取材

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の秘密に迫る「FAN GATHERING『閃光のハサウェイ』Heirs to GUNDAM」レポート


機動戦士ガンダム40周年記念であり、宇宙世紀の新たな100年を紡ぐ「UC NexT 0100」プロジェクトの第2弾作品『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の秘密に迫るイベント「FAN GATHERING『閃光のハサウェイ』Heirs to GUNDAM」が3月24日(火)、Zepp Diver Cityで開催されました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止、および観客の安全確保の観点から、無観客での実施でしたが、インターネット配信が行われました。

【情報解禁】ファンイベント-『閃光のハサウェイ』Heirs to GUNDAM- - YouTube



会場となったZepp Diver City。そばにユニコーンガンダム立像があります。


イベントは、MCの綾見有紀さんから無観客での実施となったことについておわびがあったのち、『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダムZZ』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダムNT』と、宇宙世紀のガンダムシリーズのダイジェストVTR上映からスタート。

映像ののち、アムロ・レイ役の古谷徹さん、シャア・アズナブル役の池田秀一さん、アニメ評論家・藤津亮太さん、サンライズ・小形尚弘プロデューサーが登場し、「逆シャア深掘りトーク」が行われました。

以下、内容は抄録です。内容のおおよその区切りごとに見出しを付け、見出しから配信映像の当該時間へ飛べるようにリンクしているので、詳しくは配信映像を確認してください。

逆シャア深掘りトーク
綾見有紀さん(以下、綾見):
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は1988年公開。ガンダムシリーズ初となる完全新作の劇場用オリジナル作品として、アムロとシャアに焦点を当て、一連のストーリーの完結を描いています。古谷さんと池田さんは当時を振り返って、いかがでしょうか?

古谷徹さん(以下、古谷):
ファーストガンダム、『Zガンダム』のあと、アムロとシャアが登場するのがこの『逆襲のシャア』となったわけですが、ゼータからは僕らがメインではなくなっていて、10年近く経ってから、2人が完全メインでがっぷり四つで組んで戦うというのは、うれしかったですね。

綾見:
池田さんはいかがですか?

池田秀一さん(以下、池田):
タイトルが『逆襲のシャア』ですから、「やっと、我が世の春が来たか」と(笑)

古谷:
そのあと『逆襲のアムロ』があるんじゃないかと期待したんですが、まだないですねえ(笑)

綾見:
今のところはまだですね(笑)。公開当時、小形さんは?

小形尚弘プロデューサー(以下、小形):
僕はちょうど14歳で、友人と一緒に、アムロとシャアの決着がつくということで、今は場所が変わりましたが相鉄ムービルという映画館で見ました。見たけれど、中学2年生の僕にはよくわからなくて(笑)、帰り道で友達と「シャアは、『ララァがお母さん』なんて言ったけれど、何を言ってたんだ?」と言いつつ帰った覚えがあります。

綾見:
私も内容がわかるまでに3回は見直しました。今回、アニメ評論家の藤津さんはお話うかがいたいことがたくさんあるとおっしゃっていたので、ぜひよろしくお願いします。

藤津亮太さん(以下、藤津):
『Zガンダム』の時、富野監督が「この作品のサブアタックタイトルは逆襲のシャアです」と言っていたけれど、実際にはどっちかといえばカミーユの話だったんですね。次の『ZZ』をはさんで、映画をやるというときタイトルが『逆襲のシャア』だったので、「来るものが来た」とファンの期待は高まりました。当時、テレビの特番で、富田靖子さんが「シャアが好きです」という話をしたり、シャアの総統コスチュームが贈られたりして、実際、興収15億円以上のヒットになりました。富野監督は「大人の男に見て欲しい」、大人の男の悲しさやかわいさがある作品だと新聞のインタビューで答えていました。大人になってから見た方が、アムロやシャアの感情が分かるタイトルじゃないかと思います。

綾見:
大人の男性からの反響は届いていましたか?

古谷:
『逆襲のシャア』に至るまでは、アムロは少年だったし、見た目もシャアの方がどう見てもかっこいいわけです。アニメ雑誌の人気投票でも、シャアがだいたい1位で、アムロは2位や3位に甘んじていました。『逆襲のシャア』で、ようやくアムロが大人になって、部下もできる存在になって、29歳になっているから、ようやくかっこいいアムロが演じられたなと。人気でもシャアを超えたかなと、僕は思っていました。ファンの方も「『逆シャア』のアムロが一番好きだ」という方が結構多いですね。

綾見:
私は女性の立場から見て、ファーストのころはシャアが大人、アムロが子どもというイメージだったんですが、『逆シャア』を見て、実は心は逆だったのではないかなと……

古谷:
その通りなんです!

綾見:
見方が改めて変わった作品でした。池田さんはその点、不満があったりはしませんでしたか?

池田:
いえ、何の不満もありません。『逆シャア』では、ちょっとマザコンっぽいところも出てきて、アムロも立派になって、やりがいがあってよかったですよ。まさか、あんなにやられるとは思いませんでしたけれど。

(一同笑)

綾見:
男性の立場から見て、藤津さん、小形さんはどうでしたか?

藤津:
今お話が出たとおり、『逆襲のシャア』で、はじめてアムロがプロフェッショナルとしてνガンダムを扱う。その強さが、演出で丁寧に描かれています。一方でシャアは、男の哀愁というか、一人で「道化だよ」といいつつ国を背負っている。それぞれキャラクターが立体的になっていて、新しい状況や感情もあり、演じるのも難しくなったのではないかと感じました。

古谷:
僕はすんなり入れました。チェーン・アギという恋人がいますが、彼女は僕のどストライクのタイプでしたから。ベルトーチカは苦手だったので(笑)、その反動もあって気持ちよくやれました。

池田:
スタジオでも楽しげにしていましたよ(笑)

藤津:
シャアのほうは、ナナイとクェスの2人の間で。

池田:
本当、困ったものですよね。男冥利に尽きると言えばその通りですが……大変だったと思いますよ。ナナイがグラスを投げるシーン、シャアはこっそり見てたんじゃないかなぁ。

綾見:
今回、後ろに当時のポスターが並んでいます。

小形:
右端は生賴範義さんのものですね。ぼくも当時、最終対決を期待して見に行って、わからなかったけれど、アムロがかっこいいなと思いました。NHKの全ガンダム大投票で1位になったように、νガンダムがかっこよくて、「自分が乗るならνガンダムがいいな」なんて思いました。それから32年経つと、シャアの気持ちがすごくわかるようになって。「ナナイみたいな女性がいたらいいな」と思うところが、ガンダムって面白いなと思います。富野さんが『逆シャア』を書かれたのって、40代ですよね。

藤津:
40代後半ぐらいですね

小形:
僕がはじめて富野さんにお会いしたのは60代になってからですが、当時はまだ若々しかったのではないかと思います。スタジオではどうでしたか?

