インタビュー

ゲーム実況配信で成功するのに必要な8つのこととは?TwitchのCOOのケビン・リン氏が明かす


月間1億・日間1000万ものユニークユーザーを抱える世界最大のゲーム配信サイト「Twitch」が、東京ゲームショウ2016に単独初出展を果たしました。東京ゲームショウに出展するにあたってTwitchのCOOケビン・リン氏が来日しており、実際に合う機会を得たので、Twitchの日本市場に対する戦略や、人気ゲーム配信者となって成功するにはどうすればいいかなど、さまざまなことを根掘り葉掘り聞いてきました。

Twitch
https://www.twitch.tv/

インタビューしたのはCOOのケビン・リン氏とアジアマーケットのディレクターのレイフォード・コックフィールド氏です。


GIGAZINE(以下、G):
2015年に日本市場に参入して1年近くたちますが、欧米や他のアジア市場と比べて日本市場が特に異なるポイントや傾向を教えてください。日本市場特有の難しさはありますか?

レイフォード・コックフィールド氏(以下、コックフィ-ルド):
例えば、日本とアメリカではゲームに対する姿勢や捉え方が違いますね。アメリカだとゲームを仕事のキャリアとして捉えている人が多いですが、日本のゲームに対する姿勢は趣味の側面が非常に強い。この違いをよく理解する必要があると思う。日本のユーザーにアメリカのスタイルを押しつけるつもりはなく、あくまでも日本のコミュニティの反応を見て対応しています。日本のユーザーが何をのぞんでいるかというのを理解するということですね。


G:
なるほど。アメリカとの違いとして、Twitchの人気カテゴリの1つであるeSportsの認知度も挙げられると思います。日本でもeSportsの認知度はジワジワとあがってきていますが、まだまだというのが実際のところです。Twitchは日本のeSportsをどう見ていますか?

ケビン・リン氏(以下、リン):
eSortsのメインとなるのはPCゲームですが、世界中で人気があってeSportsの大きな大会が開かれるDotaやLeague of Legendsといったゲームは、日本で他の国と同じくらいの人気を得られてないのが現状です。しかし、eSportsの走りとも言える格闘ゲームは日本で生まれたゲームジャンルなんですよ。格闘ゲームの日本人プレイヤーは、実はeSportsの業界ですごく有名。例えばプロゲーマーの梅原大吾さんはeSportsでも大御所と言える人です。日本のeSportsは世界とは少し違う独特な進歩の仕方をしていて、Twitchとしては日本のeSportsの進化についていきたいですね。日本のeSportsと一緒に成長したいという感じかな。


G:
その梅原さんをTwitchのアンバサダーに任命されましたよね。アンバサダーに梅原さんを選んだ理由というのは、一体何だったのでしょうか?

リン:
僕たちは梅原さんをとても尊敬しています。梅原さんは単純にプレイスキルが高いだけでなく、相手をいかに見極めるかに秀でたプレイヤー。戦いを実践するアスリートであり、戦いの中で学習するアスリートです。そんな梅原さんの経験を私たちに共有してほしいと思いアンバサダーになってもらいました。梅原さんにアンバサダーを務めてもらうことで日本の文化に対しても理解を深めることができたと思います。

G:
と言いますと?

リン:
日本の市場にどのようなメッセージを送ればみなさんに行き届くのかがわかったということです。梅原さんの配信番組は、ただのゲームプレイを配信する番組ではなく、ユーザーとコミュニケーションをとるバラエティー番組に近いものがある。梅原さんの番組がなぜ人気なのかを分析することで、日本のユーザーがゲーム実況配信に何を求めているのかがわかってきました。

アメリカのテレビ番組は日本で全く人気がありません。Twitchの番組ならいけるかもと思っていましたが、うまくいきませんでした。うまくいったのはEVO(格闘ゲーム大会のThe Evolution Championship Series 2016)の日本語中継くらいかな?もちろん、日本のユーザーが大会の中継だけでなく個人の配信に興味を持っているのも段々とわかってきましたが、個人の配信者の中でもどういう人が人気を得られるのかは、他の国と全く違う傾向がありますね。

コックフィールド:
僕は日本と海外だとチャットの違いを感じました。日本人のユーザーはチャットでゲームに関することを論じるのが好きな傾向がありますが、アメリカではチャットでユーザー同士が会話したり、配信者と対話したりというのが多いですね。

G:
ふむふむ。チャットの話が出たのでお伺いしたいのですが、TwitchのチャットにはEmotesというスタンプがあります。日本向けのスタンプをリリースする予定はあるのでしょうか?

リン:
詳細に関しては余り言えないんだけど、もうすぐ、とだけ(笑)

G:
コスプレコンテストで6万3000ドルの賞金)を出す「TwitchCon 2016」を予定していますが、日本でもこういうイベントを展開する予定はありますか?

リン:
TwitchConは今年でまだ2回目のイベントで、第1回目のときはチケットが2000枚くらい売れたらいいなと思っていたら、2万枚も売れて驚きました。配信者同士が集まってファンに会える場所を求めていたんですね。日本のTwitchコミュニティが成長して、そういった声が大きくなればやるかもしれないけど、今はその予定はありません。


コックフィールド:
ちなみに、Twitchは東京ゲームショウ2016で単独初出展を果たしました。イベントを通していろいろわかったことがあるし、それを今後に生かしていくつもりです。

G:
日本のゲーム実況プラットフォームと言えばニコニコ動画がありますが、ニコニコ動画と差別化している点はありますか?

