異様に低い投資額でフランチャイズ店を持つことができる「Chick-fil-A」(チックフィレイ)のカラクリとは?
by Mike Mozart
アメリカで2番目に大きなチキン・ファストフード・チェーンである「Chick-fil-A」(チックフィレイ)は、フランチャイズ店を持つオペレーターの合格率が0.13%と、名門スタンフォード大学の合格率より低いことで知られています。多くのフランチャイズチェーンは「店舗を持ちたい」と考えた人が多額の投資を行う必要がありますが、チックフィレイの場合は異様に投資額が低くなるのが特徴。そんなファストフードチェーンの裏事情について、作家のZachary Crockett氏が調査をまとめています。
Why it only costs $10k to ‘own’ a Chick-fil-A franchise
https://thehustle.co/why-it-only-costs-10k-to-own-a-chick-fil-a-franchise/
ブランドが商号・商品を利用する権利や営業上のノウハウを事業主に提供し、対価としてロイヤルティを受け取るフランチャイズは、ブランド側には「財政的責任を避けてチェーンを迅速に拡大できる」という利点が、事業主側には「既に確立されたブランドや販売経路を利用できる」という利点があり、うまくいけば双方に利が生まれる仕組みです。さまざまな飲食チェーンがフランチャイズ契約で店舗をオープンさせていますが、実はアメリカでフランチャイズチェーンを購入するコストは決して安いものではありません。Crockett氏の調べによると、チェーン側は店舗を開きたい人に最低自己資本として平均100万ドル(約1億1000万円)を求めるとのこと。
フランチャイズチェーンを購入するために必要な自己資本の額をランキングにするとこんな感じ。高額なのは「ウェンディーズ」「ジャック・イン・ザ・ボックス」「タコベル」「KFCコーポレーション」「バーガーキング」など。ウェンディーズが断トツに高額で500万ドル(約5億5000万円)、ほか4つは150万ドル(約1億6000万円)の自己資本が必要で、マクドナルドはそれよりも低い50万ドル(約5500万円)となっています。この中で、なぜか「0」と表示されているのがChick-fil-A(チックフィレイ)です。
そして、上記の自己資本があり、フランチャイズに加盟する……となったときに、加盟側(フランチャイジー)がまず行うのはフランチャイズの加盟料を払うことです。加盟料もブランドによってさまざまですが、平均して3万ドル(約330万円)で、ジャック・イン・ザ・ボックスの5万ドル(約550万円)からサブウェイの1万5000ドル(約160万円)まで多岐にわたります。ここでも、チックフィレイの隣には1万ドル(100万円)という異様に低い額が表示されています。
加盟料に加えて、フランチャイジーは不動産・建築・機器・在庫など、新たにお店をオープンさせるための費用について負担します。このような初期投資総額は「モールの中に作るか」「ドライブインにするか」といった店舗のタイプや、店舗を持つ場所によって大きく異なります。平均すると、ファーストフードのフランチャイズをオープンさせるための費用は77万7000ドル(約8500万円)から190万ドル(約2億1000万円)ほどとのこと。
以下がブランド別の初期投資総額の幅を可視化したものとなっています。先ほどからずっとグラフの最下部に名前が表示されているチックフィレイは、ここでも初期投資総額も1万ドルという、異様なまでに低い額となっています。
一方、フランチャイジーにはオープン後、売上げの一部をブランドに支払うロイヤリティが発生しますが、ほかのブランドが4~5%という割合なのに対し、チックフィレイだけは15%となっています。
ここからわかるように、チックフィレイは新しいお店を出すときに不動産・設備・在庫といった全ての費用をブランド側が支払い、その代わりに売上げの多くを取るという形。ケンタッキーと比較すると、ケンタッキーのロイヤリティが5%なのに対し、チックフィレイは売上げの15%、純利益の50%もを本部に支払わなければなりません。
by Michael Saechang
さらに、チックフィレイはフランチャイズの申し込みが年間6万人なのに対し、実際にお店を持てるのは80人ほどだそうです。これは合格率にすると0.13%という狭い門で、スタンフォード大学の合格率である4.8%や、Googleの合格率である0.23%よりもずっと低い数字になります。
たとえば、チックフィレイのフランチャイジーになった1人は、10回の面接を受け、小論文を12回書き、高校の成績証明書のコピーを提出したとのこと。そしてオペレーターとして選ばれた後には「何週間にもわたる広範なトレーニング」を受ける必要があったそうです。チックフィレイの場合、オペレーターの自己資本額などはあまり関係なく、地元のコミュニティにどれほど密着しているのかが着目されます。またチックフィレイの広報担当者は、「チックフィレイは日々の仕事に意欲的である人を重視する」と語っています。
チックフィレイのフランチャイジーは、レストランや機器の所有権を持たず、事業に出資せず、他の事業を営むことはできないため、「投資」という観点からみるとあまり魅力的とはいえないとのこと。チックフィレイのオペレーターはお店の所有権を持たず管理職に従事するだけであり、本質的には真のフランチャイジーとはいえない側面もあると、Crockett氏は指摘しています。
一方で、複数のフランチャイズを所有している人を除き、食品のフランチャイジーが多くの利益を得るのは難しいという現実があります。フランチャイズビジネスレビューの調査によると、食品のフランチャイジーのうち51%は収入が年間5万ドル(約550万円)未満であり、25万ドル(約2700万円)以上を得ているのはわずか7%です。食品関係は特に競争が厳しく、業界の中でも高い投資レベルを求められ、失敗率が高く、マージンが低いことで知られています。チックフィレイの場合、初期投資額の低さなどによってこのようなリスクは軽減されますが、それゆえに所有権を失う仕組みになっているわけです。
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