池田:
お元気でしたよ。

(一同笑)

古谷:
作品にかなり入れ込んでいたという印象はあります。

藤津:
『逆シャア』は脚本も富野監督がやられていて、とくに「富野濃度」が高いという印象があります。お二人は、印象的なシーンやセリフはありますか?

古谷:
やっぱりクライマックス、アクシズを止めるところじゃないですか。シャアはめり込んでいて、アムロが勝っていますから。

池田:
富野さんのセリフって「日本語として正しいの?」というときもありますよね。

藤津:
ちょっと、飛んでいるところがありますよね。

池田:
でも、しゃべってみるといいんですよ。不思議ですよね。僕のセリフじゃないけれど、ブライトの「なにやってんの!」って、急に艦長が近所のおじさんみたいに(笑)。唐突だけれど、流れで見ると生きてくる。「ミスプリじゃないか?」と勝手に直すと怒られますから(笑)

藤津:
けっこう、語尾とかに特徴がありますよね。

小形:
コクピット同士の会話のとき、かみ合っているようでかみ合っていないのが富野さんの必殺技というか。

池田:
アムロの「行きまーす」だって。「勝手に行けば……」って。

(一同笑)

古谷:
あれは、戦場が怖いからですよ。夜道で怖いから声を出したり、歌ったりするのと同じで。

池田:
その発想がすごいなと。今は当たり前だけれど、第2話ぐらいかな、最初に聞いたときは「えっ?」て思いました。

綾見:
今や名台詞として誰もが言いたくなるようなセリフになりましたね。

池田:
あのセリフは歴代、出てきますがみなさん大変みたいですよ。アムロがやったものだから、アムロのまねはしたくないけれど、と。

古谷:
それぞれのキャラクターを生かしたくて、同じセリフだけれど違うニュアンスで言いたいとかね。

藤津:
アムロの強さという点では、時代劇研究家の春日太一さんが「『逆シャア』の殺陣がすばらしい」と。νガンダムが下がってサザビーと斬り合うという、ロボットアニメなのに時代劇で培われた殺陣の考え方みたいなものが生きていると書かれていて、「アムロが強くていい」というのは、見る人が見るとわかる形になっているのが魅力だなと思います。

綾見:
殺陣から「取っ組み合い」ということで、馬に乗って現れたシャアがアムロと取っ組み合いをするシーン。ハサウェイからすればトラウマになりそうなシーンですが、お二人、演じたときのことは覚えていますか?

古谷:
2人はファーストガンダムでも最後はフェンシングで戦ったりしますから、最後はモビルスーツを介さず肉体で戦うというのが、ロボットアニメの中では斬新で面白いし、印象に残るなと思います。

綾見:
大人の男性がこんなけんかをするって。

小形:
なかなか、酔っ払わないとないですよね。

綾見:
シャアは落ち着いた演じ方が多いと思いますが、池田さんは演じたときはいかがでしたか?

池田:
シャアはだんだんアムロに敵わなくなってきましたから、ニュータイプの素質としては。だから「素手ならなんとかなるかな」みたいな気持ちもあるのかもわからない(笑)。クェスに声をかけて連れて行っちゃうって、うらやましいですね。

古谷:
まぁ、イケメンですもんね。

藤津:
シャアのカリスマ感ですよね。「この人について行ったら、新しい世界を見られるんじゃないか」という。でも、アムロも「お前をやってからそうさせてもらう」ってすぐに銃を取ろうとするプロフェッショナル感があり、2人がダブルでかっこいいシーンでした。ここは当時、稲野義信さんという特にうまい方が原画を担当されたということです。取っ組み合いでぐるぐる回るのを描くのは大変だそうなので、お二人の演技+絵で印象的になっているシーンかなと思います。

小形:
このあと、νガンダムとサザビーの取っ組み合いもありますし、ガンダムって普通の兵器を使った戦いだけではなく、身体的なものの延長線上にあるということで、モビルスーツ戦でも感情がすごく入るのはそういう点ではないかと思います。

綾見:
2019年には全米公開されて、4DX上映もあり、愛される作品であるのが伝わってきました。また、当時から有名なアニメーション監督に評判が良かったということで。

藤津:
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の押井守監督や『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督からもすごいと言われていて、1990年代には同人誌も出ました。それが逆シャアを見直すポイントともなり、いまの人気の一翼を担った感じです。

綾見:
『逆襲のシャア』からおよそ1年後に小説として発表されたのが、小説『閃光のハサウェイ』です。ここで、小説の誕生秘話をよく知る方に藤津さんがインタビューに行ってくださったということなので、映像をご覧下さい。(インタビュー映像 44:23~)

藤津:
『閃光のハサウェイ』が映画になるということで、原作の誕生に関わった井上さんにお話を伺えればと思います。まず、当時どういう立場で小説のスタートに立ち会うことになったんですか?

井上伸一郎さん(以下、井上):
『逆襲のシャア』が1988年春公開なので、「ニュータイプ」は創刊3年目だったと思います。今の人からは信じられないと思いますが、『逆シャア』は「これが最後のガンダムだ」という言われ方をしていました。なぜかというと、アムロとシャアの物語に決着がつく、と。富野さん的にも、テレビシリーズがあり、劇場作品もあり、いよいよ主人公2人が対決して決着がつく。宇宙世紀のストーリーの最後だと宣伝されていましたし、富野さんが一生懸命作る姿も見ていました。一方でSDガンダムが流行した時期でもあり、いろいろな関係者として、宇宙世紀からSDに関心が移っている感じもあって、富野さんとしては「負けてなるものか」とジレンマもあったのではないかと思います。当時、私は編集者として「これが最後のガンダムかもしれない」と思って接していました。ファンだったので「これでもう作られない」というのが寂しかったと同時に、ハサウェイ・ノアという少年のこの後どう生きていくんだろうということにすごく興味がわきました。13歳で、劇場版ではクェス・パラヤという好きな女の子が死んで、チェーン・アギを撃ってしまう。はっきりいってめちゃくちゃです。このあとどうするんだろう、もしも劇場版や新作のTVアニメが作られないなら、せめて小説でハサウェイのその後を読んでみたい、見てみたいなという自分の気持ちがあり、富野監督に「ぜひハサウェイを主人公にした物語を書いてください」とお願いした次第です。

藤津:
どういうリアクションでしたか?

