産油国間で原油価格引き下げ戦争が勃発、新型コロナウイルスの脅威にはプラスとの指摘も
2020年3月6日に開催された石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC産油国で構成される「OPECプラス」の会合が決裂に終わり、原油価格が大幅に下落しました。これにより経済に混乱が発生することが懸念される一方で、新型コロナウイルスにより打撃を受けている世界経済にはプラスの影響もあるとの声も挙がっています。
Oil plummets 30% as OPEC deal failure sparks price war
https://www.cnbc.com/2020/03/08/oil-plummets-30percent-as-opec-deal-failure-sparks-price-war-fears.html
Plummeting oil prices and mortgage rates could boost consumers
https://www.cnbc.com/2020/03/08/plummeting-oil-prices-and-mortgage-rates-could-boost-consumers.html
Oil crashes by most since 1991 as Saudi Arabia launches price war - CNN
https://edition.cnn.com/2020/03/08/investing/oil-prices-crash-opec-russia-saudi-arabia/index.html
原油価格の主要な指標とされるブレント原油先物価格が、3月8日(標準時)の取引で一時30%下落してバレル当たり31.02ドル(約3230円)の安値となりました。これは、湾岸戦争が勃発した1991年以来の低水準だと、金融情報会社Refinitivは指摘しています。また、WTI原油先物の価格も同様に27%下落して、2016年2月以来の最低水準の価格となりました。
原油価格がこれほどまでに下落したのは、原油生産の協調減産により価格の調整を図った「OPECプラス」の会合で、OPEC加盟国と非加盟国の交渉が決裂したことが原因です。OPECの盟主とされるサウジアラビアは会合で、新型コロナウイルスの流行などに起因した原油価格の下落に歯止めをかけるべく減産協定を提案。しかし、原油のシェア争いでサウジアラビアとしのぎを削る非OPEC最大の産油国ロシアがサウジアラビア側の提案を拒否したため、OPECの介入は失敗に終わりました。サウジアラビアはこれを受けて、4月の原油の公式販売価格を1バレル当たり6ドル(約623円)切り下げる大幅値下げを発表するなど対抗姿勢を鮮明に打ち出しています。
投資会社Again Capitalのジョン・キルダフ氏はニュースメディアCNBCに対し「慢性的な石油の過剰生産に対処しようとしていたサウジアラビアは、焦土戦術に方向転換しました」とコメント。ゴールドマン・サックスのアナリストであるダミアン・クルバリン氏も「OPECとロシアの原油価格戦争は、新型コロナウイルスによる大幅な需要減の真っただ中で発生したので、2014年11月から始まる価格競争を一層過酷なものにするでしょう」と指摘しています。
我慢比べの様相を呈している原油価格戦争について、経済紙Bloombergは「ロシアには原油価格の低下が需要を刺激するとの狙いがあるかもしれませんが、そうなる可能性は必ずしも高くありません」と述べて、ロシアを含む産油国全体が大きな経済的打撃を被るだろうとの見方を示しました。
その一方で、原油価格の低迷に対し肯定的な意見もあります。CNBCは原油価格が下落すると同時に、人気が高い30年固定金利の住宅ローンの平均金利が8年ぶりの低水準になっていることを指摘。これらの要因により消費が喚起されて、経済にプラスの影響があることを示唆しました。
ノースカロライナ州立大学の経済学教授であるマイケル・ウォールデン氏も、原油価格の下落や堅調な消費者信頼感指数が、新型コロナウイルスにより疲弊した経済を支持する可能性があると述べています。
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金融情報会社Nations Indexesの代表取締役であるスコット・ネイションズ氏は「原油価格の低下により雇用や工業生産が改善すれば、消費者の目もマスクや消毒液以外のものを購入することに向けられるでしょう」と述べて、原油価格の低下が小売業やエンターテインメントなど幅広い分野の消費を底上げしてくれるとの期待をのぞかせました。
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