肺に脂肪がついてぜん息が起こる可能性が示される
by Wadams
肥満は糖尿病や高尿酸血症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などさまざまな病気をまねく要因となります。また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「肥満はぜん息のリスクも高める」と報告しています。これは脂肪によって肺に過剰な負荷がかかったり、炎症が起きやすくなったりすることが原因と考えられていましたが、脂肪が肺や気道にたまることでぜん息が起こる可能性が西オーストラリア大学の研究者によって示唆されています。
Fatty Airways: Implications for Obstructive Disease | European Respiratory Society
https://erj.ersjournals.com/content/early/2019/09/02/13993003.00857-2019
For The First Time, Scientists Find Fat Can Clog Lungs And Airways, Not Just Your Heart
https://www.sciencealert.com/for-the-first-time-scientists-show-fat-can-build-up-in-your-lungs-and-airways-not-just-your-heart
西オーストラリア大学の研究者は、故人51人分の肺組織サンプルおよそ1400点を観察。52人のうち、ぜん息が原因で亡くなったのが16人、ぜん息を患っていたが他の原因で亡くなったのが21人、ぜん息を患った経歴がないのが15人だったとのこと。
すると、サンプルの中から脂肪細胞が肺や気道壁に蓄積しているケースが発見されました。以下の画像はサンプルの顕微鏡写真の1つ。点線部分は外気道壁(Outer airway wall)の断面ですが、その下半分に丸い粒のようなAdipose cells(脂肪細胞)が密集しているのが見てわかります。
また、気道壁に脂肪が蓄積している量は被験者のBMIだけでなく、被験者の好中球と好酸球の数とも相関関係があったとのこと。好中球と好酸球は白血球の一種で、増加すると炎症を起こしやすくなり、ぜん息の原因にもなります。このことから研究チームは「過体重による脂肪組織の蓄積は、気道の病態生理に関係する可能性があります」と論じています。
西オーストラリア大学の生理学者であるピーター・ノーブル氏は「過剰な脂肪が気道の壁に蓄積し、空間を占有して肺内の炎症を増大させることがわかりました。これが気道の肥厚を引き起こし、肺への空気の出入りを制限するため、喘息の症状が加速しているのではないかと考えられています」と語りました。
ただし、「なぜ気道に脂肪細胞が蓄積するのか」という詳しいメカニズムは明らかになっていません。また、今回の研究対象は52人でしたが、より多くの人を対象にしたさらなる研究の必要性を研究チームは訴えています。
ヨーロッパ呼吸器学会の会長であるティエリー・トルースターズ氏は「これは『肥満患者が活動と運動でより多くの呼吸をする必要がある』という単純な観察を超えています」と研究を評価し、「これは体重と呼吸器疾患との関係に関する重要な知見であり、過体重や肥満が喘息患者の症状を悪化させる可能性があることを示しています」とコメントしました。
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