「ファイナルファンタジーVIIリメイク」はオリジナル版からどう変化したのか?共同ディレクター浜口直樹氏・シナリオライター野島一成氏らへのインタビュー
2020年4月10日(金)にPlayStation 4向けにリリースされる「ファイナルファンタジーVIIリメイク」は、1997年1月31日にPlayStation向けに発売された人気RPG「ファイナルファンタジーVII」のリメイク作品です。ビジュアルはもちろんのこと、ゲームシステムやデザインなど多くの部分を1から作り替えたファイナルファンタジーVIIリメイクで共同ディレクターを務める浜口直樹氏をはじめとするスタッフに、海外ニュースサイトのInverseがインタビューを行っています。
'Final Fantasy 7 Remake' team reveals why Cloud is "still mentally a young boy"
https://www.inverse.com/gaming/ff7-remake-interview-story-changes-cloud-jessie-wall-market
Q:
新規に起こされたミッドガルのデザインについて教えてください。ファイナルファンタジーVIIリメイクのミッドガルは本当に人がずっと住んでいて、都市として生きているように感じます。
共同ディレクター 浜口直樹氏(以下、浜口):
ミッドガルというとスチームパンク風の巨大要塞をイメージする人が多いと思いますが、よく見ると上層の街と下層のスラム街で貧富の格差があり、さらに街の中でも貧富の格差が存在していることに気づくと思います。ミッドガルは急速に発展した街と設定されているため、街の中に多くの矛盾を抱えています。
ミッドガルのデザインを見直す際に意識したポイントは大きく分けて2つあります。1つはデザインのスケール感を忠実に再現することでした。オリジナル版では俯瞰(ふかん)図をつかってミッドガルの各エリアを描写していたため、プレイヤーはミッドガルの全体像を把握することができませんでした。しかし、現実のスケールでスラム街をつなぐ街並を作るとなるど、長く広い街並が必要になります。かといって、ただ歩くだけの道を作っても実際のスケールに忠実なだけで、プレイヤーが満足できるゲーム性は生まれません。そこで、リメイク版では実物大の都市の描写に合わせたデザインを考えることにしました。
2つ目のポイントは、ミッドガルのさまざまな場所に特定の機能を割り当てることでした。例えば七番街を見ても、ティファやバレットたちが経営する酒場の7th Heavenは住民にとって憩いの場であり、その周辺には賑やかな商店街があるでしょう。初心者の館の周辺には警備施設が建ち並んでいます。街がどのように発展するのかを見極めることで、それぞれのエリアで独自の表現をすることができ、建物の種類やNPCの配置、ポスターまでリアルに描写することができるようになったと思います。
Q:
ファイナルファンタジーXVやキングダムハーツIIIの戦闘システムから改善したポイントはありますか?また、Unreal Engineでの戦闘システムの開発はどうでしたか?
浜口:
ファイナルファンタジーXIIやファイナルファンタジーXIII、ファイナルファンタジーXVやキングダムハーツIIIなど、私が携わったタイトルからどんなインスピレーションを得たのかとよく聞かれますが、今回の戦闘システムを開発するにあたっては、過去の「ファイナルファンタジー」シリーズの戦闘システムを参考にしたことはありませんでした。
リメイク版の戦闘システムのコンセプトは明確で、オリジナル版にあったアクティブタイムバトル(ATB)を現代風にアップグレードしたものです。グラフィックが向上したことで、ゲームに没頭できるような「リアルタイムのゲーム操作」の必要性を感じたため、ATBシステムをよりアクション性の高いものに進化させることにしました。
なお、PlayStation版のファイナルファンタジーVIIの戦闘は以下のムービーで見ることができます。
ファイナルファンタジーVII インターナショナル「ガードスコーピオン」 - YouTube
そして、ファイナルファンタジーVIIリメイクの戦闘が以下。
「ファイナルファンタジーVII リメイク」体験版で遊べる戦闘シーンはこんな感じ - YouTube
浜口:
試行錯誤の末、ATBによる戦闘とアクションによる戦闘を単純に組み合わせるのではなく、それぞれの持ち味を最大限に発揮させるために役割分担を決めました。リメイク版の戦闘システムの基本になっているATB部分は、オリジナル版と同じくATBゲージを消費して特定の能力を発動させるというシンプルなシステムになっています。そして、アクション部分は、ATBゲージを効率よくためられるようにしたり、戦闘中のチャンスを演出したり、プレイヤーのテクニックがATBをどのように活用できるかをアピールする役割を果たしています。イメージとしては「アクションによる戦闘がアシストし、ATBによる戦闘がゴールを決める」という感じです。
従来の戦闘が楽しめるクラシックモードではATBとアクションの2つが見事に共存しています。アクションバトルの部分はAIが自動的に処理してくれるため、プレイヤーはオリジナル版と同様にATBバトルの部分で能力の発動タイミングを見極めることに集中してプレイすることができます。ATBとアクションで役割分担したからこそ、このクラシックモードを実現できたといっても過言ではありません。
Q:
オリジナル版のファイナルファンタジーVIIは「英語版へのローカライズがわかりにくい」といわれています。リメイク版のローカライズではどのような工夫がされているのでしょうか?
