サイエンス

熱を空に向けて放出して電力消費ゼロで都市を涼しくする新技術

by chuttersnap

2019年6月は観測史上最も暑い6月だった」ことが確認されたり、2019年7月25日にはパリの最高気温の記録が更新されたりと、世界的な規模での暑さが取り沙汰されています。熱中症対策にはエアコンを使用することも有効ですが、エアコンは膨大な電力を消費するため地球環境にはマイナスなだけでなく、ヒートアイランド現象原因のひとつにもなります。そんな中、太陽から降り注ぐ熱を空に放出して電気消費なしで温度を下げる技術が登場しました。

A polydimethylsiloxane-coated metal structure for all-day radiative cooling | Nature Sustainability
https://www.nature.com/articles/s41893-019-0348-5

In the future, this electricity-free tech could help cool buildings in metropolitan areas
https://techxplore.com/news/2019-08-future-electricity-free-tech-cool-metropolitan.html

ニューヨーク州立大学バッファロー校の准教授であるQiaoqiang Gan氏らは、シリコンの1種であるジメチルポリシロキサン(PDMS)でコーティングしたアルミニウムの板を使用することで、電力を消費せずに温度を下げることができる装置を開発しました。

これが今回開発された装置です。直射日光を防ぐための板に囲まれたプラスチック製の板の下にはPDMSでコーティングされたアルミニウム板があり、これが熱を吸収して外部に放出するという仕組みです。


装置の概略図はこんな感じ。


PDMSでコーティングされた板は日光を遮るだけでなく、熱を熱放射により放出することで、装置の内部の温度を低下させる働きも持っています。

内部の熱を外部に放出して温度を下げるという仕組みは、ヒートポンプを使って内部を冷やす冷蔵庫やエアコンと同じですが、今回開発された装置は熱放射に指向性を持たることが可能なため、空に向けて熱を放出すれば排熱で周囲の温度を上げてしまうこともありません。しかも、電力を消費せず経済的で、環境への負荷が小さいのも特徴です。

Gan氏らの研究チームは、この装置を使用した屋外実験を行いました。以下の図は実験を行った3カ所の様子とその結果のグラフです。実験は左から建物に囲まれた物陰・壁際・炎天下の駐車場で実施されました。実験開始から20分後における周辺温度と装置の温度の差は、左から2.5度、7.2度、11度となり、炎天下でも高い冷却効果が得られました。


この実験は日中の都市部での使用を想定したものですが、太陽光がなくても熱を放出できるので、昼夜を問わず冷却効果を得ることができます。また、今回の装置は約25cm四方の大きさですが、PDMSは食品添加物としても用いられるほど安全かつ安価なため、大型化や大量生産も容易だとのこと。このため、建物の屋上に多数配備すれば、施設を丸ごと冷却することも可能になります。

Gan氏は「電気を使わずに冷却できる実用的な手法により、世界のエネルギー消費が大きく変わる可能性があります」と述べて、今回開発した受動冷却システムの利点を強調しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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