世にも珍しい「持ち手のない鍵」がドアを貫通してロックする「ベルリン錠」とは?

by karlherl
一般的な鍵は、鍵穴に差し込むキーブレード部分と手でつまんで回すための持ち手部分で構成されています。しかし、100年以上前にドイツで発明された「ベルリン錠」の鍵は両端がブレードになっているという変わった形をしていることで知られています。
Der Siegeszug des Doppelschlüssels - Wider die Säumigen und Vergesslichen | Berliner Mieterverein e.V.
https://www.berliner-mieterverein.de/magazin/online/mm1105/110519.htm
実際にベルリン錠とはどんな錠前なのか、実際にドアにロックをかける以下のムービーを見るとよくわかります。
Berliner Schlüssel - YouTube
ベルリン錠の実物はこんな感じで、金属製の棒の両端がブレードになっています。

通常の鍵は持ち手についた穴をキーリングに通すことができますが、ベルリン錠の鍵は持ち手がないのでキーリングに固定することができません。そこで、キーリングについている筒状のパーツにブレードを引っかけることでキーホルダーにぶら下げる工夫がされています。

両端のブレードの形は同じで、どちらでも施錠・解錠ができる仕組み。鍵穴に鍵の一端を挿入して……

ブレードを持ち手代わりにして鍵を回すと、解錠されました。

ドアの反対側を見ると、鍵穴がカタカナの「フ」のような形になっていることがわかります。

ドアを貫通するように、鍵穴からニョキッと鍵が突き出しました。

そのまま外へ出て、ドアを閉めて、鍵を回します。

そのまま鍵を抜けば、ドアがロックされるという仕組みです。

ベルリン錠は、1912年にベルリンの鍵屋であるヨハネス・シュヴァイガーによって発明されました。鍵を抜くためには必ず施錠をしなくてはならないことから、ベルリン錠には「鍵のかけ忘れを防ぐ」という効果があり、ベルリンを中心に2万件以上の家屋に取り付けられました。また、ベルリン錠の鍵を固定するパーツが発明されたのは「酔っ払った人でも安全に鍵を持ち歩いて簡単に取り出せるようにするため」と伝えられています。
しかし、第二次世界大戦後に続いた冷戦時にベルリンが分断されたため、ベルリン市内の一部地域ではベルリン錠を入荷することが難しくなってしまったとのこと。また、施錠技術が進化し、より安全な錠前が作られるようになったこともあり、ベルリン錠が新たに取り付けられることはなくなってしまったそうです。
それでも、ベルリンで住宅問題を取り扱う政党Berliner Mietervereinは「2005年時点でベルリン市内で8000個から1万個のベルリン錠が使われ続けていることを確認した」と報告しています。
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