脳のMRI画像を見ればその人が肥満傾向にあるのかどうかがだいたいわかる

人の体が肥満傾向にあるのかどうかは、体重(kg)を身長(メートル)の2乗で割って算出するBMIで判定することができます。脳に関する最新の研究からは、BMIの値と脳の構造上の特徴の間には一定の相関関係があることが明らかになってきています。

Neurobehavioral correlates of obesity are largely heritable | PNAS
http://www.pnas.org/content/early/2018/08/27/1718206115?_ga=2.33961961.995189674.1535944600-2083447407.1535944595

Controlling Obesity May Depend on Modifying Neurobehavioral Factors | GEN
https://www.genengnews.com/gen-news-highlights/controlling-obesity-may-depend-on-modifying-neurobehavioral-factors/81256184

Study Suggests Link Between Obesity, the Brain, and Genetics
https://scicasts.com/channels/neuroscience/2157-neurochemistry/14204-study-suggests-link-between-obesity-the-brain-and-genetics/

この研究は、カナダの大学病院Montreal Neurological Institute and Hospital (The Neuro)の研究チームが実施したもの。ヒトの脳について研究を行うプロジェクトHuman Connectome Projectの中で集められた1200人分の脳のMRIデータを用いることで、BMIと脳の関係が調査されました。

調査の結果明らかになったのが、BMIが高い人は「認知の柔軟性」や「欲望を満足させることを遅らせる能力」「視空間能力」および「言語的記憶」が減少している傾向にあるという事実だったとのこと。また、BMIが高い人は左前頭前野皮質が厚めである一方、右前頭前野皮質が薄めである傾向も明らかになっています。これまでの研究では、右前頭前野皮質に損傷を受けた人は食欲が増加することが確認されています。

さらに、BMIが高い人は、食べ物に対する反応をつかさどると考えられている脳の左扁桃体の体積が大きいことや、エピソード記憶および文脈の処理に関連している「内嗅・海馬傍海馬構造」の体積が比較的小さいことも明らかになっています。

これらの状況から、BMIが高い人(＝肥満の傾向がある人)は食べ物に対してより敏感であることと、食べることによって生じる否定的な状況(＝体重増加)を予測して食欲に抵抗することが得意ではないという状況が浮き彫りになっているとのこと。また、被験者の多くは血縁関係にあるきょうだいであり、中には双子が含まれていたことから、研究チームはBMIを用いた肥満の遺伝可能性を算出することに成功。統計的手法を用いることで研究チームは、認知的特徴および神経学的特徴の多くは肥満との遺伝的関連性を持つことを明らかにしました。

論文の主執筆者で、エストニアのタルトゥ大学The Neuro and the Institute of Psychologyの研究者であるUku Vainik氏は、「この研究は、肥満状態にある人を助けるための介入方法の研究で非常に役立つものになるでしょう」と述べ、新たな肥満解消の手法が生み出される可能性を示唆しています。

また、大学病院The Neuroが属するマギル大学のAlain Dagher医学教授は、「この研究は、ヒトの体重は、認知や意志決定、モチベーション(動機)などを含む比較的高いレベルの脳の働きの制御下にあるということを支持するものである」と述べ、肥満と脳の働きが関連していることを指摘。そしてさらに、「食べ物の摂取を制御する脳システムの固体的な差異は、おだやかに遺伝性であるようにも見受けられます」とも述べ、BMIの高さには一定の遺伝性があることを示唆しています。