オンラインゲームの世界ではどのようにスラングが誕生し流行していくのか?
by Sean Do
ゲームコミュニティ上では多くのスラングが使用されていますが、なぜゲームコミュニティの中でスラングが誕生し、どのように流行していくのかについて、海外メディアのThe Vergeが解説しています。
How slang helps turn online worlds into communities - The Verge
https://www.theverge.com/2020/2/4/21120398/online-game-communities-slang-starcraft-dead-by-daylight
ゲームの世界では、多くのスラングが利用されています。「OP」や「バフ/デバフ」、「ナーフ」といったスラングは、日本でも広く普及しているスラングのひとつ。
こういったスラングは、特定のゲームから生まれることも多くあります。非対称型対戦アクションゲームとして人気の高い「Dead by Daylight」では、クローデット・モレル(Claudette Morel)というキャラクターがマッチングロビーに4人並んだ状態を指す「Squadette」というスラングが存在します。クローデットはゲーム上のキャラクターですが、Dead by Daylightのコミュニティ上ではキャラクター以上の意味を持った言葉となっていると海外メディアのThe Vergeは指摘。また、「Squadette」という海外で多用されているスラング以外に、日本でもクローデットの地面と同化するほど見えづらい服から「茶クロ」や「ウンコモレル」といったスラングが生まれています。
他にも、StarCraftシリーズに登場する有機生命体種族の「Zerg」は、1体では弱いものの、ユニットの数を容易に揃えられることから、数で圧倒する種族として知られています。そこから、「Zerg」という単語は「大量の敵に圧倒される」という意味のスラングとして、StarCraftシリーズに限らず多くのゲームコミュニティで使用されるようになっています。
StarCraftシリーズを発売当初からプレイしてきたというジム・ビショップさんは、「最初にStarCraftをプレイし始めた時、Zergは注意を怠ると本当に脅威になり得るやっかいな種族のひとつとして認識しているだけでした。しかし、Zergのような集団戦法が、FPSのゾンビモードなどで直面する危機的状況と変わりないことに気づきました」と語り、Zergというスラングが特にシューティングゲームで広く使われるようになった理由を肌で感じたとしています。
記事作成時点では、「Zerg」というスラングはコンテンツの枠を超えて幅広く使用されており、Dead IslandやLeft 4 Deadといった第一者視点のゲームだけでなく、Elder Scrolls Onlineのようなシューティングゲームですらないタイトルの中でも使用されるようになっています。The Vergeは「他プレイヤーとのコミュニケーションが重要になってくるマルチプレイヤータイトルのコミュニティで、スラングとしてZergが使用されないということはほとんどありません」と述べています。
StarCraft II - Zerg Overview - YouTube
ゲームごとに用いられているスラングはGoogle上で検索すれば簡単に発見可能で、公式のゲームフォーラム上やReddit上など、さまざまな場所でスラング集を確認することが可能です。こういったサイトへの投稿には、ゲーム上で使用されるスラングを網羅することで、新規のプレイヤーをサポートしたいという願望も込められているとのこと。スラング集は基本的にゲームフォーラムやRedditのようなコミュニティベースのウェブサイト上に存在するため、サイトを閲覧することでゲームの用語を学ぶことだけでなく、用語などについて他人に質問したり、内容を修正したりすることも可能。その後、サイト上に集められたスラングが口コミやTwitterなどのSNS、YouTubeなどのコメント欄経由などのさまざまな方法で広まっていくとのこと。
そして、スラングが誕生するための重要な要素として、「激しい競争要素を含むゲームである必要がある」とThe Verge。例えば、人気シューティングゲームのオーバーウォッチのプレイヤーであるダニエル・ミッチェル・ブノワさんは、「コミュニケーションのしやすさ」から、プレイヤーがより短くシンプルな言葉を求めるようになり、スラングを多用するようになると指摘。オーバーウォッチのように一瞬の判断や、何かしらのアクションを取るタイミングが重視されるゲームでは、より簡潔にコミュニケーションが取れるようになるスラングが、ゲームプレイそのものに大きな影響を与えるため、多用されるようになるというわけ。これはオーバーウォッチだけでなく、Destiny 2やロケット・リーグといったタイトルでも同様です。
Rocket League - Announce Trailer | PS4 - YouTube
さらに、多くのユーザーがスラングを利用するようになるには、人気の高い動画配信者の力も欠かせません。The Vergeは「Twitchのゲーム実況者はただ椅子に座ってゲームをプレイしてお金を稼いでいるだけではありません。彼らは有名人と見なされており、スターのように独自のフレーズを流行らすことができます。フォートナイトの人気配信者であるNinjaの『time in』というフレーズは、アディダスのスニーカーにもなっています」と記し、人気配信者などがスラングを流行させる役割を担っていると指摘。
ロケット・リーグではYouTuber兼eスポーツ選手のamustycowさんが、「Musty Flick」と呼ばれるテクニックを普及させました。このテクニックは非常に難しいものの、ゲーム内で効果的なテクニックでもあるため人気を博し、多くのファンが「Musty Flick」という固有の呼称を使うようになったそうです。
amustycowさんによるMusty Flickのチュートリアルムービーは以下から視聴できます。
MUSTY FLICK TUTORIAL | Learn How To Do The Flick No One Expects - YouTube
ゲームコミュニティからスラングが生まれ、流行するメカニズムについて解説してきたThe Vergeは、スラングの誕生や流行に共通するポイントとして「他のプレイヤーと一緒にプレイする際に、対話の一部としてスラングを使用することで、一緒にプレイしているのが知人であろうと見ず知らずの相手であろうと、共同体としての感覚が得られ、楽しい時間を過ごせるようになる」と指摘。
スラングを利用することでゲーマーたちが「同じコミュニティに属している」という感覚を得られることこそが、スラングがインターネット上のゲームコミュニティで誕生、普及していく上で最も重要な要素というわけです。
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