井上:
すごく静かに、怒るでもなし、「そういう注文は来るだろうな」と予想していたように、受け止めてくれました。

藤津:
当時、反響はどうでした?

井上:
ファンの間でも「もうガンダムは見られないかもしれない」という渇望感みたいなものはあったので、「まだ続編がこんな風に、小説とはいえ、出してくれるんだ」と反響はありました。また、当時から「アニメ化して欲しい」という声はありました。30年以上経過して、やっとというか、奇跡のアニメ化ですね。

藤津:
『閃光のハサウェイ』というタイトルは、どなたがつけたものですか?

井上:
これは富野監督です。なかなか「閃光の」という言葉は出てきませんが、もらったとき、すごいタイトルだな、と思いました。

藤津:
小説家としての富野さんの魅力はどういった部分ですか?

井上:
洞察力であり、社会を見通す目。キャラクターを理詰めで考えすぎずに、意外と本能で描いているようで、理詰めにもなっている部分が小説家としての魅力ですね。

藤津:
富野監督の小説を原作として、映像の監督が別というのは珍しいケースですよね。

井上:
実は初めてです。『閃光のハサウェイ』は私もいち観客として早く見たいなと思っています。30年以上前の作品ですが、今でも読んでいただければ、古びていないどころか現実に近い作品になっているなと思いますし、それを村瀬さんがどう監督なさるかも気になっています。いち観客として、完成を楽しみにしております。

小形:
これ、古谷さんは井上さんに『逆襲のアムロ』ってささやいといたら、そうなったんじゃないですか?

古谷:
そうですね(笑)

綾見:
チャンスはあったかもしれませんね。インタビュー内でもありましたが、「『逆シャア』が最後のガンダムかも」というフレーズが印象的ですが、お二人は当時、これがアムロやシャアを演じるのはこれが最後かもと思ったことはありましたか?

古谷:
アクシズを止めるという過酷な環境の中ではさすがに生きていないだろうと思っていたんですが、富野さんに聞いたら「いや、わかりません」とごまかされて(笑)、「え?生きてんのかな?最後に『T』が飛んでいったけど……?」って。まさか、その後の作品があるとは思っていませんでした。

池田:
僕も打ち上げの席だったか、これでアムロとシャアは決着がついたという思いで、監督に「10年ぐらい、ありがとうございました」といったら、古谷さんの話と同じように、ニヤッと監督が笑ったのを覚えています。僕もまだ30代で「大人は大人でいろいろな事情があるんだろう、死んだ人を生かすこともあるだろう」と思って、それ以上は突っ込みませんでしたが(笑)。ガンダムはそれからいろいろな作品が作られたわけですが、『閃光のハサウェイ』という富野監督原作の作品で新時代を迎えるのも因縁深いなと思います。

綾見:
インタビューに行った藤津さんはいかがですか?

藤津:
僕の感覚として「ここで節目」というのはあって、一方で、SDガンダムとか「ガンダムのあり方が変わった」という時期でもあったと思います。10年やって「中高生が熱狂する」ガンダムから、見る人が大人になって、小学生向けの新しいガンダムが作られるという新たなフェイズでした。『閃光のハサウェイ』は宇宙世紀ど真ん中の作品で、春先ぐらいに出て、僕が夏ぐらいに買ったらもう5刷ぐらいで「これはみんな待ち望んでいたんだな」と改めて思いました。

綾見:
小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は累計130万部ということで、数字から見ても期待値はすごかったんだなと感じます。藤津さん、当時の時代背景との関連性もあったんでしょうか。

藤津:
時代の先取りをした感じです。1989年は東西冷戦が終わり、内戦やテロリズムの時代になったと振り返られています。『閃光のハサウェイ』は、いち早く主人公のハサウェイの立ち位置を反連邦組織のリーダーにしました。ロボットアニメをテレビでやるなら、主人公としてはあまり置かないポジションですね。そこに置いて、大きな軍事作戦ではなく、テロや暗殺を主にやり世界を変えようとしている。それが、時代を先取りしたアイデアでしたね。

綾見:
富野監督の先を見通す目には驚かされますね。

藤津:
「地球環境が汚染されていて、人類は宇宙に出なければいけない」というのは『Zガンダム』からもう入っています。それは、今ほど「環境」と言われる前からですから、先見性がありますよね。

綾見:
ここまで『逆襲のシャア』公開当時から『閃光のハサウェイ』までお話を伺ってきましたが、いよいよこれから『閃光のハサウェイ』の新たな特報映像を、この番組だけの特別仕様でご覧いただこうと思います。さらに古谷さん、池田さんに、『逆襲のシャア』の名場面をこの場で再現していただきます。それではどうぞ。

古谷さんと池田さんは、『逆襲のシャア』のラスト部分、落ちるアクシズを巡ってのアムロとシャアのやりとり、さらにアクシズを押し返そうと敵味方なくモビルスーツが集まってくるシーンを生で演じてくれました。(特別映像 56:06~/生セリフ朗読 57:38~)

古谷さんのTwitterでは、写真が公開されています。



「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」特報映像第2弾公開メインキャスト発表
生セリフ朗読のあと、特報映像第2弾が初公開されました。

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」メインキャストの声入りの特報映像第2弾公開 - GIGAZINE


この映像をもって、ハサウェイ・ノア役が小野賢章さん、ギギ・アンダルシア役が上田麗奈さん、ケネス・スレッグ役が諏訪部順一さんであることが発表されました。

左から諏訪部さん、小野さん、上田さん。


綾見:
早速ですが、役が決まった瞬間の感想などを諏訪部さんからおうかがいします。

諏訪部順一さん(以下、諏訪部):
本当に「やったー!!」って、本当に嬉しかったです。正直、狙ってましたんで……こういうことをいうと不遜な感じがして、すみません。とっても出たかったので。実家の親に……いや、ふざけないほうがいいですね。ふざけているわけじゃなくて、もう緊張感がすごくて!先ほどの古谷さんと池田さんの生セリフを袖で見て感動で打ち震えてしまって……いや、本当に嬉しかったです。また宇宙世紀で生きられるかと思うと、感無量でした。

