スマホカメラで撮るだけで簡単かつ即座に現実世界の3Dマップを作成してしまう「6D.ai」がデモムービーを公開
オックスフォード大学発のスタートアップである6D.aiは、スマートフォンのカメラのみを使って現実世界を撮影し、撮影したムービーから即座に3Dマップを作成する技術の開発を行っています。高い技術力を持っているとして注目を浴びている6D.aiが、「複数のスマートフォンカメラで460平方メートルの広さを持つ空間を撮影し、それぞれの情報を融合させて3Dマップを作る」というデモムービーを公開しました。
New World Notes: Watch: Real World Location Virtually Recreated to Scale in Minutes
https://nwn.blogs.com/nwn/2019/08/volumetric-mirror-world-mapping-6d_ai.html
6D.aiのCEOであり共同創業者でもあるMatt Miesnieks氏は、AR分野の課題として「現状のAR体験が現実世界の体験とかけ離れている」と指摘。現実とAR世界がシームレスにつながっていないため、「AR空間に恐竜を登場させる」といった非現実的なアプリが台頭し、AR本来の強みである「現実世界の拡張」が進んでいないとMiesnieks氏は考えています。
そこでMiesnieks氏が重要だと考えるのが「ARクラウド」という技術です。ARクラウドは大勢の人々のAR体験をつなげ、AR内での体験やオブジェクトの設置を複数のデバイスや時間を超えて共有するというものであり、ARが本格的に普及する鍵を握っているとのこと。
このARクラウド技術を構築するために重要なのが、現実世界の3Dマップを作成することであり、6D.aiではスマートフォンカメラを使って簡単に3Dマップを作成するための技術を開発してきました。以下のデモムービーでは、6D.aiのシステムを使ってスマートフォンカメラで3Dマップを作り出す様子が見られます。
Crowdsourcing a 3D space in under 10 mins - YouTube
部屋の中を歩き回る4人の男性。それぞれの手にはスマートフォンが握られており、カメラで室内の様子を撮影しているようです。
4人が撮影する室内のムービーをもとにして……
6D.aiが開発したシステムは、リアルタイムで3Dマップを作り出すことが可能。
ソファやテーブル、デスクなどの物体が次々と3D化され、現実空間に即した3Dマップが構築されていきます。
このモデルは撮影するセンサー自身の位置推定と3Dマッピングを同時に行うSimultaneous Localization and Mapping(SLAM)であり、新しいデータが入力されるたびに新たな3Dマップが構築されていくとのこと。
4人が思い思いに歩いているため、撮影する箇所には重複があります。しかし、6D.aiのシステムは4人のデータを融合して3Dマッピングを行うモデルとなっているため、重複して新たに得られたデータをもとに、さらに以前のデータを改善することができるとMiesnieks氏は語ります。
Miesnieks氏は「4人が5000平方フィート(約460平方メートル)の室内空間をスキャンするのに3分かかりました……使ったのは普通のスマートフォンカメラで、特別な深度センサーなどは搭載されていません」と述べており、6D.aiのシステムでは一般的なスマートフォンでも3Dマップを構築することができるそうです。
実際に作られた3Dマップがこれ。輪郭などはぼやけている箇所もありますが、ソファやその上のクッション、デスクに椅子の位置などもわかります。
もちろん3Dマップはグリグリと動かしてさまざまな角度からながめることが可能。
通常のスマートフォンカメラを使い、わずか3分で3Dマップを作ってしまいました。
この技術を応用し、たとえば1つの都市を何人かでスキャンして回り、わずか数日で現実世界に忠実な3Dマップを作ることもできます。また、世界のあちこちに住む数百万人の人々が6D.aiの3Dマップ構築に協力し、自宅の周囲や旅行先の様子をスマートフォンで撮影することで、1年か2年で地球全体の3Dマップが作れるかもしれないとのことです。
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