サイエンス

世界最強クラスの中性子ビームで「ビールの完璧な泡立たせ方」が解明されるかもしれない

by manfredrichter

洗剤やビールの表面に浮かぶは成分や大きさによって性質が異なり、昔から多くの科学者によって研究されています。そんな泡を、世界最強クラスの中性子ビームを使って解析するという研究方法をイギリスの科学者が提案。「科学的に完璧なビールの泡立たせ方が解き明かされるかもしれない」と期待されています。

New structural approach to rationalize the foam film stability of oppositely charged polyelectrolyte/surfactant mixtures - Chemical Communications (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2020/CC/C9CC08470C


Cheers! Scientists take big step towards making the perfect head of beer
https://www.manchester.ac.uk/discover/news/cheers-scientists-take-big-step-towards-making-the-perfect-head-of-beer/


マンチェスター大学の主任研究者であるリチャード・キャンベル博士は、高分子電解質界面活性剤を混ぜ合わせた液体を使って、泡の研究を行っています。この「高分子電解質と界面活性剤を混ぜ合わせた液体」とは市販のシャンプーに近い液体で、非常に泡立ちやすいという特徴があります。

by jackmac34

キャンベル博士は、「中性子スピンエコー法」で泡を解析する方法を提案しました。中性子スピンエコー法について、キャンベル博士は「物体に反射した光を認識することで私たちが物体を見ることができるように、中性子を発射して液体に反射させ、その結果をコンピューターで解析することで、泡の表面に関するさまざまな情報が明らかになります。中性子を反射させて判明する情報は分子レベルのものであり、肉眼では見ることができません」と解説しています。

そして、キャンベル博士は泡に中性子ビームを照射するため、フランスにあるラウエ・ランジュバン研究所に協力を依頼しました。ラウエ・ランジュバン研究所には最強クラスの超冷中性子源があり、世界各国の研究で応用されています。

「何十年もの間、科学者は『混合添加物を含む液体から作られた泡の寿命と安定性』をどうすれば確実に制御できるのかを解明しようとしてきました」とキャンベル博士。これまでの研究では「長持ちする泡を作るのはどんな成分の液体なのか」という点は研究されていたものの、「長持ちする泡の表面で分子がどのように運動しているのか」という部分はほとんど着目されていなかったとのこと。

「中性子ビームを使って泡表面の分子運動を観察することで、どんな泡が安定するのか、泡を長続きさせるためにはどうすればいいのかを理解できるようになるでしょう」とキャンベル博士は主張しています。

by webkinzluva1598

キャンベル博士が考案した研究方法は液体に生じる泡全般を分析できるため、毎日使うシャンプーやコーヒーに入れるクリーム、消火剤、環境災害に対処するために使われる吸油材の研究開発にも応用可能。マンチェスター大学は「(キャンベル博士の研究は)ビールの泡の完璧な作り方を解明する大きな一歩を踏み出しました。酒飲みはすぐにバーに行って応援し、研究チームに感謝するでしょう」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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