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アニメ映画「HUMAN LOST 人間失格」本編冒頭7分公開、太宰治の「人間失格」をSFアクションに振り切るとこうなる


太宰治の小説「人間失格」を再構築して制作された劇場アニメ「HUMAN LOST 人間失格」の本編冒頭7分の映像がYouTubeで公開されました。「人間失格」の映像化は何度か行われていますが、本作の舞台は「昭和111年」と根本から設定が変更されています。この冒頭7分を見れば、大庭葉藏や美子、堀木といった、原案にも登場する人物がいる一方で、ハチャメチャに突き抜けた作品であることがよくわかります。

【全人間、失格】11月29日公開 劇場アニメ「HUMAN LOST 人間失格」本編冒頭7分映像 主演:宮野真守 - YouTube


夜空に向かって突き出された両手に握りしめられている刀


「恥の多い生涯を送ってきました」とつぶやく大庭葉藏。一体、なぜこんなことになっているのか。


昭和111年の東京。ビル街の中央で淡い光を帯びているのは「S.H.E.L.L.(シェル)」、国民の健康を管理し無病長寿を保障する国家機関。


S.H.E.L.L.の広報官・柊美子により、医師を必要としない社会になってから半世紀経過していること、平均限界寿命120歳を突破した第1世代を祝うための記念式典「合格式」がまもなく執り行われることがアナウンスされています。


しかし「無病長寿大国」だというのに、会社帰りの人々はみんな大仰なガスマスクを装着していて、とても健康な社会には見えません。


しかも、この帰宅ラッシュの高田馬場駅は午前3時39分……。


そして不穏さを感じさせる、血まみれの手。


万能医療ナノマシン(GRMP=グランプ)を投与されていることから、全国民が「ヒューマン・ネットワーク」で接続されているので、監視していると「ヒューマン・ネットワーク」から外れようとしている個人の存在を発見できます。


ネットワークから外れてしまうことは「ヒューマン・ロスト」現象と呼ばれています。


「ヒューマン・ロスト」に見舞われた人は、グランプが基準を失い、異形の怪物「ロスト体」になってしまいます。


「ヒューマン・ロスト」現象やロスト体の存在は公表されておらず、ちまたでは都市伝説化しています。


と、ここまでの7分で、本作が「人間失格」の要素をわずかに踏まえつつも、独自のSF設定を多数盛り込んで展開するアクションものであることがわかるはずです。

主人公・葉藏。死を克服してしまった「無病長寿大国」において、生きる意味が見いだせず、自堕落な生活を送っている青年。位置づけは原案である太宰治の「人間失格」の時と大きく離れているわけではないのですが、放り込まれた世界がまったく異なるため、彼が経験する運命は小説以上に数奇なものとなっていきます。小説の「人間失格」では多くの人の共感を呼ぶような人物像ではありませんでしたが、「全人間、失格」と銘打たれた本作では、むしろ翻弄される葉藏に共感するところも出てくるかも。演じるのは「機動戦士ガンダム00」刹那・F・セイエイ役や「銀河英雄伝説 Die Neue These」ラインハルト・フォン・ローエングラム役など作品の主要キャラクターを多数演じるほか、「文豪ストレイドッグス」では「人間失格」の著者・太宰治役を担当している宮野真守さん。


小説ではたばこ屋の看板娘として登場し、いっとき荒んだ空気の清涼剤となる美子は、S.H.E.L.L.の広報官であると同時に、ヒューマン・ロストに対抗する国家機関“ヒラメ”の隊員でもあります。葉藏に関わる女性の1人であり、その運命を大きく左右する存在でもある……と、要素を抜き出すと小説とかなり似た位置づけですが、ヒラメにおいても重要な人物であり、存在感が小説よりも大きく増しています。演じるのは「PSYCHO-PASS サイコパス」常守朱役や「ゼーガペイン」カミナギ・リョーコ役、「〈物語〉シリーズ」千石撫子役などを担当している花澤香菜さん。


小説では悪友の堀木は、S.H.E.L.L.による健康管理に反発する暴走集団に知恵を貸す立場で登場。暴走集団のリーダー・竹一が葉藏の友人でもあることから、葉藏と接点を持ちます。「無病長寿」を実現する社会システムに対して人間が失格してしまったと考える人物。声の担当は「おそ松さん」松野おそ松役、「コードギアス 反逆のルルーシュ」枢木スザク役、「FINAL FANTASY Ⅶ ADVENT CHILDREN」クラウド役などで知られる櫻井孝宏さん。


「人間失格」でありつつも大きく様変わりした本作のストーリー原案・脚本を担当したのは、小説「天地明察」「光圀伝」「マルドゥック・スクランブル」やアニメ「蒼穹のファフナー」「ヒロイック・エイジ」などで知られる小説家・脚本家の冲方(うぶかた)(とう)さん。「攻殻機動隊ARISE」などでも脚本を担当しており、「近未来」的な世界で社会問題を扱うと同時に、重厚さの一方でエンタメとして楽しめる作品を構築することにかけては定評があります。

そして、監督は「バジリスク~甲賀忍法帖~」「アフロサムライ」「BEYONETTA BLOODYFATE」の木崎文智さんが担当。アニメーターとしても活躍する監督であり、見ていてワクワクするようなアクションや演出を見せてくれる人物です。

小説「人間失格」を知っていれば、ベースが大きく変わる中でキャラクターの名前以外にどういった要素が残されているのかというのも楽しめる部分ですが、一方で、「人間失格」を一切読んだことがなくても、SFアクションものとして楽しめるというのが本作の特徴。「死がない」社会とは健全なのだろうか……などと考えさせられる部分もありますが、そういったことを一切横に置いておいて、バトル部分だけに着目して「ウヒョー!!」の楽しむのももちろんアリ。メイン予告編を見れば、かなりアクション方向で振り切った作品なのが伝わるはずです。

【全人間、失格】11月29日公開 劇場アニメ「HUMAN LOST 人間失格」Official Main Trailer 主演:宮野真守 - YouTube

©2019 HUMAN LOST Project

なお、木崎文智監督と冲方丁さんへのインタビューも実施したので、そちらも読んでみてください。

・つづく
「HUMAN LOST 人間失格」木﨑文智監督&冲方丁さんインタビュー、太宰治の小説からSFダークヒーローものがどのように生み出されたのか? - GIGAZINE

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in 動画,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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