リン:
Justin TVのときはさまざまなジャンルを扱っていて、ゲームに1本化するのに6年を要しました。我々はこの経験を通して、ゲームコミュニティがゲーム配信プラットフォームに対して何を求めているのかをよくわかっています。これが他の動画配信サービスと大きく異なる点ですね。もう1つはTwitchは海外で展開していて、グローバルであるという点です。例えば、テレビとかが作ってきたインフラは国内に収まりますが、インターネットのコンテンツはすぐにグローバル化できます。コンテンツのグローバル化に関して、Twitchはそれを可能にする場を提供できる。これも他のサービスと大きく異なる点です。

G:
ゲーム以外でも創作活動のTwitch CreativeやSocial Eating(日本では未配信)といった新しいカテゴリが登場しました。今後もゲーム実況とは異なる新しいカテゴリを増やしていくのでしょうか?

リン:
Twitchが何をするかは、コミュニティの声や要望を聞いて決めています。Twitch CreativeやSocial Eatingも、もともとはユーザーの声や要望から始まったもの。コミュニティが望んでいると思ったら、それに取り組むという姿勢を持ち続けています。

G:
少し技術的なことを聞かせてください。FlashをやめてHTML5に順次移行しましたが、ユーザーからの反応で好評だった部分と、今後の課題としてクリアする必要があると感じた部分は何でしょうか?

リン:
実際のところ、HTMLへの移行はコミュニティが望んでいたことだったんですよ。その声に応じてFlashからHTML5へ移行することになったのですが、大きいサービスだからこそ抱えている問題がたくさんありしたね。全てを一気に切り替えるとサイトが落ちたりしますから。HTML5に移行することでチャットに遅延が発生する可能性もありました。

G:
チャットのレンダリングデータサイエンスチームの作り方など、技術的なことも公式ブログに掲載していますが、これにはどういった目的があるのでしょうか?

リン:
我々がコミュニティの声を聞くように、コミュニティにも我々の声を聞いて欲しいと思って技術的なこともブログに掲載しています。Twitchという会社自体もコミュニティの1つですからね。

G:
2014年にみんなでポケモンを同時にプレイする「TwitchPlaysPokemon」という企画が登場し、ゲームやIT業界で大きな話題になりました。そのときの率直な感想を教えてください。

リン:
ものすごく不思議なことでしたね(笑) TwitchPlaysPokemonの配信が始まったときは「これは一体なんだ!?」と思いました。数千人のユーザーがチャットにコメントを入力していたから、もしかしたらチャットが持たないかも(落ちるかも)と心配しましたよ。僕も見ていたのですが、同じ所をグルグル回るだけだったのでフラストレーションがすごかった。でもオフィスに行くとたくさんの社員がTwitchPlaysPokemonを見ていて、あのときはチャットが1つのコミュニティになっていました。正直なところ、まさかクリアまではいかないだろうと思っていたんですが、クリアまで到達しちゃった。こういうコンテンツはTwitchからしか出てこないものだと思っています。


G:
TwitchPlaysPokemonの後にも、みんなでダークソウル金魚でストIIというぶっ飛んだ配信が登場しました。こういった振り切った配信は他のサービスではなかなか登場しないのですが、なぜTwitchで登場したと思いますか?

リン:
それは僕たちのユーザーが非常にユニークだからかな。例えば、TwitchのスタンプをTwitchという枠を飛び越えて、他の掲示板やテレビでも見ることがあります。単純な理由としてはAPIを公開しているからなんだけど、そういうことをしようと思う心が重要かと。僕たちが考えているよりもコミュニティの間のつながりがとても強いんだと思います。いたずら好きなコミュニティを持っているということですね。

G:
最後に、これからTwitchでゲームの配信をやってみたいという人に何かアドバイスやメッセージをください。Twitchで人気配信者になるにはどんなことをすればいいのでしょうか?

リン:
まず第1に配信を始めること。とにかく恐れないで配信することが大事です。2つ目は本当に好きなゲームの配信をするということ。人気ゲームを配信しようという人は多いのですが、それだとうまくいきません。3つ目は「配信の目的」を明確にすることですね。楽しむために配信をするのか、配信して有名になりたいのか、配信を仕事にしたいのか。もし配信を仕事にしたいのであれば、専業なのか副業なのかなど、目的をハッキリすることが大事です。

4つ目はとにかく配信を続けること。週に1回しか配信できないのなら「毎週木曜日の19時」など視聴者にわかりやすい固定の枠を決めてください。5つ目は他の配信者をチェックすることです。例えば、現在人気がある人も最初は視聴者1人から始めています。Twitchのコミュニティは利己的なものではなく、始めたばかりの配信者を助けようという気持ちを持っています。だから他の配信者の番組にも顔を出すことが大事ですね。


6つ目はどういうキャラクターでいくのかを決めること。ありのままの自分で配信するのか、それとも自分とは全く違うキャラクターでいくのか。キャラクターといってもさまざまなジャンルがあるので、1つジャンルを決めてそれを続けてください。7つ目はSNSや他のコミュニティに顔をだすことですね。8つ目は視聴者としっかりエンゲージすること。動画というのは生配信よりも歴史があり、動画から生放送に移ってきた人は視聴者とエンゲージするのを忘れがちです。視聴者を名前で呼ぶことなどは非常に大事。ゲーム実況配信で成功するのは思っているより簡単です。ゲームがうまいかどうかは関係ないですからね。

G:
本日はありがとうございました。

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in インタビュー,   ネットサービス,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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