上田麗奈さん(以下、上田):
私もすごく嬉しかった反面、プレッシャーがすごすぎて「逃げたい、ここから逃げたい」という思いがすごかったです。そう思いつつも、今の自分だからできることを一生懸命やっていきたいという思いを強く持ちました。

小野賢章さん(以下、小野):
最初は信じられなかったです。「決まりました」と連絡をいただいたとき、「いや、またまたぁ(笑)」ぐらいに思いました。それがだんだん実感に変わってきて、上田さんと同じく、プレッシャーは感じつつもやるしかないということで、いま一生懸命やっているという感じです。

綾見:
お三方の登場と共に、後ろのモニターにティザービジュアルが登場しています。ハサウェイを中心にシャアとアムロが振り返る構図で、2人の意志をハサウェイが引き継ぐような印象を受けます。宇宙世紀の主人公を演じるにあたって、なにか古谷さんからアドバイスなどありますか?


古谷:
そんな、偉そうなことは言えませんが……小野くんも劇団ひまわり出身なんだって?

小野:
そうです。

古谷:
僕の後輩にあたる。『機動戦士ガンダム』はビッグタイトルで、他のアニメとは一線を画していると思います。40年の歴史がありますし、世界中にファンの方がいる。まず1つ、いいことは「ガンダムの主人公をやると人生が変わる」ということです。『ガンダム00』のとき、宮野くんにも言ったんです。彼も劇団ひまわり出身ですね。彼の人生も大分変わったような気がする。まず、これで食いっぱぐれることはない。

(一同笑)

古谷:
古谷家の家計はここ40年、ガンダムに支えられていますから。それはすごくいいことだと思います。そうするためには、このハサウェイという役を、今はまだプレッシャーがあると思うけれど、自分がニュータイプであると信じて、その感性に任せて思いっきり演じればいいんじゃないかなと思います。小野くんなりのハサウェイをやってください。

小野:
ありがとうございます。

綾見:
池田さんは、シャアの視点からはいかがですか?

池田:
僕(シャア)は振り向いているように見えますが、過去を捨てた男なので、振り向いては……ちょっとは気になっているんですね、閃光のハサウェイという作品を。ガンダムが40年を迎えて、これから先、さらに50年に向けて、新たなガンダムの世界を、みなさん若い人たちが作っていってくれればいいなと思っています。僕も、そこで多少なりとも参加できることがあれば、ハサウェイだけといわず、ガンダムワールドでなにか参加できたらいいなって思っています。

小形:
俳協つながりではどうですか?

池田:
いやあ……立派になって。

諏訪部:
ありがとうございます。恐縮です。

池田:
何本か一緒にやってますもんね。

諏訪部:
はい、『SEED Destiny』とかで。

池田:
ギギさんは、この殺伐とした作品の中で花一輪……がんばってください。「いい女になるのだな」って、別の人へのセリフで余計なお世話で、いい女なので頑張ってください。

上田:
がんばります。

小形:
どうですか、「ララァみ」はありますか?

池田:
ララァはいいですけれど、あの子、死んじゃうから、ね(笑)

小形:
縁起が悪いですね(笑)

池田:
それなりの人生を送っていただければ幸いだなと思っています。

閃光のハサウェイ 深掘りトーク
ここで古谷さん、池田さんがいったん退場して、再び藤津さんが加わり、『閃光のハサウェイ』についての深掘りトークが行われました。

綾見:
小形さんにうかがいます。なぜいま『閃光のハサウェイ』を映像化しようと思ったのでしょうか?

小形:
僕自身、中学生のころに『逆シャア』を見て、アムロとシャアがこのあとどうしたのか気になりました。それでモヤモヤしていたとき、本屋に寄ったら「『閃光のハサウェイ』って出てる。これにその後が書いてあるのかな?」って読んでみたら、全然出てなくて、むしろ逆のショックを受けたという世代なんです。それから、こういう立ち位置で富野さんと仕事をするようになって、改めて小説を読んでみたら、井上さんと藤津さんの話も出てきたように、富野さんは必ず社会情勢は勉強していて、それがいまや預言書のように、現代社会が富野さんの危惧していたところに近づきつつあります。30年前に書かれた小説ですが、今の人に見てもらった人がいいんじゃないかという思いが強く、今回、映像化しようと思いました。あと、富野さんは全作品あわせると800万部ぐらい売れていて、小説家としての富野さんの名声をもっと高めた方がいいんじゃないかというのもあります。

綾見:
すでに告知はされていますが、本作のスタッフのみなさんの紹介をお願いできますでしょうか。

小形:
では、VTRにまとめてありますので、どうぞ。(スタッフ紹介 1:14:01~)

藤津:
僕から小形さんに質問です。先ほど井上さんの話にも出てきましたが、富野さんの原作を他の方が監督するのは初です。なぜ村瀬修功監督を選んだのですか?

小形:
僕も富野監督原作を他の方が映像にするのは初ということは、井上さんのインタビューではじめて気付きました。確かにその通りですね。『逆シャア』公開当時にもしそのまま映像化していたら、僕はまだ中学生でしたが、もしスタッフィングするなら富野さんに入ってもらいたいし、その流れだと、音楽は三枝成彰さんだったり、作画は北爪宏幸さんだったりしただろうと思います。ただ、それから30年経過しているということで、今回、この『ハサウェイ』を映像化するには、今まで『ハサウェイ』が好きだった人たちにももちろん喜んでもらえるものにするんですが、これから、作ったものを20年、30年と愛してもらわなければいけないので、次の世代も見られるようなフィルムにしなければいけないと思いました。富野さん自身、いまは新しいものを作りたいという気持ちが強くて、「過去、自分がやった作品をもう一度」ということは今の富野さんの中にはあまりないかなというところです。村瀬さんを選んだのは『UC』のとき作画をやっていただいて、エピソード7のアクシズのあたりとか、映像部分が素晴らしいということと、最近だと『虐殺器官』や『ブレードランナー』のトレーラーとかやっておられて、そういった雰囲気も含めて、村瀬さんの映像感覚でハサウェイをフィルム化したいというのが一番大きいです。スタッフは、そこからの逆算が大きくて、村瀬さんは実写方向のアプローチをしていくタイプなので、キャラクターデザイン等々も、美樹本晴彦さんの小説の挿絵を参考にしつつ、pablo uchidaくんというゲーム作品やイラストレーターとして活躍している方に、リアル方向に振ったデザインにしてもらっています。あと、合わせて役者さんの芝居も、キャラクターの等身大の年齢に近い芝居、生っぽい芝居が欲しいということで、このお三方を選ばせていただきました。先だって、富野監督には「やらせてください」ということと「村瀬さんでいきます」ということは伝えていて、美樹本さんや森木靖泰さん、佐々木望さんなどにも話をして「こういう方向性で行かせてください」と伝えて、今回のメンバーになりました。

