スタートアップのアイデアに見切りをつける判断基準とは？

By tommyandone

ベンチャー企業のサポートや、新しいビジネスの検証を行う企業、PSLで、アイデア検証を担当するペーター・デントン氏が、広告費用や競合企業などの判断基準から、どのようにしてスタートアップのアイデアに見切りをつけているのかを実例で紹介しています。

PSL Studio Kill：Xylo｜Features
https://www.psl.com/feed-posts/psl-studio-kill-xylo

デントン氏によると、PSLではテストした10個のアイデアのうち9個は却下しているとのこと。デントン氏らが考案したアイデアの一つに「Xylo」という、音楽教育のために教師と生徒をマッチングするオンラインプラットフォームがありました。

デントン氏はXyloの検証に1週間を費やし、「却下すべき」という結論に至ったとのこと。原因の1つは、Googleの見積もりツールによって導き出された結果と、実際の利益との大きな差でした。

デントン氏は、「Xyloはレッスンの予約から収益の一部を得るマーケットプレイス事業である」という前提で検証を行いました。「ギター レッスン」や「ピアノ レッスン」といった音楽のレッスンに関する単語から、Google Adsにおける広告のコストやアクセス数をGoogleの見積もりツールで計算したところ、「四半期でアメリカ全体から約3万6000のアクセスがあり、費用は8万4591ドル(約926万6800円)になる」という結果が得られました。見積もりによると、クリック率(CTR)の平均は4％で、クリック単価(CPC)は平均2.33ドル(約260円)となっていました。

上記の結果を踏まえて、デントン氏はGoogleとFacebookの両方で、広告の実際のアクセス数を確認するため、3種類の広告を表示させるテストを行いました。結果はGoogleの見積もりよりも悪くなっており、デントン氏はこの結果を「広告とオーガニック検索の競合」が原因であると推測しています。

Facebookでのクリック率(CTR)は「Tech Enabled」という広告が最高で0.68％で、クリック単価(CPC)は平均3.75ドル(約410円)という値を示しました。

以下の画像が「Tech Enabled」の広告。

Googleでも同様に、以下の3種類の広告を表示させましたが、CTRは0.65％にとどまりました。

デントン氏は、Googleの見積もりによるモデルと、独自に調査したCTRの結果を踏まえて、以下の目標到達プロセスを設定しました。

・約90万件の検索のうちCTR3％(約2万7360人の訪問者)を獲得する。
・20％(約5400件)のコンバージョン(ランディングページで「サインアップ」をクリックする人)を獲得する。
・そのうち約10％(約600人)のユーザーが有料会員になる。

広告から600人の顧客を見込みましたが、600人の顧客がそれぞれ3つのレッスンを受け、1時間あたり60ドル(約6500円)の料金から20％のコミッションを得たとしても、売上は2万1600ドル(約236万5800円)になります。Googleの見積もりから約8万ドルの広告費用がかかると推定されるため、Xyloの運営は赤字と見なされました。

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市場規模については、音楽指導者のための情報を提供するウェブサイト、MakeMusicによる推計では、アメリカの音楽教育者は10万人程度とされています。しかし、競合する企業によって、TakeLessonsやYousicianなど、既に優れたサービスや有名なサービスが提供されていることと、完全に無料のサービスとして、YouTubeで何千人ものギターインストラクターが様々な音楽教育を行っている点も原因となり、デントン氏は「Xyloは見切りをつけるべき」という結論に至りました。

また、Google Adsの広告を見たユーザーのうち、アクセスに至るユーザーは約30％とされており、デントン氏は「音楽教育の分野で競争している有能な中小企業は山ほどありますが、Googleのような仲介者が必要かどうかはわかりません」と語っています。

By bialasiewicz

なお、Xyloは完全に頓挫したわけではなく、手頃な価格で使いやすく、あらゆるジャンル、言語に対応し、多くのプラットフォーム上で使用できるという強みがあることから、デントン氏は同僚から意見を募り、運営の改善に向けた取り組みを行っています。