ローカライズ担当 ベン・サビン氏:
オリジナル版の頃とは、ローカライズのあり方が大きく変わりました。かつてはリソースへのアクセスが限られていたため、ローカライズ担当が開発者とお互いに連絡を取ることはほとんどありませんでした。しかし、今では多くの翻訳者が開発者と同じビルで仕事しており、場合によっては日本人のライターと一緒に仕事をすることもあります。また、開発サイクルの中で他人と同じビルドにアクセスすることができ、ローカライズ担当チームはさまざまな段階で頻繁に相談することができます。このおかげで、たくさんの人がローカライズに関わっていても、より一貫性のある翻訳が行われています。
特にリメイク版ではゲーム内のカットシーンを参照することで、キャラクターのセリフの意図をより効果的に把握することができました。また、できるだけお互いの作業をチェックするようにしたことで、解釈を統一したりシナリオチームへの質問回数を減らしたりすることができ、非常に助かりました。加えて、編集者と映像を共有することで、セリフの文脈を把握しやすくなり、より一貫したローカライズが可能になりました。カットシーンは比較的短く、ハイテンポなものが多いため、英訳でも簡潔かつスピーディーな表現を心がけており、よりわかりやすいものになっていると思います。
リメイク版はオリジナル版をそのままアップデートしたものではなく、ゲームのビジュアルがよりリアルになっているので、バレットの暴言が記号で表示されなくなっていますし、キャラクターが常に完璧なボキャブラリーを持っているわけではなく、新しいファイナルファンタジーVIIの世界に溶け込むように工夫されていますが、同時にオリジナル版にあった雰囲気も尊重しています。例えば、クラウドの有名なセリフの1つである「Not Interested(興味ないね)」はそのまま収録されていますが、エアリスは「This guy are sick.」とは言いません。
なお、「This guy are sick.」は、日本語版では「ここの人、病気みたいなの」というエアリスのセリフの英訳。This guyは単数形であることから文法としては「This guy is sick」が正しく、ファイナルファンタジーVIIの英語版を代表する誤訳として知られています。
Q:
歓楽街であるウォールマーケットもリメイク版に登場しますが、どんなものになっていますか?オリジナル版のゴールドソーサーに少し似ているようにも思います。
浜口:
ゴールドソーサーもウォールマーケットも、大人の娯楽街とカテゴライズすると、雰囲気が似ていると思って間違いありません。リメイク版でウォールマーケットを描く時に特に意識したことは、「倫理的な視点をもって街をどう描くか」ということです。
オリジナル版が発売された20年以上前は、ゲームを倫理的な観点から審査する機関が現代ほど機能していませんでした。しかし、現代は価値観が多様化しているので、国や文化によってはオリジナル版を忠実に再現しても、エンターテイメントとしてウォールマーケットを受け入れてくれない人も多いと思います。それを踏まえて、会員制風俗店である蜜蜂の館を、今までとは異なる新しいエンターテイメントの視点で再現しました。その甲斐あって、すべてのプレイヤーが楽しめるものにリメイクできたと思います。
当たり前だけど、蜜蜂の館はかなりリニューアルされた模様。これは無理ですわ。 pic.twitter.com/yDRPuiCjBr
— うにょ (@Unyooo000) January 31, 2020
ウォールマーケットといえば、「蜜蜂の館」以外に「女装したクラウド」「コルネオ」「スクワット」「レストラン」などがありますが、それらを大幅に拡張し、あらゆる文化的背景を持つ人たちに受け入れられるような、大人のための娯楽都市として再構築しました。また、地下都市感を演出するために、地下闘技場なども新しく作りましたので、ぜひチェックしてみてください。
Q:ジェシーの性格はオリジナル版よりも、より陽気で外向的です。彼女のキャラクターや、アバランチの他のメンバーにはどのような工夫がされているのでしょうか?
シナリオライター 野島一成氏:
オリジナル版では、ジェシーやウェッジ、ビッグスは物語の中で「役割を果たしているだけのキャラクター」だったので、リメイク版では彼らに命を吹き込むことが私たちの責任だと感じました。そのため、アバランチに参加する前の彼らの人生の物語を深く掘り下げ、それぞれの個人的な背景を与えました。描写の仕方に違いはありますが、アバランチのメンバーがおしゃべりなのは、彼らが心の奥底に隠している強い恐怖感や罪悪感、葛藤の反発です。登場人物たちが実はそんなに強くないということを描きたかったんです。
ジェシーが本気なのか遊びでやっているのかわからないクラウドにちょっかいを出しているのは、死を連想させる暴力の世界に身を投じながらも、何か温かいものを感じたかった、あるいは何かの拍子に楽しめる瞬間があったらいいなと思っているからだと思います。
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