高める訓練になります。外部刺激がない時は、心の中から刺激を見つける必要があります。つまり、退屈は心の運動ともいえるわけです。
◆退屈を解決する方法
上記のことからわかるように、退屈は人にとって必要なものです。このため、たとえ子どもが退屈しているように見えても、親は「子どもを楽しませていない」と罪悪感を感じる必要はないとのこと。
シェーン氏は「子どもが退屈している時に確認すべきこと」として以下の6点を挙げています。
1:子どもが空腹だったり、疲れていないか確認すること。これら要因は子どもを退屈しているように見せますが、実際にはただ活動するだけのエネルギーがない状態です。
2:COVID-19による隔離が続いている状態は、人々がコントロール感を失っている「異常な状態」です。このため、子どもがコントロール感覚を取り戻すよう「選択肢」を提示するという方法があります。選択肢は「どこで夕食を食べるか」「食事のメニュー」「やることの順序」といった内容でOK。
3:親は「子どもにひどい経験をさせている」という責任を感じないようにすること。「退屈」という問題を自分自身で解決することで、子どもは注意力・自己統制・クリエイティビティといった内的な力を発達させることが可能です。
4:「退屈とともにやってくる感情を恐れないように」と子どもに伝えることも大切。退屈は「変化が必要だ」というサインです。子どもたちにアイデアを出させ、そのうち1つに熱中させて、かつ選択肢に責任を持たせること。
5:子どもが退屈している時、始めたばかりの事で困難にぶつかっているだけのことがあります。これは実際には退屈と異なるので、子どもに「始め方」を教えることが重要になります。
6:モバイルデバイスは「簡単に気を紛らす方法」を提供するため、私たちの集中力は容易に奪われてしまいます。家族内で時間を決めてモバイルデバイスの電源を消し、その間、何か意味のあることに熱中するという方法もあります。創造性は突然現れます。モバイルデバイスによって気を紛らわされ続けていては、達成できることも達成できません。
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