世界に2つしかない「レコードの原材料」を生産する工場の1つが火事で焼失、レコード業界に影響か
2020年2月6日に、カリフォルニア州にある工場が火事で焼失しました。この工場は世界に2つしかない「レコードの原材料」を製造する業者のものであり、火災による焼失は世界中のレコード業界に大きな影響を与える可能性があると報じられています。
Banning building fire blocks Highway 243 south of Interstate 10
https://www.desertsun.com/story/news/fires/2020/02/06/banning-building-fire-blocks-highway-243-south-interstate-10/4678543002/
“Devastating” Manufacturing Plant Fire Threatens Worldwide Vinyl Record Supply | Pitchfork
https://pitchfork.com/news/devastating-manufacturing-plant-fire-threatens-worldwide-vinyl-record-supply/
レコードは塩化ビニールを主材とする樹脂の円盤を、溝が刻まれた金型でプレスすることで製作されます。この金型はアルミの板にラッカーの樹脂を塗布した「ラッカー盤」に刻まれた溝を基に製作され、ラッカー盤を製造している業者は世界に2つだけ。そのうちの1つがカリフォルニア州バニングにある「アポロ・マスターズ」の工場でした。
ラッカー盤に溝を刻み込んで原盤を製作する様子は以下のムービーで見ることができます。
Vinyl Lacquer cut for 'Middle Name Dance Tracks Vol 1' at The Exchange Vinyl, London - YouTube
そんなアポロ・マスターズの工場で2020年2月6日に複数の爆発が報告され、82人の消防士が駆け付けて消火活動に当たりましたが、1万5000平方フィート(約1400平方メートル)の工場は焼失してしまったとのこと。
アポロ・マスターズは「すべての素晴らしいお客様へ。アポロ・マスターズの製造および保管施設が壊滅的な火災を起こし、完全に破壊されたと報告することは非常に悲しいことです。すべての従業員が安全だったことがいい知らせです。現時点では将来についてはっきりしたことは断言できず、この困難な時期を乗り切るためにできることを考えています」とコメントしています。
ミシガン州デトロイトのレコードレーベルであるサード・マン・レコードの共同設立者であるベン・ブラックウェル氏は「私が知る限り、今回の火災は世界中のレコード業界に問題を引き起こすでしょう」「世界でラッカー盤を製造しているのは2社のみであり、アポロ・マスターズと日本のMDCだけです。ただし、MDCはサービス需要に追いつくのに苦労していると聞いています」と述べました。世界のラッカー盤シェアの9割以上をアポロ・マスターズが抱えていたため、MDCの工場がアポロ・マスターズの分まで生産を請け負うのはキャパシティオーバーになるというわけです。
一方で、レコード製作コーディネーターのデビッド・リード氏は「私のおよそ40年の経験によれば、レコード業界にはこの問題を解決できるような才能あふれるプロがたくさんいて、信じられないほど回復力があります」と楽観的に語りました。
・関連記事
60~70年代の音楽レコードのジャケット写真はなぜ「アーティストが巨大な椅子に座りがち」なのか? - GIGAZINE
ボイジャー号とともに宇宙に打ち出された「ゴールデンレコード」を宇宙人がどのように解読するのかを解説 - GIGAZINE
YouTubeの音楽を違法にぶっこ抜く「ストリームリッピングサイト」がレコード業界の訴訟に屈して次々と閉鎖 - GIGAZINE
レコードのジャケットに登場する場所が数十年後にどう変化したのかがわかる写真が公開中 - GIGAZINE
ロックが禁止されていたソ連で「退廃的音楽」を入手するための「骨レコード」とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