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世界的に有名な学術誌「Nature」出版社が論文のオープンアクセスプロジェクト「プランS」への参加を表明


学術誌「Nature」を発行する出版社のSpringer Natureが、論文の出版と同時にオンラインでのオープンアクセスを可能にするプロジェクト「プランS」に参加することを2020年4月8日に発表しました。研究者は2021年1月以降、Springer Natureが発行する学術誌に掲載される論文へのオープンアクセスが段階的に可能になるとのことです。

Nature to join open-access Plan S, publisher says
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01066-5


科学研究にとって、最新の学術論文にアクセスすることは非常に重要です。しかし、「論文を掲載する学術誌の購読料が非常に高いために新しい学術論文へのアクセシビリティが損なわれている」として、だれでも論文にアクセスできる「オープンアクセス」を求める動きが欧米を中心に高まっています。

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2018年、欧州委員会(EC)とヨーロッパの複数の研究助成機関は、研究論文を出版日に無料で読めるようにする協定「cOAlition S」を発表し、2020年以降に発表される論文をオープンアクセスジャーナルやオープンアクセスプラットフォームで公開するというプロジェクト「プランS」を発表しました。このプランSは研究助成機関だけではなく、ビル&メリンダ・ゲイツ財団ウェルカム・トラストといった公益団体にも支援されています。

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しかし、Nature誌編集部は2019年2月26日に発表した「High-profile subscription journals critique Plan S(高く評価される定期購読誌がプランSを批判)」という記事の中で、「編集者が論文のチェックだけではなく、科学関連のニュース記事や意見記事を作成することで、学術誌の品質を高く保っているため、そのコストを論文掲載料だけで賄うことは不可能」「プランSのスケジュールが急過ぎて対応できない」といった理由で、学術誌出版社がプランSに対応するメリットがないと批判しました。

その後、cOAlition Sの支援団体は出版社との交渉を進めてきたとのこと。また、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で論文へのオープンアクセスの必要性が高まっていることから、支援団体はcOAlition Sの改定を2020年4月8日に発表し、学術出版社のオープンアクセスへの移行がより緩やかにするとしました。

この改訂では「出版社は2024年12月までにオープンアクセスへ完全移行する」という規約がcOAlition Sから削除され、「学術誌出版社がオープンアクセスに完全対応するまでの時間的猶予」が大きくなりました。さらに学術出版社に課される業績評価やオープンアクセスコンテンツの年次増加量の制限が緩和されています。


これを受けて、Springer Natureは「cOAlition Sへの準拠が可能になった」として、大手学術誌出版社として初めてプランSへの参加を表明。ただし、Springer Natureは「オープンアクセスを行う上での経営面の透明性についての説明がまだ必要」としており、実際にオープンアクセスがどのような形で可能になるのかについての詳細は決まっていないとしており、2020年後半には具体的な内容が発表できると述べています。

Springer Natureの出版・ソリューション担当チーフオフィサーを務めるSteven Inchcoombe氏は「改訂された目標は非常に困難なものですが、達成するためにできる限りのことをしていきます」と述べており、今後も交渉を続けていくことを明らかにしました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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