藤津:
ここから始めるぞと、2020年の作品を作るという決意だなと感じました。いま富野監督は1スタで作業していて、隣で自分の原作作品のアニメをやっていると口を出したくなったりしないかと思ったりするのですが、現場の距離感はどうですか?

小形:
最初に「『ハサウェイ』をやらせてください」と話をしに行ったときは、井上さんの小説のときと同じく「ああ、いいよ」と、結構すんなりだなと思いました。「監督は村瀬さんでいきたい」という話のときは、村瀬さんは『F91』冒頭シーンとかかっこいいところの作画をやられていて、富野さんもアニメーターとして認めている方ですが、翌日に「アニメーター出身の演出の弱点」とか「これはやっちゃいけないよ」とか、見た方がいい作品として、韓国映画だったと思いますが、三角関係の作品のメモを持ってきて。前の日までは「『ハサウェイ』?覚えてない」ということでしたが「ああ、意外と覚えていたんだな」と思いました。「これ、参考にして作れば、もとが面白いから大丈夫だ」と。でも、予告を見て、怒ってました。

(一同笑)

藤津:
それは、なんて怒っていたんですか?

小形:
一発目、『NT』につけた予告がけっこう神妙だったじゃないですか。あれは『NT』が結構派手な内容だったので、わざとテンションが低いところをやったんですが「お前は予告の意味が分かっていない」と叱咤されました。その通りだと思いましたので、そこから先は気をつけて作っています。

綾見:
現在の制作状況はいかがですか?

小形:
うちのスタジオは相変わらずなんですけれど、このあとスタッフ紹介で出てくると思いますけれど、澤野さんの劇判だけはしっかり完成しています。

綾見:
「だけは」ということは……

小形:
なにげに、アフレコも……。

諏訪部:
ぼくらを働かせてください。

小形:
冒頭は3人録ってもらっていただいていますが、まだ半分ぐらいですよね。半分いってないかな。ここから先はこれから。

諏訪部:
いつ録ったとか言っていいんですか?

小形:
いいですよ

小野:
去年の11……月?

諏訪部:
晩秋ぐらいでしたね。そのとき「良いお年を」って言った気がします。

小野:
早めの「良いお年を」をしたと思います。

上田:
春になりますね。

小形:
はじめNext Winterとかいっていましたが、いろいろあって、こうなりました。

綾見:
じっくり考えて作られているということかと思います。

小野:
ちなみに先ほど見ていただいたPVに、僕、OKじゃないセリフも入っていたんです。本番で録っていない、テストで録ったやつが入っていました。

小形:
詳しい話になっちゃうんですが、ABCDEというようにパート分けしていて、ABの3人のパートはしっかり録って、Cはまだ絵が整っていなかったから、小野さんと上田さんに作画参考として仮で録ってもらったんですが、その中のものを使っちゃっています。

小野:
心の準備ができていなかったので、びっくりしました。

綾見:
いま皆さんを取り囲むように制作資料が配置されています。ご自身が演じるキャラクター、初見の感想はいかがでしたか?

小野:
『閃光のハサウェイ』は『逆シャア』から12年ほど経っていて、ハサウェイも逆シャアのときは少年でしたが、見ていただいたとおり立派な青年になっていて、「しっかり、大人だな」という印象です。


小形:
2020年に映像化するにあたっては、今の25歳の考えていることに近しい芝居をして欲しいなと。ハサウェイは、クェスのことなどいろいろ抱えて25歳になっているので、影の部分を持った人間で、それゆえに反連邦活動をしているわけですから、影の部分をしっかり演じられる方ということで、小野さんをオーディションで選ばせていただきました。プレッシャーがあって大変かと思いますが。

小野:
抱えている過去が相当大きなもので、そこを常に出すというのもまたちょっと違うなとは思っていて。それが見え隠れするようなちょっとした瞬間だったりは、僕のニュータイプの感性で敏感にキャッチできればいいなと、いまキャラクターの深掘りをしている最中です。

小形:
ハサウェイは難しくて、普段は普通の青年を演じなければいけないんですけど、ふとしたところで本当の自分が出てしまう。

藤津:
井上さんインタビューの映像にはなかった部分で、当時の担当編集の目から見て、ハサウェイには喪失している、虚無なところがあるキャラクターで、そこそこアクションの腕が立つというのも、今までのガンダムの主人公とは違うと井上さんはおっしゃっていました。

諏訪部:
ケネスはぱっと見の感じ、優男というか、スーツ決めてキザな雰囲気もありますが、れっきとした軍人で、それなりの階級だったりするので、いいバランスでほどよい大人の感じが出せればいいのかなと思っています。正直なところ、オーディションの時に「これは狙えるかもしれない」と。資料としてキャラクターデザインもいただいたので、顔も年齢も……オーディションで「いけるかな?だめかな?」と思うことはあるんですが、ケネスは自分の中ではしっくりくる感じでオーディションもやれたので、決まって良かったなと思いました。


小形:
ケネスってキザで優男なところがある、30半ばのバツイチの大人なんです。それで、業界でそういった大家のみなさんに集まっていただいて、その中で諏訪部さんの声の芯の強さですね、軍人が根底にあるので、優男でありつつも、ときには狂犬と言われるぐらい怖さを感じるものをということで、諏訪部さんを選ばせていただきました。

