雷古計山の噴火をNASAや火山学者はどう見ているのか?
千島列島の中部にある雷公計島は、全島で雷古計山(ライコケ山)を形成する標高551mの火山島です。日本時間の2019年6月22日(土)未明に雷古計山が前回の噴火から90年以上の間隔を空けて噴火し、NASAの宇宙飛行士や衛星が噴火直後の写真などを撮影しており、火山学者も大規模な噴火の影響について注視しています。
Raikoke Erupts
https://earthobservatory.nasa.gov/images/145226/raikoke-erupts
雷古計山はそれほど頻繁に噴火する火山ではなく、前回の噴火は1924年、その前が1778年とされています。1924年の噴火はクレーターの深さや島全体の輪郭に影響を及ぼし、1778年の噴火では山頂部分の3分の1が破壊されるほどの規模だったそうです。
90年以上にわたって休眠状態だった雷古計山ですが、2019年6月22日に久しぶりに噴火。幅700mほどのクレーターから火山ガスや灰が噴き出し、噴煙の高さは約1万3000mにまで達しました。雷古計山の噴煙柱は宇宙からも観測可能なレベルであり、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士や観測衛星などによって観測、写真撮影が行われました。
宇宙飛行士が撮影したという写真がこれ。噴煙がクレーターから真上に細く噴き上がり、上空で傘のように横方向へ広がっている様子がよくわかります。高度が上がるにつれて空気の密度が低下し、噴煙と空気の密度が釣り合う中立状態に達することによって噴煙が横方向に広がるため、傘型の領域が形成されるとのこと。ミシガン工科大学の火山学者であるサイモン・カーン氏は、「とても素晴らしい画像です。10年前に宇宙飛行士が撮影した芙蓉山(サリチェフ山)が噴火した時の写真を思い出します」とコメント。噴煙の下部に見える水蒸気は周囲の空気が噴煙に引き込まれたために発生した水蒸気が凝縮したものか、あるいは周囲の海水がマグマによって熱された結果発生したものである可能性が高いと指摘しています。
また、NASAの地球観測衛星であるテラも可視・赤外域の放射計であるMODISを使い、噴火後の写真を撮影しています。テラが撮影した下の画像からは、噴火で噴き上げられた灰が強い風によって流され、西から東へと太平洋に向かって広がっているのがわかります。噴煙は鋭い岩石やマグマが冷え固まったガラスの破片を含んでいるため、周囲を飛行する航空機に重大な影響が出る可能性があるとされて観測が続けられました。地球観測衛星のCALIPSOからのデータは、噴煙が最大で13kmの高さにまで達した可能性があると示唆したとのこと。
カーン氏は過去2日間にわたって周囲の二酸化硫黄濃度が上昇しているといったデータから、噴煙が成層圏にまで達した可能性が高いと指摘。対流圏にとどまる噴煙よりも、成層圏にまで達した噴煙は空中に長く残留するため、航空機や気候への影響が強いとのこと。今後も火山学者らは、噴煙の動向や影響について注視していくとしています。
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