サイエンス

「缶入りの炭酸飲料を指ではじくと噴き出さない裏技」が科学的に否定される

by Alex Geerts

「炭酸飲料入りの缶を振っても、側面を指で軽くたたくと泡が噴出しない」という俗説が存在しますが、デンマークの研究者らが1000本の缶ビールを振りまくった実験結果から、「缶の側面をたたいても意味がない」ことが明らかになりました。

To beer or not to beer: does tapping beer cans prevent beer loss? A randomised controlled trial.
(PDFファイル)https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1912/1912.01999.pdf

Attention! Very important s cience: Tapping a can of fizzy beer does... absolutely nothing • The Register
https://www.theregister.co.uk/2019/12/13/science_solves_shaken_beer_conundrum/

ビールや炭酸飲料には二酸化炭素が溶け込んでおり、これにより生じる炭酸が開封時に気泡となることで、グラスに注いだときに現れる泡や刺激のある喉越しが生み出されます。しかし、開封前の炭酸飲料が入った缶やペットボトルに強い振動が加わると、缶の中で炭酸が気泡になり、開封時の気圧差で中身が噴き出してしまう原因となります。この時、缶の中で発生した気泡は缶の側面に付着すると考えられていることから「缶の側面を軽くたたいて気泡を液面に移動させ、開封時に中身と同時に噴き出すのを防ぐ」という裏技が考案されました。

以下は「缶の側面をたたく」裏技のメカニズムを図解したもの。上の「裏技をしない」ケースでは、缶の側面に付着した泡が中身と同時に噴き出してますが、下の「裏技をした」ケースでは、泡が缶の上部に移動しているため、缶が開いても泡しか噴き出ていません。

by Chris Hamlett

しかし、この裏技は科学的に検証されたことがなかったため、南デンマーク大学で健康経済学を研究しているエリザベータ・ソピナ氏らの研究グループは、実際に缶ビールを振る実験を行ってみることにしました。研究グループはまず、デンマークのビール製造会社カールスバーグの厚意により、330ml入りの缶ビール1000本を調達し、「振っていない・たたかなかった」「振っていない・たたいた」「振った・たたかなかった」「振った・たたいた」の4グループに分類。振るグループの缶ビールを2分間にわたって振った後、たたくグループの缶の側面を1本の指で合計3回たたきました。そして、開封時に缶から噴き出したビールをタオルペーパーに吸収させるとともに、缶を開ける前と開けた後の缶の重さを比較し、各グループの中身の損失量を算出しました。


以下の図は、左から「振っていない・たたかなかった」「振っていない・たたいた」「振った・たたかなかった」「振った・たたいた」の各グループにおけるビールの損失量を表したグラフです。赤枠のうち左の「振った・たたかなかった」グループと、裏技を行った「振った・たたいた」グループの結果を見比べてもほとんど差がないことがわかります。


研究グループは、「缶をたたいても、たたかなかったグループとの間に統計的に有意な差はありませんでした。この結果は、振った缶の側面をたたいても、ビールの損失を防ぐことはできないことを意味しています。振った缶ビールが噴き出すのを防ぐ唯一の解決策は、泡が落ち着くまで待つことです」と結論付けました。なお、実験に使用された1000本の缶ビールの一部は研究者らによって消費され、残りは「暑い金曜日の終わりに喉を乾かせていた」大学生らに振る舞われたとのことです。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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