「自分が地図上のどこにいるかわかっていない人が多い」と気象キャスターが頭を悩ませる
by slon_dot_pics
人々は天気予報や初めて行くお店へのルート検索など、日常生活の中で何気なく地図を見ています。スマートフォンの地図アプリではGPSと基地局の位置情報のおかげで、自分自身が把握していなくても現在地が特定可能です。しかし、こうした便利さの裏で「多くの人々は地図上で自分がいる場所を示すことができない」という調査の結果があり、気象キャスターが「地図上で自分がどこにいるのかわかるようになって欲しい」と訴えています。
Many Alabamians can't find themselves on a map, and that's dangerous - al.com
https://www.al.com/news/birmingham/2017/02/many_alabamians_cant_find_them.html
Alabama meteorologist James Spann urges viewers to - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/weather/2019/04/15/many-people-cant-find-themselves-map-laments-alabama-meteorologist/
社会科学者のエイプリル・テイラー氏は、2011年4月27日にアメリカ南部で発生した竜巻によるトラウマが残るアラバマ州北東部のディカーブ郡に住む人々を対象に、トラウマから回復する治療プログラムを実施しました。当時、大規模な竜巻が発生することは以前から天気予報等で報じられており、テイラー氏も竜巻が被害地域付近で発生するのを知っていましたが、カウンセリングを受けた多くの人々は「竜巻が来ることを知らなかった」と述べたそうです。
最初のうちテイラー氏は、天気予報での警告があってなお竜巻が来ることを知らなかったという人々の主張が理解できませんでしたが、「人々はテレビの天気予報を見ても、自分たちの住む場所が地図上のどこなのかわからず、竜巻が来ることが理解できなかったのではないか」と考え、実験を行うことにしました。
まず小規模な実験として、テイラー氏は大学の学位を持つ7人の人々に、アラバマ州の北半分が描かれた白地図を手渡しました。地図は、郡の境界線と主要な高速道路は描かれているものの、郡の名前や目印となる建造物は記載されていないものでした。テイラー氏は7人に対して「この地図に自分が住んでいる郡と、その周囲の郡の名称を書き込んでください」と依頼。すると、自分の郡の場所がわかっていたのは3人で、周囲の郡の名前まで把握していたのはわずか1人でした。その後、テイラー氏はアラバマ州全体でもっと大規模な実験を行いましたが、学歴とは無関係に、どんなグループを対象にしても60~65%の人が自分の住む郡を見つけるのに苦労していたとのこと。
この結果を伝えられたアメリカ国立気象局のケビン・ロー氏は、「信じられないでしょう?大変衝撃的な結果です」と述べています。
「気象災害への最大の対策は、まず現状を認識することです」とロー氏は指摘しており、自分たちが住む場所に災害がやってくることを知るのが重要だとしています。しかし、地図上で自分たちがどこにいるのかわかっていないと、どんな気象警報が出ていても何の対策もできません。
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アラバマ州を放送範囲に含むABC 33/40ニュースでチーフ気象キャスターを務めるジェームズ・スパン氏は、「私たちは天気予報の地図グラフィックを作成するのに大変な労力を傾けています。そしていざ天気予報図をSNSなどに投稿すると、すぐに『カルマンはどうですか?』『ジャスパーは?』『エアスタボガはどうなっていますか?』といったコメントが付きます。人々は自分の現在地が地図上のどこにあるのかわからないのです」と述べています。
アラバマ大学の上級研究員であり、公衆衛生安全センターの局長でもあるローラ・マイヤーズ氏は、人々が普段見ている地図には郡の名前や都市の名前、道路の名前などが書き込まれていると指摘。天気予報に使われているタイプの地図ではこれらの基準となる目印がないため、天気予報図を見ても自分の居場所を理解できないのではないかと述べました。
そこでスパン氏は、人々に対して「地図を読めるようになって欲しい」と訴え、スキルの習得をお願いするムービーをTwitterに投稿しました。
.@spann Fireside Chat: Many people can't find themselves on a map. pic.twitter.com/IEzUXBNhD5
— ABC 33/40 News (@abc3340) 2019年4月14日
「聞いてください、私たちは人々が地理学者やレーダー気象学者になることを期待していません。しかし、多くの人々がニュースなどで目にする地図上で、自分自身の居場所を特定できないということを私たちは知りました」とスパン氏は語りかけ、災害時に使う地図で自分の現在地を知ることができないのは大きな問題だと指摘。
一方で、スパン氏は近年のスマートフォンに搭載された地図アプリが非常に高性能であり、日常生活で地図を読む頻度が下がっていることも認めています。しかし、気象予報で目にするマップで自分の現在地がわからないことは、命の危機に関わりかねない重大な情報不足を招きます。「自分が住んでいる郡や、隣接する郡の場所を白地図上で発見できることは、あなたの大きな助けになります」と、スパン氏はムービー中で語りました。
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