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医療訓練ゼロで子どもを救おうとした結果とは?「善意では不十分」と手記が公開される

by Green Chameleon

映画や小説の中でみられる「白人が非白人の人々を窮地から救う」という表現を白人の救世主と呼びます。白人の救世主コンプレックスだったという人物がウガンダに渡り、多くの経験を持たないままに子どもたちを救おうとした中で、「善意では足りない」ことを学んだと記しています。専門知識も経験もない人が子どもたちを救おうとした時に何が起こったのか、生々しい手記が公開されています。

When White Saviorism Turns Deadly: American missionary played doctor, children died, when will there be justice?
https://medium.com/@nowhitesaviors/when-white-saviorism-turns-deadly-american-missionary-played-doctor-children-died-when-will-edb278b938bc

「白人の救世主コンプレックスを抱いていた」という匿名の人物は、20歳の時にウガンダのジンジャという街にある児童養護施設で3カ月を過ごしました。この人物は医療の専門知識を全く持っていませんでしたが、善意から子どもたちと関わりだしたとのこと。「物事を変えている」と感じたこの人物は親や友人に出資を募り、数十万円という資金を集めたのちに、ウガンダでさらなる活動を行うことを決意しました。

この人物が持つ白人の救世主コンプレックスは、ジンジャで「レニー・バッハ」なる人物に出会ったことで、さらに加速しました。当時18歳だったバッハは大学に通ったことがなく、専門知識も持ちませんでしたが、子どもの受け入れ施設を運営し始めたとのこと。バッハとそのプロジェクト「Serving His Children(神の子どもに仕える)」に影響された手記の書き手は、ジンジャで同様のNGOを創設しました。


当時、実地経験は少ないものの学士を持っていたという人物は、経験や専門知識がなくともウガンダに渡って人を救おうとしていたバッハを心酔していましたが、2014年1月の出来事を発端に不信感を持つようになりました。

2014年1月、手記の書き手が運営する施設に、3歳の子どもが運ばれてきました。子どもはひどい栄養失調で、治療を必要とする状態でした。施設で治療を受け子どもは一度回復しましたが、「心臓が安定した」と告げられた次の日に、心臓発作で亡くなってしまったとのこと。すでに大きなストレスにさらされていた子どもの心臓は、それ以上耐えることができなかったのです。

by Antoine Plüss

その後、子どもが以前、栄養失調でバッハの施設に運ばれていたことが判明しました。施設では必要な栄養を与えられましたが、施設スタッフは子どもの栄養失調の大元の原因を確認しないまま、子どもを村に帰してしまいました。このため子どもは再び栄養失調に陥り、今度は書き手の施設に運ばれてきましたが、助かることができなかったわけです。

書き手はこの件についてバッハと、彼女の施設のソーシャルワーカーと話し合いました。書き手は「児童福祉の訓練を受けていたり、経験があったりすれば、フォローアップがいかに大切かわかるはず」「子どもの死の原因はあなたたちにもある」と説明しました。書き手は、バッハやスタッフたちが適切なフォローアップを行い、子どもたちが施設に戻らなくていいようにすることを求めました。

しかし、その後バッハのとった行動は、「センターに来た子どもたちを被験者にして医療の練習をする」というものでした。バッハの施設には医療の専門家がいましたが、バッハ自身には医療の知識や経験がなかったため、彼女は積極的に危険な状態にある子どもの治療を始めたとのこと。

「Serving His Children」のウェブサイトには、当時、バッハが書いたブログが公開されていました。記事作成時点では取り下げられているというブログには、以下のような内容が書かれていました。

「私は赤ちゃんを呼吸器につなぎ、仕事に取りかかりました」「体温を測り、静脈注射し、血糖値を調べ、マラリアの検査を行い、血中のヘモグロビン量を確認しました」「そしてすぐに多くの問題を診断しようとしました」「ジンジャ中を走り回り、彼女にあう血液を見つけました!」「私たちは輸血を始めました」


かつてのボランティアやスタッフの証言によると、上記の例は、施設でバッハが行った高度な医療行為に比べれば取るに足らないものだとのこと。バッハは病院やメディカルセンターから子どもを引き取り、医療行為を行っていたそうです。当時、バッハは自分の手による治療について臆することなく話しましたが、数多くの子どもはバッハの施設で死亡したとみられています。施設では子どもが亡くなった後に適切な手続きが踏まれなかったため、どれほどの子どもが死亡したかという具体的な数はわからないそうです。

YouTubeで学んだ医療行為を子どもに対して行うバッハ。


バッハと「Serving His Children」に説明責任を負わせようとした人々は、支持者から中傷され、敵対視されるようになったとのこと。バッハが所属する「ホームチャーチ」と呼ばれる施設や宣教師コミュニティは、バッハをサポートし、守ろうとしました。また宣教師たちは物事を選択的に判断する傾向にあり、ウガンダの若い女性が行ったら許されないであろう医療行為でも、バッハが行う場合は正当化する傾向がみられたとのこと。さらに、バッハの取締役会は親しい友人や家族で構成されていたため、ボランティアやスタッフが懸念を示すと、説明責任を果たすのではなく当のスタッフを排除するという問題もありました。

栄養失調の子どもたちの写真を壁に貼った部屋に立つバッハ。


2015年に「Serving His Children」が閉鎖されたとき、多くの人が「センターで亡くなった子どもたちのために正義が果たされるべき」と考えたとのこと。しかし、当局による十分な調査は行われませんでした。「国のシステムによって正義が果たされない場合、やるべきことは大衆の注目を集めることだ」ということで、人物はこの手記を公開することに踏み切った、とつづっています。

なお、手記が公開されたのは2018年ですが、その後、バッハに対する訴訟が2019年に受理されました。裁判は2019年3月に行われる予定でしたが延期され、2020年1月に審理される予定となっています。

Renee Bach wasn't a doctor, but she still treated many patients in Uganda, lawsuit says - ABC News
https://abcnews.go.com/International/renee-bach-doctor-treated-patients-uganda-lawsuit/story?id=63930370

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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