上田:
初めて見たとき、ぱっと見は「大人っぽいな、美しい人だな」と思ったんですが、よくよく見ていると「大人っぽいけれど少女っぽいところもあるな」という印象に変わっていき、「大人と可憐な少女を持ち合わせた姿の方だな」と。オーディションを受けさせていただいている間に、だんだん行方が分からなくなっていって「女性らしい」「かわいらしい」「少女らしい」に加え「不安定な感じ」「あやうさ」「隙のある感じ」も感じられるようになってきて、そこも魅力の女性なんじゃないかなという印象です。


小形:
この物語はギギで動いているようなものなので、諏訪部さん、小野さんの時と同じように、錚々たる面々でオーディションをさせてもらいました。ギギは少女であり大人でもあり、もろさを抱えた難しいキャラクターだと思います。上田さんについては、オーディションでのアプローチの仕方が他の方と違っていて、ナチュラルで可憐な少女っぽいけれど、怖さもあったり、ミステリアスな部分も感じられて、それでスタッフ一同「上田さんだな」となりました。

上田:
そうだったんですね。

藤津:
ギギは富野さんがずっと描いてきたファム・ファタール、ララァから始まってフォウ、あるいはクェスといったキャラクターの集大成で、『閃光のハサウェイ』はメロドラマではないけれど、3人の感情の揺れ具合が一つのポイントだという話でした。

綾見:
キャラクターもそれぞれ魅力的ですがメカもとても印象的です。

小形:
小説の時に、メカが存在していたんですよね。

藤津:
森木さんが小説用にガンダムを描いて、ほぼ一発でOK。関係者もチェックした形跡がないというのが井上さんのお話でした。

小形:
Ξ(クスィー)ガンダムはまだ見せられませんが、ペーネロペーもそうですが、アニメサイドから出してきたら、絶対にこの線数はOKしないというデザインです。井上さんが悪いんですね?(笑)

藤津:
たぶん、井上さんが「ミノフスキークラフトをつけてください」と富野監督に言ったそうなので、それで大型になっているということですね。森木さんも、きっと小説だから「アニメーターが作画するためのものじゃなくていいだろう」と思って描いたんでしょうね。

小形:
『UC』のとき、カトキさんも同じようなことを言っていましたね(笑)。いま、これをカトキさんがアニメーションデザインに落とし込んで、予告編ではいくつか動かしています。描きでやるのは大変ということで、CGで対応させてもらっています。

諏訪部:
30年前じゃできなかったということですね。

小形:
そうですね、再現不可能だったでしょうね。

諏訪部:
初見でぱっと見たとき、ペーネロペーはどうなってるかわからないですもんね。複雑で。


藤津:
しかもペーネロペーはギミックがある機体ですよね。

小形:
小説ではなんとなく触れているんですが、その後、ゲームとかがあって、設定がどんどん進化していってるので「どうしようかな」と言いつつやっています。メッサーは基本、手描きが多いですが3Dのシーンもあって、全体的に村瀬さんが3D指向なので、今までのガンダムとは違う感じになるかなと思っています。


藤津:
あえて聞きますけれど、Ξガンダムはどうなるんですか?

小形:
言えないです!

諏訪部:
我々も見てないですからね。

小形:
きっと、できていないだけだと思います。

小野:
気になります。早く乗りたいです。楽しみにしています。

藤津:
連邦系量産機のグスタフ・カールは『UC』にも出ていて、ゲームとかでもいろいろな解釈のある機体ですが、相談してますか?

小形:
してます。『UC』やるときに『ハサウェイ』の話はあって、それを加味して『UC』にグスタフ・カールが出ているんですが、いまいろいろ話をしていて、次の予告とかに間に合えば出てきてお見せできるかと。もうすでに、僕はどれがどれだかわからなく……これ以上は言えないです。

諏訪部:
『UC』のままではなく?

小形:
『UC』ではちょっとマッシヴに作られて、これは僕のグルタフ・カールじゃないなと思いつつやっていたんですが、ぜひ次の告知を楽しみにしていただき……。

藤津:
これも重箱の隅をつつくような質問ですが、小説の挿絵では、ブライトにヒゲがありましたよね。そこはどうするんですか?

小形:
ブライトが出てきてからなので、どうするかというところですね。あれは印象的だなと僕も思っています。

藤津:
時間が経っているということを一発で分からせる、美樹本さんのナイスアイデアだったと思います。

小形:
そうですね、これも言えないですが「僕は好きです」と(笑)

藤津:
個人的意見として(笑)

綾見:
白熱してきましたが、本作では新たな制作の取り組みもあるんですよね。

小形:
いまのアニメーション、特に劇場作品ではこのやり方が多いですが、監督から紙の絵コンテだけではなく「Vコンテ」として、タイミングや画面のイメージが分かるものを出していただいて、それを見て作画さんに描いてもらうと。これでアフレコするケースもあるかと思います。

諏訪部:
あるあるですね

藤津:
映像の流れやリズム感をみんなでいったん共有しようということですね。

綾見:
そのほかにも、いま周りに、町並みのパネルもありますね。

小形:
第1話はフィリピンのダバオが主な舞台ということで、ロケハンも行かせていただき、監督等々といっぱいVTRや写真を撮ってきました。行ってみると分かることもありました。富野さんは書いたとき行っていないとのことで、『Z』では香港には行っていないし、『ハサウェイ』のときは国立図書館で見た旅行の本をもとにした、と。名所が出てきたりするんですが、歩いていた海岸が遠いところだったりして、地理関係は現地に行ってみないとわからないなと。遊びに行っているわけじゃないんです。

藤津:
ディテールがリアリティを支えるわけですね。

綾見:
藤津さんからはどうしても聞いておきたいことがあると。

藤津:
ストーリーに関する質問が2つ。そもそも小説の『閃ハサ』は映画のシナリオ稿をもとにしたという『ベルトーチカ・チルドレン』の続きですが、映像も『ベルトーチカ・チルドレン』の続きなのか、『逆シャア』の続きなのか、どっちですか?

小形:
「どっち」とはなかなか今の時点では言いづらく……。あくまで、サンライズの映像作品としては『逆襲のシャア』の続きなのは間違いないです。ただ、映像化は初なので、作る際に小説版の『ベルトーチカ・チルドレン』もふまえてやっているので、その要素が全く入らないわけではない、という曖昧なことしか言えないです。

藤津:
見ていけば、主にどっちかはわかるかなと。

小形:
そうですね。これ3本ありますので、最後まで見ていただけるとわかるかと思います。

藤津:
その最後ですが、小説は完結しているわけで、読んでしまった人は映像を見たとき、いろいろ驚いたり感動したりすることになるんですか?

