肥満は4つのタイプに分類可能、タイプ別の特徴や傾向とは?
生活習慣の乱れや暴飲暴食は肥満をもたらし、さまざまな合併症のもととなります。多くの場合、普段の生活を見直し、適度に運動を行うことで肥満は解消されますが、外科手術によって胃の容量を制限して物理的に肥満対策を行う「減量手術」という手段がとられることも。ブラウン大学の研究チームが、肥満に悩み減量手術を受けた人のデータを分析し、肥満は主に4つのタイプに分類されるという論文を発表しています。
Association of Obesity Subtypes in the Longitudinal Assessment of Bariatric Surgery Study and 3‐Year Postoperative Weight Change - Field - - Obesity - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/oby.22287
Weight-loss surgery data reveals 4 types of obesity - Futurity
https://www.futurity.org/obesity-weight-loss-surgery-1912092-2/
肥満治療の1つである減量手術(肥満外科手術)は、糖尿病や心臓病などの肥満がもたらす合併症を予防、あるいは改善するために行われる外科手術。その手法はさまざまで、胃を小さく切り取って小腸とつなげてしまう「ルーワイ胃バイパス手術」や、胃にバンドを巻き付けて食事摂取量を制限する「胃バンディング手術」などがあります。
ブラウン大学の疫学教授であるAlison Field氏率いる研究チームが、減量手術を受けた2456人の肥満患者のデータを分析したところ、肥満患者を4つのグループに分類することができ、グループごとに食事行動・糖尿病の発症率・手術後3年間の体重減少などが大きく異なることが確認されました。
研究チームによると、肥満患者は、いわゆる「善玉コレステロール」である高密度リポタンパク質(HDL)が低い「クラス1」、不規則な食事を行う「クラス2」、クラス1とクラス2の特徴を同時に併せ持つ「クラス3」、そして幼少時から肥満に悩まされていた「クラス4」という4つに分けられたとのこと。
by Sandra Cohen-Rose and Colin Rose
低HDLのクラス1に属する肥満患者は2456人中91人で、男女比はおよそ4:6。空腹時血糖値の平均は基準値の倍以上となる246.5と非常に高く、クラス1全体の97.8%は2型糖尿病を患っていたとのこと。また、血中の中性脂肪量を示すトリグリセリド(TG)の平均も249と、基準上限値の150を大きく上回る値を記録しています。
一方、不規則な食事で肥満になってしまったクラス2の患者は、嘔吐(おうと)や下剤も使わず、食べ物をひたすら食べ続けてしまう過食性障害(BED)に悩まされている人々がほとんど。クラス2に分類された肥満患者は2946人中892人ですが、血糖値やTGの平均は基準値内に収まっていて、2型糖尿病を患う患者の割合は全体の27.1%と、クラス1に比べると低いことがわかりました。また、男女比はおよそ2:8と、クラス2に分類された肥満患者は女性が圧倒的多数を占めました。加えて、全体の90%以上が「空腹でなくても食べ物を口にする」と答え、60%以上の人が「食事のコントロールができない」と自覚していたとのこと。
低HDLでかつ不規則な食事を行うクラス3の患者は2456人中1108人。2型糖尿病患者の割合が31.2%で男女比もおよそ2:8と、一見するとクラス2とあまり違いがないように思われます。しかし、クラス2と違って摂食をコントロールできていないというわけではなく、「空腹でなくても食べ物を口にする」と答えた人はわずか7%ほどにとどまったそうです。
幼少期から肥満体を抱えるクラス4の患者は2456人中365人で、平均BMIが他のクラスではおよそ45だったのに対して、58.3という極めて高い数値を算出しました。また、41.8%のクラス4患者が一日4食とスナックを欠かさないことも判明しました。
減量手術を受けた後3年間の平均体重推移をパーセンテージで示したものが以下のグラフ。グラフ(a)がルーワイ胃バイパス手術を受けた男性、グラフ(b)がルーワイ胃バイパス手術を受けた女性、グラフ(c)が胃バンディング手術を受けた男性、グラフ(d)が胃バンディング手術を受けた女性のもの。青がクラス1、赤がクラス2、緑がクラス3、茶色がクラス4のもの。どのグラフを見ても、赤のクラス2と緑のクラス3で減量手術の効果が高いことがわかります。
Field氏は、これまでの研究では少なくとも肥満には5つの分類型が存在する可能性が示唆されてきていましたが、実際に肥満の分類を特定することに焦点をあてた大きな研究はなかったと述べ、これらのグループの患者を特定してその特徴を理解することは肥満の研究と治療に役立つと主張しています。特に、肥満治療の最終手段である減量手術で恩恵を受けるのかそうでないのかを見極めるためには、肥満の分類型の研究は特に重要といえます。
今回の研究の結果を受けて、研究チームは論文の結論として「肥満は異質な病気です。減量のための外科手術は、不規則な食事をする成人にとっては最も有益な手段といえます」と論じています。また、Field氏は「肥満研究の分野で大きな発見があまりない理由の1つは、本来さまざまなタイプに分類されるべき肥満患者が一緒くたに分類されているためです。肥満の予防・治療は有効なものですが、グループによってその効果は大きく異なります」と主張しています。
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