大気汚染の悪化は暴力犯罪の増加と相関しているとの研究結果

by Ion Ceban @ionelceban

大気汚染は呼吸器などの病気を引き起こすことが知られているほか、人々の知能を低下させることもわかっています。コロラド州立大学の研究チームが行った研究により、新たに「大気汚染の悪化が暴力犯罪の発生件数増加に相関している」ことが判明しました。

The effect of pollution on crime: Evidence from data on particulate matter and ozone - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0095069619301901?dgcid=raven_sd_aip_email

Exposure to air pollution increases violent crime rates, study finds | College of Agricultural Sciences | SOURCE | Colorado State University
https://agsci.source.colostate.edu/exposure-to-air-pollution-increases-violent-crime-rates-study-finds/

今回の研究を行ったのは、コロラド州立大学の農業・資源経済学部准教授であるJesse Burkhardt氏、同学部講師のJude Bayham氏、統計学科准教授のAnder Wilson氏、および土木工学や大気汚染の専門家らで構成された研究チームです。

研究チームはFBIが管理する犯罪関連データベースであるNational Incident-Based Reporting Systemと、アメリカ合衆国環境保護庁によって観測された2006年～2013年の群レベルの大気汚染データ、アメリカ海洋大気庁のハザードマッピングシステムが提供する衛星画像からの山火事の煙汚染データという、3つの詳細なデータセットをクロス分析しました。

大気汚染と犯罪との関連性について分析した結果、大気中の微小粒子状物質(PM2.5)をはじめとする汚染物質の増加に伴い、FBIの分類で「暴力的犯罪」とみなされる犯罪の発生率が増加することが判明。たとえば、PM2.5の量が1立方メートルあたり10マイクログラム増加すると、暴力的犯罪の発生率は1.4％増加し、大気汚染物質である光化学オキシダントの主成分であるオゾン濃度が0.01ppm増加することで、暴力的犯罪が0.97％増加すると研究チームは述べています。

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その一方で、大気汚染によって発生する割合が増加するのは暴力的犯罪のみであり、窃盗など他のカテゴリーに分類される犯罪は増加しませんでした。Bayham氏は今回の結果について、大気汚染によって増加するのは単に暴力的な行為だけではなく、誰かを傷つける発言や暴言なども増加する可能性があると指摘。「より多くの汚染にさらされると、人々はわずかに攻撃的になるため、口論がエスカレートするかもしれません」と、Bayham氏は述べています。

研究チームが大気汚染データと犯罪データを重ね合わせるために使用したツールは、もともと大気汚染の健康被害を研究するために開発されたもの。ツールの開発者らは、煙やPM2.5が呼吸器疾患の入院やぜんそく吸入器の需要とどのように相関するのかを測定しましたが、Burkhardt氏はこの分析ツールの開発者と会って、煙を吸うことで人々の行動がどのように変化するのかを調査したいと考えたとのこと。

「数年前、私の住むフォートコリンズは非常に厳しい山火事を経験しました。山火事による煙はとてもひどく、私は数日でイライラし始めました。そして、大気汚染によるフラストレーションと攻撃性の増加が犯罪データの統計に表れるのかどうか、疑問に思ったのです」と、Burkhardt氏は述べました。

今回の研究は、あくまでも大気汚染と犯罪発生率の相関関係について明らかにしただけであり、研究チームは大気汚染が人々の行動に及ぼす生理学的・機械学的関係については言及していません。それでも、エコノミストの計算では1日のPM2.5を10％削減することで、犯罪に関連する政府の支出を140億ドル(約1兆5000億円)も削減できるとのことで、これは「今まで見過ごされてきた大気汚染のコスト」だと研究チームは主張しました。

by geralt