小形:
3本目のシナリオはまだ上がっていないので、どうなるかはわかりません。言ってしまうと「時間がかかるので、先に読んじゃってください」。

藤津:
読んでも大丈夫。

小形:
読んでいただいた上で……ちょうど3本目のシナリオをやっているので、どうなるかは正直決まっていません。

諏訪部:
原作通りなのか、オリジナル展開になるのか……カミーユがしっかりしているみたいな?

小形:
富野さんがやっていたら、そっち方向もありえたかもしれないですね。

藤津:
村瀬さんはすごいアニメーターであると知られていますが、他の作品で関係者に取材したとき、「ストーリーの読解力も深くて鋭く、監督になるべくしてなる人だった」と聞いています。今回、村瀬さんとむとうさんのコンビで、原作に深く切り込む感じですか?

小形:
村瀬さんは本にも細かくて、今回、むとうさんにお願いしましたが、方向性は、本人たちとも話をしましたけれど、ちょっと違う2人なんです。村瀬さんが理論的なのに対して、むとうさんは感情に乗って書いていくタイプです。村瀬さんのいつもの方向的よりウェットなものを入れたかったので、この組み合わせでお願いししました。村瀬さんは画面作りも含めて、すごく緻密です。

綾見:
お二人の化学反応も期待したいところですね。ここまで貴重な制作資料など、『ハサウェイ』の世界観に関してお話をたっぷり伺ってきましたが、数々の深掘りトークにお付き合いいただいた藤津さんとはここでお別れとなります。藤津さん、本日はありがとうございました。

藤津:
どうもありがとうございました。

音楽関連の紹介
『閃光のハサウェイ』深掘りトークに続いては、音楽関連の話題ということで、まずは劇判を担当する澤野弘之さんからのメッセージVTRが流れました。

澤野弘之さん:
先日、レコーディングをちょうど終えてきたところです。今回もオーケストラの楽曲であったり、歌の曲をいくつかアプローチして、様々な方に参加していただいて、納得のいくサウンドができたんではないかと思います。今回は監督やプロデューサーの方との打ち合わせで、わりと大人のガンダムを意識していると言っていたので、音楽的にもそういったアプローチで、メロディで押す楽曲というよりも、サウンドを構築しているような曲を作りました。もちろん、テーマではメロディを押し出すものもありますが、そのあたりがこれまでのガンダム作品とは違うアプローチだったかなと思います。今回もオーケストラ楽曲、歌もの楽曲で、自分ありに作品のエンタテインメント性をより面白くできたらという気持ちで作りましたので、お客さんにも楽しんでいただけたらと思います。

綾見:
今回の劇判発注はどのようにされたのでしょうか?

小形:
澤野さんがお話しされたように、今回は大人めで考えています、と。その中でも、この話は『逆襲のシャア』からは12年経っているし、もともと宇宙世紀は未来のお話なので、未来的な音を入れて欲しいと発注しています。すでに澤野さんの劇判は上がっていて、大人ながらも、けっこう抑えめなところは抑えめでお願いしますと。いつもの「必殺技」のところは必殺技でという発注だったんですが、もう、メロディーあふれちゃってます。いつもの澤野さんのいいところもありながら、大人な方向性で、歌ものもあり聴き応えがあって。澤野さんの音楽は、みなさんの声がついて画面ができると、すべてを高めてくれる劇判なので、もう澤野さんなしでは作品を作れないなといつも思っています。

綾見:
そんな劇判も期待していただきたいところです。そしていよいよ、本作の主題歌アーティストの発表です。[Alexandros]さんです。本日はお忙しいところを駆けつけていただき、ありがとうございます。

[Alexandros]3人:
こちらこそ、よろしくお願いします。

左から磯部寛之さん、川上洋平さん、白井眞輝さん。


綾見:
[Alexandros]は2007年より本格的に活動を開始。今年2020年はデビュー10周年というメモリアルイヤーを迎え、すでに発表されている初となるベストアルバムのリリースやライブツアーを始め、今後のプロジェクトにも期待が集まる、今最も目が離せないロックバンドです。……ということですが、お間違いないでしょうか。

[Alexandros] 川上洋平さん(以下、川上):
はい、間違いないです。

綾見:
今回、[Alexandros]のみなさんに主題歌をオファーした理由を小形さんにうかがいたいと思います。

小形:
『閃光のハサウェイ』は日本全国で上映されますが、いまガンプラの売り上げは海外が多いぐらいで、『ハサウェイ』も海外で上映されることになります。それにあたって、日本のアーティストで一緒に海外に出て行けるアーティストがいいなということで[Alexandros]さんにお願いしました。

綾見:
発注時のイメージはどういったものでしたか?

小形:
今回、第1部ということで、ハサウェイのテンションが一番上がっている時期なので、そこに向けて、テンションが高くてアップテンポになるといいなみたいに発注させていただきました。

綾見:
オファーを受けていかがでしたか?

川上:
めちゃくちゃうれしかったです。他の映画の主題歌を聞いて、すごく気に入ってくださって。

小形:
BLEACH』です

川上:
あの曲もニューヨークで作ってきたんです。海外で、自分たちがこのバンドでやって行くにはどうしたらいいだろうと4人暮らししながらやっとできた曲だったので、それを「いいね」と言ってくださって、すごく嬉しかったです。とある友人を通じて出会ったんですが、「なんでこんなことを言ってくれるんだろう?」と思っていたら……。

小形:
これはチャンスだなと。

川上:
「実は……」とお話をいただきまして。それで、僕たちは「RX-RECORDS」というところに所属しているんですが、マネージャーがガチのオタクで、いつかこういうお仕事をしたいために「RX-RECORDS」を立ち上げていたという。

綾見:
計算されていたんですね。

川上:
本人は無理だろうなと思っていたかもしれませんけれど、そんなお話をいただいて。

小形:
話をしに行ったとき「『RX-78』は空けてます」と。

諏訪部:
品番が「RX-78」に。

川上:
いろんなアーティストも所属しているんですけど、自分たちが、と。僕らはもちろん嬉しくて光栄だったんですけれど、誰よりもマネージャーが泣いて喜んでいると思います。

諏訪部:
めちゃめちゃテンション上がってるって、先ほど裏でおっしゃっていましたね。

綾見:
マネージャーさんの思いが引き寄せたのかもしれないですね。

小形:
先ほど話をしていたら、奇跡的なものもあって……。

川上:
うちの兄もガンダムの大ファンで、僕が小学校1年生とかのとき、兄が『逆襲のシャア』を見ている横で見ていたんです。最近、改めて見直してみたら「あっ!?」と思ったシーンがあったんです。

綾見:
こちらのシーンですね。

川上:
ハサウェイがハロと一緒にいるのかな。ここ、バンド名を[Alexandros]か「Alexanders」かで迷って「dros」の方にしたんですけれど、「Alexanders」は候補だったんです。これはもう運命だなと。


綾見:
喜びや奇跡の出会いがあった中で、制作の現在の状況はいかがでしょうか?

