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マクドナルドの強大帝国を作り上げているのはハンバーガー販売ビジネスだけではない

By Mike Mozart

世界最大のファストフードチェーンであるマクドナルドのビジネスは「ハンバーガーショップ」であることは間違いない事実ではあるのですが、一方で、実際にマクドナルドの本部が得ている利益の多くはハンバーガーの販売以外の部分であり、「世界でも有数の不動産デベロッパ」であるという実態があります。

Mcdonald's Real Estate: How They Really Make Their Money - Wall Street Survivor Blog
http://blog.wallstreetsurvivor.com/2015/10/08/mcdonalds-beyond-the-burger/

モーリスとリチャードのマクドナルド兄弟が創業したドライブインレストラン「McDonald's」は、ハンバーガー作りをシステム化して効率よく誰でもできる仕組みを作り上げました。そのシステムの巧みさに魅せられてマクドナルド兄弟を説得し、後には自らがオーナーとなってマクドナルドを世界最大のフードチェーンに仕立て上げたレイ・クロック氏は、「フランチャイズ事業」をマクドナルド発展の重要な骨組みとして捉えていました。

そのビジネスの最も重要な部分は、「店で出すハンバーガーの材料を卸してマージンを得る」というものではなく、その多くの部分は不動産に関するものであることはよく知られているところ。かつてマクドナルドでCFO(最高財務責任者を務めたハリー・J・ソナボーン氏は以前、「正確に言えばマクドナルドはフードビジネスではない。実際には不動産ビジネスである。我々が50セントのハンバーガーを売るのは、テナントが賃料を支払うことで我々が利益を生むための原動力となっているからである」と過去に語っています。

By Thomas

フランチャイズ方式は、少ない投資額で事業を拡大できる方式の1つであり、クロック氏は商品のコントロールを保ったまま企業規模を拡大する方式を確立させています。マクドナルドでは、フランチャイズ店に食材を卸したり、巨額のロイヤルティを請求することで利益をあげる方法ではなく、フランチャイズ店舗の家主となるという方法を選択しています。マクドナルドの本部は店舗物件を自ら所有して、フランチャイジーに利益を載せた賃料でリースすることで、その利益の大半を稼いでいます。また、それら店舗ごとの売上全体に対するロイヤルティを一定の割合で徴収する仕組みを取り入れています。

マクドナルドが売上を得るにおいては、子会社による店舗物件の売買と、フランチャイズ店舗からの賃料を徴収するという2つの大きな柱が存在しています。マクドナルドは世界100か国以上に店舗を持ち、年間で1000億食以上のハンバーガーが提供されているとみられます。2015年時点では全世界で3万6000店舗あるというマクドナルドの店舗のうち、わずか15%が直営店であり、残りは全てフランチャイジーによって運営されている店舗となっています。

By alexlinder

2014年のデータによると、マクドナルド全体での2014年12月通期の売上額は274億ドル(約3兆2400億円)で、そのうちフランチャイズ事業からの売上高は92億ドル(約1兆1000億円)で全体の約33%。残りの182億ドル(約2兆1400億円)は直営事業からの売上ということになり、この段階での比率は直営店が全体の3分の2を占める状態となっています。

しかしこれを「利益率」の観点から見ると状況は大きく変化します。コストを自ら負担する直営店よりもフランチャイズ店舗から集まる売上のほうが利益が多く残ることは予想に難くないわけですが、マクドナルドの場合、直営店の利益率は16%であるのに対し、フランチャイズ事業の利益率は82%にものぼるとのこと。

これを先ほどの売上高に掛けてみると、直営店の売り上げから残る利益は182億ドル×16%=約29億ドル(約3500億円)となります。その一方、フランチャイズ事業からは92億ドル×82%=約76億ドル(約8900億円)と、利益全体の70%以上が生みだされていることがわかり、「マクドナルドは不動産ビジネスである」という言葉を強く実感することができるはず。2014年は全世界的にマクドナルドの売り上げが落ち込んだ年だったのですが、ハンバーガーの売り上げ実績の影響をさほど受けないフランチャイズ事業の売上は堅調だったことから、この時に株主からフランチャイズ事業を本体から切り離して独立させるべきだという圧力がかかったのも納得できる内容です。

By GasFan_Canada

この例からも感じられるように、企業の収益体制を多様化することはリスク管理の観点において大きな意味を持ちます。本業のハンバーガービジネスに比率を置きすぎると、売上の減少が起こった際にその影響をまともに受けることになります。そこで、実際の売上の影響から分離された「のれん代」が確実に見込めるフランチャイズ事業を大きな柱としておくことで、実際の売上の変動をここで吸収することが可能になります。

しかし一方で、利益率の高さに惹かれてフランチャイズ事業に注力しすぎることも別のリスクにつながります。フランチャイジーはあくまで契約事業者であるため、ある時点で契約の終了を突きつけられることが当然起こります。そのため、直営店とフランチャイズ店の比率を分散させ、利益とリスクのバランスをうまく確保することが安定的な事業運営のためには重要である、という実にシンプルな鉄則がマクドナルドの例から浮き彫りになってきています。

By Rian Castillo

ちなみに、一代でマクドナルド帝国を築いたレイ・クロック氏に関しては2016年に映画「The Founder」が公開されており、マクドナルド兄弟との攻防を含めたやりとりが描かれています。

「マクドナルド」はどうやって世界最大のファストフードチェーンになったのか?を描く映画「The Founder」予告編 - GIGAZINE

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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