金属を「水に浮く」ように加工する技術を用いて「完璧な太陽エネルギー吸収体」の開発に成功
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金属の表面をレーザーで加工することで、「完璧な太陽エネルギー吸収体」を作り出すことに研究者たちが成功しました。これを用いることで、より理想的な太陽光発電システムを作り出すことが可能となります。
Lasers etch a ‘perfect’ solar energy absorber : NewsCenter
https://www.rochester.edu/newscenter/lasers-etch-a-perfect-solar-energy-absorber-414902/
ロチェスター大学はクモやアリの水に浮くことができる能力をヒントに、「水に浮く金属」を開発しました。水に浮く金属は、非常に短いパルス幅で発振することでレーザー強度を高くしたフェムト秒レーザを用いることで、金属表面に強い疎水性(超疎水性)を持たせるというものです。
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「水に浮く金属」の加工に用いるのと同じフェムト秒レーザーを駆使した加工技術で、非常に効率の良い太陽光発電システムを生成するためのコンポーネントを、ロチェスター大学の研究チームが開発することに成功しています。研究を率いたのはロチェスター大学の光学研究所でフェムト秒レーザーと物質の相互作用について研究するChunlei Guo教授です。
研究チームの開発した「太陽光発電のための完璧なコンポーネント」については以下のムービーを見ればよくわかります。
Soaking up the sun with laser treated metal - YouTube
![](https://img.youtube.com/vi/t2dSUwilqDE/maxresdefault.jpg)
過去数年間、ロチェスター大学のGuo教授の研究室では、フェムト秒レーザーを用いることで金属に超親水性や超疎水性といった特性を加える研究が行われてきました。
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その成果として完成したのが、金属に超疎水性をプラスした「水に浮く金属」です。「水に浮く金属」の上に水滴を落とすと、水滴は表面で跳ね返ります。
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これと同じように、フェムト秒レーザーで金属の表面を真っ黒に加工することで、太陽光の吸収率を格段に上げることに研究チームは挑戦しています。
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しかし、金属表面を黒くしただけでは太陽スペクトル以外の波長は熱として放射されてしまいます。
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この問題を解決するため、Guo教授の研究室は「太陽スペクトルを吸収し、他の波長の熱もほとんど失わない」という特性を持つ選択的吸収体を開発。
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通常の金属片の場合、ほとんどの光が表面で反射してしまいますが……
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フェムト秒レーザーで金属の表面を適切に加工した場合、以下のように金属表面で光が反射することなく、必要なエネルギーを余すところなく吸収可能に。
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研究チームが開発した選択的吸収体を熱電発電装置に組み込むと、通常と比べて電力生成効率は130%増加。また、表面を黒色に加工しただけの金属と比べても、選択的吸収体は15%も幅広いスペクトルを吸収できるそうです。
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選択的吸収体は所定の波長を取り込みながらも熱損失を最小限に抑えることで、太陽エネルギーと熱エネルギーの収集を最適化します。
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Guo教授は研究成果に対して、「事実上、初めて完璧な金属製の選択的吸収体を作り出すことに成功しました」と語っています。
なお、研究チームはアルミニウム・銅・スチール・タングステンといった金属をフェムト秒レーザーで加工して選択的吸収体とすることに成功。中でも熱吸収材として一般的に使用されているタングステンが最も太陽光吸収効率が高かったとしています。
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in サイエンス, 動画, Posted by logu_ii
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