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ヴァイキングの凶暴な戦士「バーサーカー」は幻覚作用のある植物を使っていたかもしれない

by James St. John

ヴァイキングスカンディナヴィア半島バルト海沿岸を根拠地として西ヨーロッパを侵略した海賊であり、当時のヨーロッパに住む多くの人々にとって脅威となっていました。中でも狂戦士(バーサーカー、ベルセルク)と呼ばれる戦士は非常に凶暴で強かったことから恐れられていましたが、そんなバーサーカーは「幻覚作用を持つ植物を使ってトランス状態になっていた可能性がある」と研究者が主張しています。

Sagas of the Solanaceae: Speculative ethnobotanical perspectives on the Norse berserkers - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378874119322640

Viking berserkers may have used henbane to induce trance-like state | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/09/viking-berserkers-may-have-used-henbane-to-induce-trance-like-state/

バーサーカーは戦闘の際にとても凶暴になるほか、獣のように吠え、自分が持っている盾にかみつき、敵と味方の見分けもつかない状態で戦っていたなどと伝えられています。しかし、バーサーカーについての物語は多くが神話や伝承に基づいており、実際のバーサーカーがどのようなものであったか詳しいことはわかっていません。


13世紀の歴史家スノッリ・ストゥルルソンは、ノルウェーを最初に統一したハーラル1世の親衛隊の一部がバーサーカーであったと述べています。バーサーカーは犬やオオカミのように怒り狂い、熊や雄牛のように強かったそうで、一撃で相手を殺したばかりでなく、武器を使っても傷つけることができなかったと伝えています。

バーサーカーについては魔法や神秘主義的な特徴付けもされていますが、共通する特徴として挙げられるのが、盲目的で凶暴な怒りです。また、戦士がバーサーカーになる時は体の震えや悪寒、歯をカチカチと鳴らす、顔の赤みなどがあったとされています。そしてしばらくの間は狂ったように戦うことができるものの、バーサーカーの状態から抜け出すと肉体的な疲労や感情のマヒなどを覚えるとのこと。

by Hans Splinter

これらの特徴などから、バーサーカーになる方法として、「盾をかんだり叫んだりすることによってヒステリー状態をわざと誘発している」「てんかんの発作」「麦角菌の中毒症状」といったいくつかの仮説が立てられています。

中でも主要な可能性として考えられているのが、ベニテングタケなどの幻覚作用のあるキノコを食べ、トランス状態になっていたという説です。ベニテングタケはヨーロッパ人にとって身近なキノコであり、中でもシベリアに住む部族の間では、シャーマンがトランス状態になるために使われていたとのこと。

ベニテングタケは食べた人を幻覚や色覚の変化などを伴うトランス状態にするほか、おう吐や体温の上昇、発汗、顔の赤み、けいれん、瞳孔の拡大などの症状を引き起こします。これらの特徴がバーサーカーの戦士と似ていることから、バーサーカーになるためにヴァイキングはベニテングタケを食べたのではないかといわれています。

by Bernard Spragg. NZ

しかし、スロベニアリュブリャナ大学の民族植物学者であるKarsten Fatur氏は、「ベニテングタケよりもヒヨスの方が、バーサーカー状態をもたらす候補としてふさわしい」と主張しています。

ヒヨスはユーラシア大陸原産のナス科の植物で、非常に古くから向精神作用を利用した麻酔薬などとして使われてきました。古代ギリシアの人々も神託を得るためにヒヨスを用いており、乗り物酔いの治療薬としても使われていたとのこと。また、ビール純粋令によってホップなどの使用が定められる以前の11世紀から16世紀には、ヒヨスがビールの風味付けに使われていたこともあり、ヨーロッパ人にとって身近な存在でした。

Fatur氏はベニテングタケとヒヨスの両方が意識の変化、せん妄、震え、顔の赤みといったバーサーカーの特徴をもたらすと認めていますが、ベニテングタケは一般的に攻撃的な怒りを呼び起こすことがないと指摘。一方でヒヨスやヒヨスと似た成分を含む植物を摂取した人々は、怒りを喚起されるケースがみられるとのこと。「個人の精神的状況や投与量によって、ヒヨスは怒りと闘争意識をもたらします」「この点はバーサーカーにとって重要な要素です」と、Fatur氏は述べています。

by Pixabay

また、ヒヨスは痛みを和らげる効果を持っていて「ほとんど攻撃が効かない」というバーサーカーの言い伝えに合致するほか、血圧を下げる作用は「刃物で切られてもあまり血が出ない」という特徴を説明するかもしれないとのこと。さらに、ベニテングタケは長期的な副作用をもたらしませんが、ヒヨスは副作用として頭痛、瞳孔の拡大、視界がぼやけるといった症状が長引くそうです。さらにFatur氏は、スカンジナビア半島では森林に生えるベニテングタケが珍しいものであり、ヒヨスの方が一般的に見られる植物だった点も指摘しています。

さまざまなバーサーカーの特徴がヒヨスにより説明できる一方で、「バーサーカーは自分の盾をかんでいた」「歯をカチカチ鳴らしていた」などは説明できません。Fatur氏は自分の仮説を検証する十分な考古学的・歴史学的証拠がないため、今回の仮説は決定的なものではないと述べました。

by Oskar Gran

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in メモ, Posted by log1h_ik

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