川上:
目下制作中でございます。いま何パターンもありまして、小説とか読みつつ、いろいろな感情が芽生えてくるので、激しかったりとか虚無感だったりとか、それを1つの曲に落とし込むにはどうしたらいいかと試しているうちに何パターンにもなっていて、いまスマホの中に何曲も入っています。

磯部寛之さん:
我々が曲を生み出すときは、結構毎回スタジオであーやこーや言っている瞬間があって、それは俺らにとっては何かができる瞬間でもあって。今回、『逆襲のシャア』から30年の時を経た『閃光のハサウェイ』ということで、ガンダムの壮大なストーリーの一部を担わせていただくことを光栄に思っていて、スタジオで気合い入りまくって、でも楽しく、ああでもないこうでもないと制作しているので、必ずいいものができると思います。楽しみにしていただければと思います。

諏訪部:
油断すると森口博子さんにカバーされますよ。

綾見:
そういう未来はあるかもしれないですね(笑)。実際、楽曲制作だと、みなさんで聞きあって話をされたりするんですか?

川上:
自分たちで作りながらなので、その場でできたものを家に帰ってそれぞれが聞いて、またスタジオに行って意見を出してアップデートして、ですね。今はメンバーしか聞いてないかな。さっき、はじめてマネージャーが聞きました。

綾見:
制作中に意見がぶつかったときは譲り合うんですか?押し切るんですか?

川上:
いろんなパターンがありますね。僕が作ってきて、こういうアレンジをして欲しいとメンバーにお願いするとき、聞いた時点でメンバーも頭に浮かんでいるものがあったりするので、僕の頭の中のアレンジとぶつかるとき、ほとんどあるんですけれど、ぶつかることが楽しみでもあるので、あまり言うことを聞き過ぎて欲しくもないし、ケンカしながら作る方が毒々しいものが生まれたり。トゲを感じたりする楽曲に必ずなるんです。みんなが「いいじゃんいいじゃん」って作ると、どこか味気なかったりするのが多いので、毎回、あえてケンカするようにはしてないですが、遠慮はしないようにしています。

エンディング
エンディングでは古谷さんと池田さんが合流し、全員から一言ずつコメントがありました。

小形:
本日はご覧いただきありがとうございます。古谷さん、池田さんの前でこうしてお披露目ができて、身が引き締まる思いです。『ハサウェイ』についていろいろ熱いメッセージいただいています。それを受け止めた上で、新しい世代に残せる作品をこのスタッフで作っていきたいと思っています。今回、夏に公開ということで、横浜でガンダムが動いたりとかします。世界中、大変な時期ですが、7月23日にみなさん笑顔で会えることを期待しまして、この場を終われればと思います。これからもガンダムならびに『ハサウェイ』を末永く応援していただければと思います。

川上:
めっちゃかっこいい曲を作りたいと思いますので、楽しみにしてください。

池田:
おじさんももうちょっと頑張るんで、一つ、よろしくお願いします。皆さんも一緒に頑張りましょう。

古谷:
劇場版『閃光のハサウェイ』は、アムロとシャアが紡いできた宇宙世紀の機動戦士ガンダムの正当なる後継、継承作品だと思っています。是非ともこの作品が新しいガンダムファンを獲得し、さらにガンダムワールドが広がるように、心から期待しています。配信を見てくださった皆さん、公開の暁には何十回も劇場に足を運んでいただき、この『閃光のハサウェイ』大ヒットにつなげていただければ、またアムロとシャアの物語がアニメ化される……かもしれません。それを僕も期待しております。

諏訪部:
私はファーストガンダムに小学生の時に出会い、以降、ガンダムと名のつくシリーズに親しんできました。過去、ガンダムと名のつく作品に出演させていただいたこともありますが、今日こうして、古谷さん、池田さんと並んで、ガンダムを冠した作品のキャストとしてご挨拶させていただくのは光栄であり、感無量であります。『閃光のハサウェイ』ケネス役、全身全霊を込めて頑張っていきたいと思いますので、どうか劇場での公開を、よろしくお願いします。

上田:
ギギは物語の中で重要な役割をもった女性だと思いますが、ギギなりの意志を持って生きていると思います。そんな意志、彼女の思いを大切に丁寧に、素直な気持ちで頑張っていけたらなと思います。

小野:
池田さん、そして古谷さんの生のお芝居を近くで見せていただき、改めて身が引き締まる思いというか、また今日、ギアを1つ上げることができたと思います。長い歴史のガンダムシリーズの中で、主人公をやれるということがとても光栄ですし、その責任をしっかり果たせるように頑張っていきたいと思います。みなさん、劇場公開を楽しみに待っていただけたらと思います。









映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は2020年7月23日(木)から公開です。

◆『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』情報
企画・製作:サンライズ
原作:富野由悠季、矢立肇
監督:村瀬修功
脚本:むとうやすゆき
キャラクターデザイン原案:美樹本晴彦
キャラクターデザイン:pablo uchida、恩田尚之、工原しげき
メカニカルデザイン原案:森木靖泰
メカニカルデザイン:カトキハジメ、山根公利、中谷誠一、玄馬宣彦
色彩設計:すずきたかこ
撮影監督:脇顯太朗
CGディレクター:増尾隆幸、藤江智洋
編集:今井大介
音響演出:笠松広司
録音演出:木村絵理子
音楽:澤野弘之
配給:松竹
© 創通・サンライズ

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