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ヘイトスピーチは「言論の自由」で守られるべきなのか?

by terimakasih0

一部の国家では学問の自由が制限され、国の方針に反する研究ができないようになっています。学問の自由・言論の自由を制限することは、人の思想が学問の追究を阻害するため民主主義において危険視されてていますが、一方で全ての自由を許容してしまうことにも問題があります。人の人種や民族、性別などに基づいて攻撃を行うヘイトスピーチは言論の自由として許容されるべきなのか、チャールズ・スタート大学政治学准教授のドミニク・オサリバン氏が論じています。

There are differences between free speech, hate speech and academic freedom – and they matter
https://theconversation.com/there-are-differences-between-free-speech-hate-speech-and-academic-freedom-and-they-matter-124764

2019年10月はじめ、オークランド工科大学に貼られたあるポスターやステッカーが議論をかもしました。何者かに貼られたこのポスターは「我々の国の支配を取り戻そう」といった「反差別」に真っ向から対抗するメッセージが書かれていました。このポスターに抗議するため1300人の学生や教師陣が「大学の中に白人至上主義や人種差別を主張する場は大学に存在しない」とする公開状に署名し、当初「ポスターを剥がす正当性がない」という見解を示していた副学長代理に異議を唱えました。

これを受けて副学長代理は「最も重要なのは、白人至上主義的なものの見方を受けて大学に属する一部の人々が脅威を感じていることであり、当面の間は言論の自由に関する議論は脇に置きます」と意見を変えました。


オークランド工科大学の一件は、誰もが検閲を受けることなく自由に思想・良心を表明できるとする言論の自由と、ヘイトスピーチの関係を問うものです。

言論の自由や学問の自由は、その内容を問いません。理由や客観性を問わず、情報の正確さや、意見の良し悪しを問われません。そしていずれも、民主主義にとっては必要不可欠です。

大学において、意見を表明したり、その意見に反論するためには言論の自由が重要になります。言論の自由が保障されているからこそ、国や大学についての批判を授業や研究の一環である論文に書くことも可能になります。それゆえに、言論の自由を制限することについては、非常に慎重になる必要があります。自由に考えることができなければ、学問を追究することはできません。しかし、学問は「確かな情報を得ていること」「理性的であること」といった点をクリアし、第三者からアイデアを精査されない限り、進歩しないのも確かです。

このため学問を追究する大学の場合、「理性的かどうか」の精査はレベルが高いものになります。自分の好むもの全てを「学問の自由」と呼べるわけではありません。オークランド工科大学の一件を受けて、ニュージーランドの法務大臣であるアンドリュー・リトル氏は「白人至上主義を守ることを意図した言論の自由は存在しない」と発言しました。

by Vasily Koloda

リトル氏の言葉からわかるように、言論の自由・学問の自由を制限する要素がヘイトスピーチです。

国連によると、ヘイトスピーチの定義は以下の通り。

「個人やグループが『彼らであること』、つまり宗教・民族・国籍・人種・血統・性別・アイデンティティ要素に基づいて攻撃されること、および軽蔑的・差別的な言葉を使うスピーチ、文書、行動などを含むあらゆるコミュニケーション」


オークランド工科大学に貼られたポスターが「我々の国の支配を取り戻そう」と主張し「反差別」に対抗する時、主張を行っている人物は、相手の言論の自由や学問の自由を奪い、民主主義から排除することを望んでいることになります。ある種の人々の人権を否定する差別は、民主社会において看過できないことです。

このためオーストラリアでは、言論の自由は「Racial Discrimination Act 1975」で制限されています。これに対し2014年、ある弁護士が上記の法律が「偏見を持つ自由」に理不尽な制約を課していることを主張しました。また2018年に発表された調査では、大学における言論の自由が近年は急激に削減されていることが指摘されています。一方で、(PDFファイル)オーストラリア政府が委託した調査からは、言論の自由に関する危機は大学に訪れていないという結果が示されらとのことです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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