R2-D2の声やダース・ベイダーの呼吸音などスター・ウォーズの効果音の制作過程を当時の音響デザイナーが自ら語るムービー
映画「スター・ウォーズ」シリーズには魅力的なキャラクターやアイテムが数多く登場しますが、それらを強く印象づけるものの1つが「音」です。もちろん劇中に登場するもののほとんどが現実には存在しませんが、そんな架空のキャラクターやアイテムの音を作り出した音響デザイナーのベン・バート氏が、どうやってスターウォーズの音を作り出したのかを語るムービーを、サウンドデザインについて特集するYouTubeチャンネル・Indepth Sound Designが公開しています。
Star Wars: Episode IV sound design explained by Ben Burtt - YouTube
スター・ウォーズを象徴する武器の1つであるライトセーバーの「ブゥン」という音は、バート氏が働いていた映像学校にあったプロジェクターのモーター音に、テレビのブラウン管のノイズ音を重ねて作りだしたそうです。
さらに作り上げたライトセーバーの音をスピーカーから流し、スピーカーの前でマイクをぶんぶんと振り回すことで、意図的にドップラー効果を発生させて録音することに成功しました。この音が、ライトセーバーを振り回した時に鳴る独特の効果音となりました。
また、光弾をはじいたりライトセーバーがぶつかりあったりする音はドライアイスを金属の上に置いた時のきしむ音や火薬の音を組み合わせて作っているとのこと。
R2-D2のまるで本当に話しているような電子音は、スター・ウォーズの効果音の中でも最も作るのに苦労したとバート氏は語ります。
バート氏は「一番かわいい声は赤ちゃんの声だ」と考え、同僚と二人で赤ちゃんの声まねを録音し、それにシンセサイザーの電子音を混ぜてR2-D2の声を作ったそうです。
劇中で最もよく登場する武器の1つがブラスターです。「ピシュン!」というどこか金属的な響きのあるブラスターの発射音は、バート氏が休暇にペンシルベニア州でハイキングにでかけた時の体験が基になっているとのこと。
バート氏がハイキングで登った山の上には大きなラジオ塔があり、そのラジオ塔のガイドワイヤーに荷物が引っかかってしまったとのこと。その時に響いた音がブラスターにぴったりだと考えたバート氏はカリフォルニアに戻った後、カリフォルニア中の鉄塔を歩いて回り、鉄塔に張られたガイドワイヤーをハンマーで打って録音しました。そして、ついに納得のいく音を得られたバート氏はその録音を基にブラスターの発射音を作成したそうです。
「コーホー、コーホー」という呼吸音はダース・ベイダーを象徴するサウンドの1つ。バート氏によると、独特の呼吸音を響かせながらダース・ベイダーが現れるというアイデアは映画「ピーター・パン」で飲み込んだ時計の音を鳴らしながら現れるチクタクワニから着想を得たそうです。
ダース・ベイダーがサイボーグのようなキャラクターだと映画の制作開始前に聞いていたバート氏は、スキューバダイビングに用いるレギュレーターにソニーの小型マイクを仕込み、そのまま呼吸をして録音したそうです。
また、ダース・ベイダーが部下の首を締めて殺してしまう場面の効果音は、グレープフルーツとクルミの殻を使って録音されたとのこと。
ウーキー族のチューバッカは、人間とはまったく違う響きの声をあげます。バート氏はハン・ソロのよき相棒であるチューバッカに、全く人間の言葉ではないはずなのにどこか人間の言葉を話しているように聞こえるような声をつけようと考えました。
そこでバート氏は、カリフォルニアの農場に住んでいた「プー」という名前のクマの鳴き声をベースに、オットセイやアナグマなどさまざまな生き物の鳴き声を重ねることでチューバッカの声を作り上げたそうです。
「エピソードIV/新たなる希望」で、ルークたちがゴミ圧縮機に閉じ込められ、左右から圧縮用の壁が迫るシーンは劇中でも最大のピンチを迎える場面です。この巨大な壁が動く音は、杭打ち機の音を加工して作ったとのこと。
宇宙を飛んでいく帝国軍の戦闘機・TIEファイターの音。本来であれば宇宙には空気がないので音はありませんが、映画にリアリティーを与えるために効果音がつけられています。
20世紀FOXは、昔に撮影された映画の効果音の流用を許可してくれたとのことで、バート氏は1958年に公開された「The Roots of Heaven」という映画に登場するゾウの鳴き声をスロー再生し、TIEファイターの飛行音を作成したそうです。
デジタル機器が現代ほど発達していなかった当時、バート氏をはじめとする音響デザイナーによるアナログな工夫が映画のリアリティを支えていたといえます。ムービーでは他にも「スター・ウォーズ」の印象的な効果音がどうやって作られたのか、その驚きの手法が多く語られていたので、バート氏の職人芸が気になる人はぜひムービーを見てください。
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