大手クラウド提供企業Cloudflareが株式上場に王手をかけるも前途多難か

by TechCrunch

コンテンツデリバリネットワークや分散型DNSサーバーなどのウェブインフラストラクチャーを提供するCloudflareが株式上場を申請しました。AmazonやMicrosoftなどのクラウドプロバイダーと競合するCloudflareが上場企業の仲間入りを果たせば、金融市場とクラウド業界の勢力地図に大きなインパクトを与えると予想されますが、8chanにまつわる政治的な問題が尾を引いており、多難な道のりが待っているとも指摘されています。

FORM S-1 REGISTRATION STATEMENT
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1477333/000119312519222176/d735023ds1.htm

Cloudflare S-1 IPO filing
https://www.cnbc.com/2019/08/15/cloudflare-s-1-ipo-filing.html

Cloudflare warns investors that sites like 8chan are a risk to its business - The Verge
https://www.theverge.com/2019/8/15/20807358/cloudflare-ipo-s1-public-filing-risks-8chan-daily-stormer-moderation-ban

Cloudflareは2019年8月15日付けでアメリカの証券取引委員会(SEC)にForm S-1を提出しました。SECがForm S-1を承認すれば、Cloudflareは新規株式公開(IPO)により株式上場を行うことが可能になります。

by blogseriushangit

Form S-1に記載された上場時の最大売り出し金額は1億ドル(約106億円)とされていますが、IPOが実施されれば時価総額は35億ドル(約3713億円)にものぼるとの試算結果もあります。

一方で、上場後のCloudflareは順風満帆とはいかない可能性もあることが示唆されています。中国の大手IT企業BaiduはCloudflareの得意先であると同時に、Cloudflareが中国市場での影響力を維持する上でも重要な取引相手です。CloudflareとBaiduの契約期間は2020年までの予定ですが、不測の事態により2019年中に終了する可能性もあるとのこと。

CloudflareはFORM S-1の中で「重要な契約の早期終了リスクは、近年激化しつつある米中貿易摩擦を背景に増加傾向にあると見られています」と記載し、米中間における緊張の高まりがCloudflareのビジネスに大きなリスクをもたらしていることを明らかにしました。

また、Cloudflareは政治的な問題も抱えています。Cloudflareがサービス提供を行っていたインターネット掲示板・8chanは、2019年8月3日に発生した銃乱射事件の犯行予告に利用されていたことが知られています。

この事件を契機に、Cloudflareはすぐさま8chanへのサービス打ち切りを決定しました。

銃乱射事件へ影響を与えたとしてCloudflareが画像掲示板「8chan」へのサービス打ち切りを発表 - GIGAZINE

また、2017年にはネオナチの温床になっていたとされるウェブサイトThe Daily Stormerへのサービス提供も打ち切っています。

銃乱射事件の悲惨さや社会的な影響を鑑みれば、Cloudflareの決定は当然の措置だったともいえますが、一方でビジネスの上では悪手だった可能性もあります。Form S-1の中でCloudflareは「アクセス制限や検閲に対する懸念から、ユーザーからは重大かつネガティブなフィードバックがありました」と述べており、Cloudflareが言論の自由の保護と政治的なリスクのはざまで板挟みになっている様子が浮かび上がっています。

by Marco Verch Professional Photographer and Speaker

技術系ニュースサイトのThe Vergeは「Cloudflareはソーシャルメディアではない上、8chanやThe Daily Stormerは通常求められる中立性の例外だというのが大方の見方です。しかし、言論の自由への抜本的な議論に足を踏み入れることは、インフラを担う企業にとっては火中の栗を拾うことになりかねません」と指摘し、Cloudflareを悩ませる政治的な問題が長引く可能性があるとの見方を示しました。