ハードウェア

薄さわずか10マイクロメートルという極薄のスマホカメラ向けレンズが開発される


2019年9月20日に登場したiPhoneの最新モデル「iPhone 11」をはじめとする最新のスマートフォンはどれも超高性能なカメラを備えていますが、大抵の場合背面からカメラが飛び出ています。そんな中、アメリカのユタ大学の開発チームが、従来のスマートフォン向けカメラのレンズに比べて重さが100分の1、厚さは1000分の1という超薄型レンズを開発しました。これにより、従来より格段に小型のカメラを作ることが可能になるとのことです。

Broadband lightweight flat lenses for long-wave infrared imaging | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/10/04/1908447116

Thin to win | UNews
https://unews.utah.edu/thin-to-win/

これが、ユタ大学で電子工学を研究しているラジェッシュ・メノン准教授らが開発した「マルチレベル回折レンズ(MDL)」です。厚さは10マイクロメートルと、人間の髪の毛の20分の1程度しかありません。また、一般的なレンズのような曲面もなく、両面が平らになっています。


レンズを拡大すると、同心円状のパターンが見えます。


曲面を持つ普通のレンズは、解像度を上げようとするほど光をより大きな角度で曲げなければならないため、結果的に厚く重くなってしまいます。一方、メノン氏らが開発したMDLはレンズの中にある多数の微細構造がそれぞれ個別に光を屈折させてセンサーに送るため、薄くても十分な性能を発揮するとのこと。メノン氏らはこれを実現させるため、新素材の樹脂や、微細構造のパターンを計算するためのアルゴリズムを開発しました。

実際、新開発のMDLについて発表した今回の論文にはメノン氏ら工学技術の研究者だけでなく、同大学の数学部で准教授を務めるフェルナンド・ゲバラ・バスケス氏も共著者として名を連ねており、エンジニアリングと数学の粋を集めて開発されたことがうかがえます。

メノン氏は新開発のMDLの仕組みについて、「微小構造そのものはレンズではありませんが、微小構造を組み合わせることで総体的にレンズとして機能するので、このレンズを使用したカメラは高い解像度を誇ります」と説明しました。


MDLを2枚重ねれば光学ズームも可能なほか、赤外線カメラと組み合わせて熱を感知することもできます。


サーモカメラに使用することが可能なため、これまでのものより格段に軽量で連続稼働時間の長い暗視装置にも使えます。そのため、スマートフォンのカメラとしてだけでなく、暗視装置を備えたドローンのカメラとして、山林火災への対応に使用したり、自然災害により遭難した人の捜索に使用したりといった用途も想定されているとのこと。

メノン氏は「我々のレンズはプラスチックの樹脂を使用しているので、安価に大量生産できる可能性があります。一方、シリコンのように光の損失がない高屈折率素材を使うことで、高性能化を図ることもできます」と述べて、さまざまな用途のカメラに使用できる極薄レンズの可能性を強調しました。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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